ストレイテナー|2020年唯一のワンマンライブを忘れないために

ストレイテナーが12月17日に東京・渋谷CLUB QUATTROにてオンラインライブ「ONLINE ONE-MAN LIVE "STRAIGHTENER20201217"」を開催する。

今年9月、メジャー2ndアルバム「TITLE」(2005年発売)の再現ライブとして初のスタジオライブ配信「TITLE COMEBACK SHOW」を行ったストレイテナー。2度目の配信ライブとなる「STRAIGHTENER20201217」は、観客を招いてライブハウスを会場に行われる予定で、バンドにとって2020年唯一のワンマンライブとなる。音楽ナタリーではライブの開催に向け、ホリエアツシ(Vo, G, Piano)と大山純(G)にインタビュー。「TITLE COMEBACK SHOW」で感じた手応えなどを交えながら、ひさびさのワンマンライブに向かう2人の心境を語ってもらった。

取材・文 / 倉嶌孝彦 撮影 / 星野耕作

「TITLE」の完成形を示せた

──前回の配信ライブ「TITLE COMEBACK SHOW」の直前にも取材をさせていただいたので(参照:ストレイテナー「TITLE COMEBACK SHOW」インタビュー)、まずはこのライブの感想から伺えればと思います。

ホリエアツシ(Vo, G)

ホリエアツシ(Vo, G) 楽しかったですね。4人で音を鳴らすことが楽しいって改めて感じました。

大山純(G) 僕は本番よりリハーサルのほうが楽しかったかな(笑)。配信だとミスれないという気持ちが大きくて、けっこう緊張しながら本番を迎えました。

──それはスタジオライブだからこその緊張だったんですか?

大山 お客さんがいないからこその緊張だったかもしれませんね。お客さんがいると、逆に気持ちを乗せてもらえるんですよ。

ホリエ 意識がお客さんのほうに向く普段のライブとは違う感覚かもしれない。スタジオライブだと意識がずっと自分のプレイに向いちゃうから、「ミスれない」みたいに考え過ぎちゃうかも。

大山 しばらくライブがなかったから、不慣れな感じになっちゃったな(笑)。

──大山さんは3人体制の時代に作られた「TITLE」というアルバムに対して、どんな印象を持っていますか?

大山純(G)

大山 僕の印象にすぎませんが、ものすごくがんばっている作品だと感じました。当時の3人がやりたいこと、もしかしたらできないことまでやろうとすごくがんばっている作品。アルバムの収録曲と向き合ってみて、当時はスリーピースだったのに4人分の音で作られている曲がすごく多いことに気付いたんです。ドラムとベースとギターに加えて鍵盤、みたいな。僕が新しいアレンジを加えるまでもなく、4人のバンドの曲として完成している曲が多かった。1曲だけ、「STILLNESS IN TIME」はスリーピースの曲として完結していた印象だったので、僕が新たなアレンジを加えましたが。

ホリエ コードを弾いている上にアルペジオを重ねていたり、できればギターも2本鳴らしたい欲求は当時からすごくあったなあ。

大山 「TITLE COMEBACK SHOW」でひさしぶりに演奏した曲もあったよね。

ホリエ 何曲かはライブでの定番曲としてやり続けているけど、「LOVE RECORD」とかは本当にたまにしかやらないから。4人で全曲通して演奏して、ようやく「TITLE」というアルバムの完成形をライブで示すことができた手応えはあります。

大山純としての最高傑作

──配信ライブの最後、新曲「叫ぶ星」のスタジオライブ映像が流れましたよね。「叫ぶ星」は12月2日にリリースされた最新アルバム「Applause」に収録されている新曲で、「TITLE」の収録曲ではありませんが、どことなく「TITLE」のサウンドに近いものがあると感じました。

ホリエ おっしゃる通り、「叫ぶ星」は「TITLE」のバンドアンサンブルを振り返ってアレンジした曲なんです。インディーズ時代に作った「走る岩」と「TITLE」の収録曲「泳ぐ鳥」という2曲に連なった曲として、「叫ぶ星」というタイトルを付けました。タイトルは「走る岩」の歌詞の中に出てくる「叫ぶ 流れる星」という一節に由来しています。ナカヤマくんが「『TITLE COMEBACK SHOW』でサプライズで新曲をやろう」と提案してくれて、だったら「叫ぶ星」がサウンド的にピッタリだなと思って、あの日に初披露することになった。

──ということは「TITLE COMEBACK SHOW」の開催に関係なく「叫ぶ星」は生まれていて、別軸でその初披露の場として最適なライブの場が立ち上がったわけですね。

ホリエ そうですね。アルバムの先行シングルとして配信する1曲目を選ぶ中で「叫ぶ星」が候補に挙がっていて。さらに「TITLE」の再現ライブが決まり、だったらその場で初披露するのが一番いい、みたいにこの曲を中心にいろんなことの意味がうまくつながった気がします。

──「叫ぶ星」は大山さんのギターの存在感が大きい曲でもあると感じました。

大山純(G)

大山 いつもだったらスタジオで合わせるときにフレーズが思い浮かんで、それがしっくりくることが多いんですが、「叫ぶ星」に関してはスタジオでいいアイデアが浮かばなくて。珍しく宿題的に家でフレーズを考えたんです。家でいろいろ試行錯誤していたら、個人的に大傑作と呼べるフレーズができてしまって。もうこれを超えられないんだけどどうしよう、という気持ちです。

ホリエ すごくOJらしいギターだよね。僕が弾くギターはリズムギターなので、ドラムとシンクロしていることが多いんですけど、リズムの隙間で遊ぶギターという意味での完成形なのではないか、と僕も感じました。大山純としての最高傑作ができちゃったってことだよね?

大山 うん。自分がストレイテナーのギタリストとしてやりたかったことが見え切ったというか、たどり着いた実感があって。この先どうなるのかなと思っています。

ホリエ いいんじゃない(笑)。バンドに加入して12年も経つんだし。

左からホリエアツシ(Vo, G)、大山純(G)。

──Aメロで大山さんがギターを弾かないのも驚きました。イントロやサビを引き立たせる目的もあってか、潔くギターを弾かない選択をするという。

ホリエ 大胆なアレンジですよね。最初はそんなつもりなかったんですよ。OJがギターを弾くもんだと思っていたんですが、あるときから弾かなくなっていた(笑)。結果、リズム隊が作る骨格の上で歌が抜けてきたから、OJの感覚は正しいと思う。

大山 リハーサルのときはAメロでもちょっとだけ弾いていたんですよ。でもそのときの音を聴いて、さっき言ってもらったような潔さが足りない気がして。ここは思い切っていいんじゃないかと、みんなには何も相談せずに弾くのをやめました。

ホリエ ハッとしますよね。シンプルだからこその説得力というか。

ホリエアツシ(Vo, G)

──最新アルバム「Applause」の曲も聴かせていただきましたが、先ほど話したような“引き算のアレンジ”がさまざまな曲で行われていると感じました。

ホリエ 往年のロックバンドの先輩方の曲にはソロパートがあったりするんですが、僕らはそういうことをやってこなかったんですよね。たぶん、照れちゃってあまりやりたくなかったんだと思う。ズバーンとスポットライトが当たると委縮しちゃうというか。だからと言って全員が地味なことをしているわけでもなくて、自然とベースが聞こえる瞬間、ギターが栄える瞬間、みたいなものをメンバー間の押し引きで表現できるようになったんだと思います。これまではそれを意図的にやっていたわけではないんですが、今回のアルバムではアレンジの段階で引くことをちょっと意識したところも多いですね。

──ストレイテナーの場合、ソロではなくてもソロと同じくらいテクニカルで目立つフレーズを弾いていることもしばしばありますし。

ホリエ そうですね。なんなら歌ってる後ろでベースやギターがめちゃくちゃ動いてる、みたいなことは、むしろ多いと思います(笑)。