音楽ナタリー Power Push - Suck a Suck a Stew Dry × 松本素生(GOING UNDER GROUND)
目指したのは“嘘のない音楽”
Suck a Stew Dryがニューアルバム「N/A」を完成させた。ネガティブかつシリアスな感情をダイレクトに反映した歌、グルーヴィなバンドサウンドを軸にした本作は、このバンドの独創性がこれまで以上に伝わってくる作品に仕上がっている。
このたび音楽ナタリーでは、Suck a Stew Dryの篠山コウセイ(Vo, G)とイタバシヒロチカ(Dr)、そして2人が時折訪れるというバー「BAR天竺」のマスター・GOING UNDER GROUNDの松本素生(Vo, G)による鼎談を企画。各々のソングライティングに対する考え方やバンド像などについて語り合ってもらった。
取材・文 / 森朋之 撮影 / 佐藤類
ゴーイングのサポートメンバーがサック新作をプロデュース
──Suck a Stew Dryと松本さんの出会いから教えてもらえますか?
松本素生(GOING UNDER GROUND) 以前僕がMCをやっていたtvk「オンガク開放区」という番組にゲストで来てくれたのが最初ですね。
篠山コウセイ(Vo, G) お客さんの前で1時間くらい話をさせてもらって。
松本 いろんな話をしたよね。正直印象に残ってないゲストも多いんだけど、サックはなぜかすごく覚えてます。
イタバシヒロチカ(Dr) よかったです(笑)。あと松本さんが経営されているバー「BAR天竺」によく飲みに行かせてもらってます。
篠山 僕もこの間行かせてもらいました。
松本 あとゴーイングでキーボードを弾いてくれているシンガーソングライターの橋口靖正くんが、サックの新しいアルバムのプロデュースもやっていて。そういういろいろなつながりがあるんですよね。
篠山くん、友達いた?
──篠山さん、イタバシさんはGOING UNDER GROUNDを聴いてました?
篠山 すごくよく聴いてました。僕、中学生くらいのときにラジオをよく聴いていたんですよ。ラジオではリリース前の新曲もかかってたし、そこでいろんなバンドを知って。録音して好きな曲だけ編集してたんですけど、その中にGOING UNDER GROUNDの「グラフティー」も入れてました。
松本 デビュー曲だね。
イタバシ 中学生のときにGOING UNDER GROUNDを聴いてたって早くない?
松本 でも曲を作る人ってそんな感じだよね。人より早くマイナーな音楽を聴くみたいな。
篠山 そうかもですね。僕、中1のときから曲を作ってたんですよ。最初はクソみたいな曲でしたけど……。
松本 俺も最初はそうだよ(笑)。だってコードも自分で考えてたんだから。理論も何もわからないから、適当に弦を抑えて。たまに「いいな」と思う響きがあったら、指で弦を抑えたままメモするっていう。だいぶあとになってから「あれはメジャー7thだったんだな」ってわかったけどね。
篠山 僕は頭デッカチなところがあったから、最初にコードを覚えたんですよ。インターネットで調べたり、曲のコードが載ってる“歌本”を見たり……。
松本 ……篠山くん、友達いた?
篠山 えっ? いましたよ。
イタバシ ハハハハハ(笑)。
松本 サックってさ、全員キャラクターが違うじゃない? よく友達になったなって思って。
イタバシ あー、そうですね。
篠山 まあ大学の同じサークルでしたからね。
松本 チカくん(イタバシ)は俺らに近いというか、ちょっとイナたい感じもあるでしょ? 飲んでるときは下品な話ばっかりだし(笑)。篠山くんはもっと繊細なのかなって。
篠山 そうかもしれないですね。品のない話も好きですけど(笑)。
自信のない篠山と自信しかない松本
──ではここからはSuck a Stew Dryのニューアルバム「N/A」について話を聞かせてください。松本さんは聴かれました?
松本 聴かせてもらいましたけど、すごくいいですね。自信あるでしょ?
篠山 いや、ないですね。
松本 え、ないの?
篠山 このアルバムに限らず、基本的に自信っていうものがないんですよ、僕は。
松本 へー。俺、自信しかないけどな。
イタバシ ハハハハ(笑)。いいですね!
篠山 だから、周りの人が「いい」って言ってくれた曲しか制作を進められないんですよ。自分から「この曲がやりたい」って言うのが難しいというか。
イタバシ あ、そうかもね。
松本 褒められて伸びるタイプか。でもその気持ちはわかります。ほかの人からああだこうだ言われるのはイヤだし、何か言うんだったら褒めてほしいから。俺、「これは明らかによくないな」って思う歌詞を書いちゃったときは、メンバーに見せて試したりするけどね。そこで「うーん……」っていう反応だったら「やっぱり、そうだよね」って思うし、「いいじゃん!」って言われたら「こいつに歌詞を見せるのはもうやめよう」って(笑)。
イタバシ すごいですね、それ(笑)。
松本 そういえば篠山くん、この前「天竺」に来てくれたときも思い悩んでたよね。浮かない顔してた。
篠山 いつも浮かない顔してるんですけどね(笑)。あのときは「(アルバムの曲が)あと数曲足りない」っていう時期だったんですよ。そのことを橋口さんに相談していて、その流れで飲みに行くことになったんですよね。
松本 橋口くん、一緒にやってみてどうだった?
篠山 すごく勉強になりました。ポップス的な知識がすごくあって、アレンジを考えているときもちゃんと理由を説明してくれるから、わかりやすいんですよね。
松本 そうそう。「これはこうだから、こうしたほうがいい」ということまで言ってくれるから。曲を作ってるとさ、意外と頭が固くなっちゃうでしょ?
篠山 そうなんですよ。自分たちの引き出しも限りがありますからね。「前もこんな感じでアレンジしたな。どうしよう」というときに橋口さんに相談することが多いです。
イタバシ 近くで見ていても(篠山と橋口は)相性いいなって思いますね。
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- Suck a Stew Dry ニューアルバム「N/A」/ 2016年5月25日発売 / Lastrum
- ニューアルバム「N/A」
- 完全生産限定盤 [CD+DVD] / 3132円 / LACD-0274
- 通常盤 [CD] / 2700円 / LACD-0275
CD収録曲
- GOEMON
- インナーワールド
- トロイメライ
- レフストアンブルフィ
- 失恋、失恋。
- 空に星が降る夜は
- 冷たいリグレ
- F.O.M.H.
- 一人じゃ生きれないわけでもない
- ヒーローになれずに
- ユースフル -used-
完全生産限定盤 DVD収録内容
- 「夢中でがんばれない君へエールを」恵比寿LIQUIDROOM公演ライブ映像
- GOING UNDER GROUND ニューシングル「the band」/ 2016年5月11日発売 / 1620円 / XQLG-1020 / Youth Records
- GOING UNDER GROUND 「the band」
収録曲
- the band
- Drifting Drive
- Bonus tracks 弾き語りMEDLEY
(同じ月を見てた / STAND BY ME / グラフティー / ランブル / orion / かよわきエナジー / トワイライト / 東京)
︎Suck a Stew Dryリリースワンマンツアー「N/A ~Ninja Action Tour~」
- 2016年6月1日(水)愛知県 SPADE BOX
- 2016年6月2日(木)大阪府 Music Club JANUS
- 2016年6月18日(土)新潟県 GOLDEN PIGS RED STAGE
- 2016年6月19日(日)宮城県 enn 2nd
- 2016年6月21日(火)北海道 COLONY
- 2016年7月1日(金)広島県 BACK BEAT
- 2016年7月3日(日)福岡県 DRUM SON
- 2016年7月8日(金)東京都 TSUTAYA O-EAST
GOING UNDER GROUND New single release 記念LIVE「the band」
- 2016年7月20日(水)東京都 新代田FEVER
LS LEAGUE
- 2016年6月12日(日)東京都 新宿LOFT
- <出演者>
Suck a Stew Dry / GOING UNDER GROUND / マカロニえんぴつ / Official髭男dism / ORIE / The Wisely Brothers
Suck a Stew Dry(サックアステュードライ)
ハジオキクチ(G, Cho)が篠山コウセイ(Vo, G)を誘い、2010年に結成したロックバンド。2013年にスダユウキ(B)が加入し、現在はキクチ、篠山、スダ、フセタツアキ(G, Cho)、イタバシヒロチカ(Dr)の5人で活動している。2011年11月にデビューミニアルバム「人間遊び」を発表して以降、ミニアルバム「ラブレスレター」、6曲入りCD「世界に一人ぼっち」、枚数限定CD「アイドントラブユー」とリリースを重ね、10~20代を中心にファンを増やしていく。1stフルアルバム「ジブンセンキ」の発売を経て、2015年3月に4曲入りCD「モラトリアムスパイラル」と初のライブDVD「僕らのジブンセンキ ワンマンツアー2014 Final」、9月にミニアルバム「Wake me up!」をリリース。2016年5月にはニューアルバム「N/A」を発売した。
GOING UNDER GROUND(ゴーイングアンダーグラウンド)
THE BLUE HEARTSに憧れて、松本素生(Vo, G)、中澤寛規(G, Vo)、石原聡(B)、伊藤洋一(Key)が中学時代に前身バンドを結成。河野丈洋(Dr, Vo)が加わり、何度かのメンバーチェンジを経て、高校卒業時に5人体制となりGOING UNDER GROUNDと名乗り始める。インディーズシーンでの活躍を経て、2001年にシングル「グラフティー」でメジャーデビュー。「ミラージュ」「トワイライト」「ハートビート」など、切なく爽やかなメロディで幅広い支持を集める。2005年には「トゥモロウズ ソング」をNHK「みんなのうた」に提供し、新境地を開拓。2006年7月に初の東京・日本武道館公演を行い成功を収める。2007年初頭には彼らの楽曲が原案となった映画「ハミングライフ」が公開された。2009年4月に伊藤が脱退。2011年5月には東京・日比谷野外大音楽堂でワンマンライブを行い、元メンバーの伊藤と共演してファンを驚かせた。同年11月には映画「ハラがコレなんで」の主題歌としてシングル「愛なんて」を発売する。2015年1月に河野が脱退し、現在は松本、中澤、石原の3人編成で活動中。2016年5月に新体制になってから初の全国流通盤としてニューシングル「the band」をリリースした。