山﨑賢人との間柄もひゅーいくんが汲み取ってくれた
──このアルバムでは石崎ひゅーいさん、忘れらんねえよの柴田さん、黒猫チェルシーの渡辺さんのように、いろんなミュージシャンが楽曲を提供していますが、自分の感性や感覚に近い人たちが集まった感覚はありましたか?
結果的にはそうなったなと思いますけど、最初から狙ってたわけではないんですよ。もともと僕が好きな曲を歌っている人たちだったので、ある種、必然的に感覚が近い人が集まったのかなとは思います。
──石崎ひゅーいさんが提供した「さよならエレジー」はシングルでもあり、ご自身も出演されているドラマ「トドメの接吻」の主題歌にもなっています。
個人的にはまさか自分がドラマの主題歌を歌うなんて思ってもみなかったんですよ。昔から仲がいい山﨑賢人が初めて連ドラで主演をやるときに自分がそのドラマの主題歌をやれるなんて、そんな面白いことはないよなっていう感じですね。「吉野家の牛丼が世界一うまい」と思っていた学生時代によく遊んでたやつなんで、個人的に感慨深いものがありました。ドラマの内容もそうなんですけど、僕と山﨑賢人との間柄もひゅーいくんが汲み取ってくれたように思います。
歌詞は普段から書きためている言葉をもとに
──このアルバムは「さよならエレジー」で始まり、2曲目には同じく石崎ひゅーいさんの提供曲「いいんだよ、きっと」が収録されています。この曲は菅田さん自身が歌詞を手がけていて、ポップに開かれたドラマ主題歌から一気に自分の世界に持っていくような流れになっていると思いました。そういうアルバムの曲順も印象的ですが、「いいんだよ、きっと」はどんなふうに作っていったんでしょう。
この曲は夏の暑い日に僕が街中を歩いていて見つけた気になる男の子のことを書いたメモをひゅーいくんに送って、サウンドのイメージも伝えて翌日にひゅーいくんが曲にして送り返してくれたんです。メガネをかけた制服姿の男の子がビルの中を歩いていたんですよ。それを見て「あいつ、涼みに来てんだな」って一発でわかって。なんか、その光景がいいなって思って、そこから生まれていった曲ですね。
──じゃあ、これは歌詞が先なんですね。
そうですね。そこから改めてひゅーいくんと2人で会って、メロディを組み換えたり、最初の叩き台では人には伝わりにくいところをわかりやすい言葉に変えたりして。そこからアレンジを変えていって今の形になりました。
──歌詞の書き方って、大きくわけて二通りあるみたいなんですよ。メロディに当てはめるように歌詞をつづる人と、メロディがなくてもまず歌詞を書く人。よく言う曲先、詞先という話なんですが、菅田さんは後者なんですね。
「もし音楽をやっていくつもりなら思ったことを書き留めておいたらいいんじゃない?」って言われたことがあって、普段から文章を書きためているんです。それをもとに歌詞にしていくことが多いですね。
伝えたかったのは自分にとってそれが大切かどうか
──忘れらんねえよの柴田さんが曲を書いた「ピンクのアフロにカザールかけて」も、菅田さんが歌詞を書いていますね。まさに菅田さんにしか書けない歌詞だと思うんですが、これも歌詞から書いたんでしょうか。
そうですね。そしてできあがった歌詞を柴田さんに送り付けたんです。菅田将暉は何かを人に送り付ける傾向があるので(笑)。
──どういうところから歌詞を書き始めたんでしょうか?
よく覚えていないんですけど、怒るような出来事があったんでしょうね。愚痴のようなものをメモに書いていたんです。もともとはこの3倍くらいあって、恥ずかしくて人に見せられるものではなくて。でもそんだけ恥ずかしいってことは僕のリアルな感情なんですよね。で、ふとそのときに柴田さんの顔が浮かんで、柴田さんだったらちゃんとこれを咀嚼して昇華して、しかも同じ目線で歩んでくれると直感的に思って送ったんですよ。「最近こんなことあって……」って。そしたらすぐに「メロディを付けたい」って柴田さんが返事をしてくれて、それから1週間くらいで曲になって返ってきました。
──サウンド面でのイメージはあったんですか?
最初にもらったときは特に何も伝えてなかったんですけど、曲にしてもらったあとに柴田さんにお会いして「青春パンクみたいなのをやりたいですね!」っていう話になったんです。こういう内容の歌詞だし、まったり歌うと説教臭いから、わーっと勢いで歌ったほうが馬鹿馬鹿しくて面白いですねって。音楽的な構成は柴田さんにお任せだったんですけど、歌詞の内容がホントに僕が伝えたいことのまんま残っていてすごいなと思いました。
──歌詞の「ああ気が狂いそうだ ヒロトってこんな気持ちだったんかな」って1行が素晴らしいなと思いました。
ありがとうございます。もともとは「ヒロトって」じゃなくて「ブルーハーツって」だったんですけど、柴田さんが「ヒロトって」に変えたんですよね。僕は“ヒロト”なんて言えないですから。レコーディングのときに柴田さんもいてくださったんですけど、当日に1行だけ歌詞を変えたんですよ。「意味なんていらない 美しいもの ピンクのアフロにカザールかけ かわいい孫にお年玉あげたい」という部分なんですけど、もともとは「本当に僕が求めてるもの ピンクのアフロにカザールかけ かわいい孫にお年玉あげたい」だったんです。それだとなんかちょっとコメディタッチになり過ぎるなっていうのと、その前の「小さなもの」「大きなもの」の話だと、単純に大きさだけでしかものが見えなくなると思って。そこで僕が言いたいことは自分にとってそれが大切かどうかという話だったんです。日々生きていたらうれしいことがいっぱいあるじゃないですか。でもそのうれしいことっていうのは人それぞれで。例えばほかの人から見たら別にどうってことないものでも、自分からしたら神様みたいな対象っているじゃないですか。そういう言葉を入れたいなと思って。
──なるほど。お話を聞いて思ったんですけれど、この「意味なんていらない 美しいもの」って、まさにアルバム自体を象徴するようなひと言ですよね。最初に菅田さんがおっしゃっていた「言ってしまえば菅田将暉はアルバムなんて出す必要なかったかもしれないけれど、全員が能動的な現場だった」というのも、まさに「意味なんていらないけど、美しいものが作りたい」という気持ちが共有されていたからで。
そうですね。と言うか、そうでありたいと思っています。
次のページ »
俳優業と音楽業に境目はない
- 菅田将暉「PLAY」
- 2018年3月21日発売 / EPICレコードジャパン
-
完全生産限定盤
[CD+Tシャツ]
6499円 / ESCL-5037~8 -
初回限定盤
[CD+DVD]
3900円 / ESCL-5039~40 -
通常盤
[CD]
3200円 / ESCL-5041
- CD収録曲
-
- さよならエレジー
[作詞・作曲:石崎ひゅーい] - いいんだよ、きっと
[作詞:菅田将暉 / 作曲:石崎ひゅーい] - 見たこともない景色
[作詞:篠原誠 / 作曲:飛内将大] - ピンクのアフロにカザールかけて
[作詞:菅田将暉 / 作曲:柴田隆浩(忘れらんねえよ)] - 風になってゆく
[作詞・作曲:渡辺大知(黒猫チェルシー)] - 台詞
[作詞・作曲:石崎ひゅーい]
- スプリンター
[作詞・作曲:秋田ひろむ(amazarashi)] - ゆらゆら
[作詞・作曲:菅田将暉] - 呼吸
[作詞:菅田将暉、飛内将大 / 作曲:飛内将大] - 浅草キッド
[作詞・作曲:ビートたけし] - 灰色と青(+菅田将暉)/ 米津玄師
[作詞・作曲:米津玄師] - 茜色の夕日
[作詞・作曲:志村正彦]
- さよならエレジー
- 初回限定盤DVD収録内容
-
- 「5年後の茜色の夕日」
- 菅田将暉(スダマサキ)
- 1993年2月21日生まれ、大阪府出身。2009年に「仮面ライダーW」で俳優デビュー。2013年に「共喰い」で「第37回日本アカデミー賞」新人俳優賞、「第41回日本アカデミー賞」では「あゝ、荒野 前篇」にて最優秀主演男優賞を受賞した。2017年6月に「見たこともない景色」でCDデビューし、これまでに3枚のシングルをリリース。2018年3月にデビューアルバム「PLAY」を発表する。