3人での4年間はバンドの青春時代
──2004年の日向さん加入から2008年の大山さんの加入まで、4年間の3人時代のストレイテナーはどういう時期でしたか?
ホリエ 4年間がむしゃらにやってきて、3ピースバンドとして完成した感はあったと思うんですよね。
日向 特に「Immortal」(2007年11月発売の2ndミニアルバム)は1つの完成形だよね。
ホリエ 「LINEAR」(2007年3月発売の4thアルバム)っていう、打ち込みを取り入れたりして実験的なアルバムを作った反動もあって、「Immortal」は生身の音だけで作り上げた音源にしたんです。そこで3人の音としては1つやり切った感覚があって。
ナカヤマ どういう時期だったかって言うのは難しいね。
日向 まあ、青春してた時期かな(笑)。
ホリエ 確かに。だいたいのバカなことは3人時代にやり尽くした。
ナカヤマ フェスに行って出番が終われば、へべれけになるまで飲んでたしね。
ホリエ 3人時代はまだワゴンで全国を回ってたし。「Dear Deadman」(2006年3月発売の3rdアルバム)のツアーを回りながらロードムービーを撮ってたんですけど、後輩のバンドマンから「あの映像を観て、バンドでツアーを回ることに憧れたんです」って言われたことがあって。当時の僕はただ「水曜どうでしょう」みたいなことがやりたかっただけなんですけどね(笑)。
日向 今だったらちょっと体力が保たないかもね。それぐらいはっちゃけてた。
ホリエ うん。確かに、言われてみればバンドの青春時代だったかもしれない。
自分の中にある一番新しいところを出せた
──最新アルバム「Future Soundtrack」についても触れられればと思います。ストレイテナーがフルアルバムをリリースするのは約2年ぶりになりますが、今作はどういう過程で作られた作品なんでしょうか?
ホリエ 「Future Soundtrack」は短期間で作り上げた“一点集中型”のアルバムじゃなくて、「COLD DISC」をリリースしたあとの約2年の間で自然にできた曲を集めて作ったアルバムなので、1曲ずつモードが違うんですよね。中には1年前にプリプロを作ったのに、最終的にガラっとアレンジを変えた曲もあります。
──4月にリリースされたシングル「The Future Is Now / タイムリープ」のインタビューでは「エモーショナルなダンスチューン3曲を詰め込んだ」とおっしゃっていました。アルバムでも曲のタイトルや歌詞の節々に「ダンス」という言葉が使われていて、今のテナーのモードはダンスミュージックに寄っているのかな、という印象があります。
ホリエ 「LINEAR」の頃は、エレクトロの曲もあればロックチューンも入っている、言わばその両極端を見せるのがストレイテナーの持ち味、みたいな意識があったんです。でも今の時代っていろんなバンドやアーティストが、エモーショナルな音楽とダンスミュージックを融合させた表現を成立させているし、ストレイテナーというバンドならその2つの融合をより高いクオリティで提示することができる、そういう確信があったんですよね。
日向 エモーショナルな要素を含んだダンスミュージックって、今の時代の主流になりつつある音楽だと思うんです。僕は今作の「Future Soundtrack」で自分の中にある一番新しいところを出せた感覚があるし、それがちゃんとテナーらしさとして成立してる手応えがあって。作っててメチャクチャ気持ちよかったです。
ナカヤマ リズムトラックだけで言うとすごく先祖返りしていると言うか、古いビートが多いんです。
──メロコアふうの楽曲「Last Stargazer」は、ストレイテナーの楽曲の中でもかなり珍しいリズムパターンですよね。
ナカヤマ このリズムパターンは初めてでしたね。大人になったからこそ、今までやってこなかったことを楽しんで試せるようになったと言うか。
日向 「Last Stargazer」は疾走感のあるシンプルなロックチューンで、最近の僕らのモードからは少し外れた曲なんです。でもあえてこういう曲を入れることで「俺たちこういうのもやれるんだぞ」って部分が見せられたと思ってます。
自分の枠に収まりたくない
──アルバムの中では「もうすぐきみの名前を呼ぶ」というタイトルがとても気になりました。ストレイテナーの曲はこれまで簡潔な単語のタイトルが多かったので、こういったニュアンスのあるものは珍しいですよね。
ホリエ 確かにそうですね。僕が付ける曲タイトルって、自分の中ではちゃんと「この詞はこうだからこういうタイトルなんだ」って意図があるんですけど、それってじっくり詞を読んだうえで曲について理解を深めてくれた人じゃないとわからないんですよね。もしかしたら英単語2つとかで成り立ってる曲名ってあんまり入ってこないのかな?って思い直すこともあって。まずは曲名から曲に対する興味を持ってもらいたいな、という狙いもあって、いつもは付けないようなタイトルを付けてみました。
ナカヤマ 僕は「もうすぐきみの名前を呼ぶ」って言葉選び、すごくホリエくんっぽいと思ったんです。むしろ「Boy Friend」ってタイトルのほうが意外だった。
日向 確かに。「Boy Friend」は仮タイトルかと思ってたぐらい、潔い形だよね。
ホリエ 「Boy Friend」に対しては、「なんでGirl Friendじゃないの?」って言われることも多くて。僕の中ではボーイフレンドの目線で歌っているから、自然とタイトルがボーイフレンドになったんですけどね。
ナカヤマ この曲が出てきて「ホリエくん、こういうタイトル付けるようになったんだ」と思いましたね。
ホリエ 自分がやってこなかったことに挑戦してみたいって欲求は常にあるんです。自分の枠に収まりたくないと言うか。
日向 今回のアルバムにはそれがすごい出てると思う。歌い方もちょっと違うもんね。すごく人間らしさが出てきた。
ホリエ 昔はひたすら自分の声を歪ませてたからね(笑)。
日向 うん。今とは真逆なところにいたと思う。僕は歌い方の変化でホリエくんの成長をすごく感じましたね。
「イントロを弾かせてくれ」
──アルバムの収録曲の中で、それぞれ思い入れ深い曲はありますか?
ホリエ 「Boy Friend」ですね。新境地を開拓できたと言うか、今までにない具体性を持った歌詞が書けたと思っています。もともと歌詞に具体性を持たせようとかはあまり意識してなかったんですけど、自分が読む本だったり、観る映画だったり、いろんなものに触れていく中で、人は具体性を持たせた言葉や表現により興味をそそられるんじゃないかと思うようになって。それが表れてるのが「Boy Friend」だと思っています。
ナカヤマ 僕はやっぱり「The Future Is Now」ですね。
──前回のインタビューでシンペイさんが「『Melodic Storm』より明るい」と話していた曲ですね。
ナカヤマ はい。「灯り」のような曲とはまた違うキャッチーさがあって、僕らがここまで突き抜けた明るさを曲で表現できるようになったことが感慨深いです。2、3年後くらいにこの曲がファンの皆さんにどういう受け止められ方をしてるのか、すごく楽しみな1曲です。
日向 僕はアルバム最後の曲「Our Land」が一番好き。このスケールのデカさを表現できるバンドは、日本ではテナーしかいないと思ってます。
──「Our Land」は日向さんのベースから始まる曲ですよね?
日向 そうです。実は「イントロを弾かせてくれ」って自ら志願したんです(笑)。1発目の音で曲の世界観を表現したかったのと、その音を出せるベーシストは僕しかいないだろうと思って。大事なところを任せてもらいました。
──「Our Land」ではホリエさんがメロディを「ラララ」で歌うところが新鮮でした。
ホリエ 最初は何か歌詞を付けようかとも思ったんですけど「このメロディは『ラララ』で歌うのがめっちゃカッコいい」ってことに気付いて。
日向 「ラララ」のところ、メチャクチャいいよ。
ホリエ 最近音楽をテーマにした映画が増えてきているけど、「Our Land」はそういうところから受けた影響が強く出てる曲ですね。昔からそうですけど、作品を作ったときに触れていたものが曲にけっこう色濃く出てて。その時々で自分の中のムーブメントが曲に影響を与えていることは多いです。
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ストレイテナー バイオグラフィ 2004~2008年
- ストレイテナー「Future Soundtrack」
- 2018年5月23日発売 / Virgin Music
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初回限定盤 [CD+DVD]
5184円 / TYCT-69128 -
通常盤 [CD]
3240円 / TYCT-60117
- CD収録曲
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- Future Dance
- タイムリープ
- After Season
- Boy Friend
- 灯り(ストレイテナー×秦 基博)
- もうすぐきみの名前を呼ぶ
- The Future Is Now
- Superman Song
- Last Stargazer
- 月に読む手紙
- Our Land
- 初回限定盤DVD収録内容
-
ONE-MAN LIVE テナモバ presents 'STRAIGHTENER MANIA' 2018.02.20 at STUDIO COAST
- REBIRTH
- Stilt
- STAINED ANDROID
- Dead Head Beat
- AFTER THE CALM
- WHITE ROOM BLACK STAR
- 星の夢
- BLACK DYED
- KINGMAKER
- LOVE RECORD
- 放物線
- TRIBUTE
- BERSERKER TUNE
- ストレイテナー
- 1998年にホリエアツシ(Vo, G, Piano)とナカヤマシンペイ(Dr)の2人で結成。2003年のメジャーデビューのタイミングで日向秀和(B)が加入。さらに2008年には元ART-SCHOOLの大山純(G)が加わり、4人編成に。2009年2月には4人編成となってから初めてのフルアルバム「Nexus」を発表し、同年5月にアルバムを携えてのツアーファイナルとして初の日本武道館公演を開催した。ホリエはソロプロジェクト・entとして、日向はNothing's Carved In Stone、EOR、killing Boyのバンドメンバーとしても活動するなど、各メンバーがさまざまなバンドやプロジェクトで活躍している。2016年5月にアルバム「COLD DISC」を発表。同年6月より計26カ所の会場を回る全国ツアー「Step Into My World TOUR」を開催し、ツアーのライブ映像を収めたライブBlu-ray / DVDを2017年3月にリリースした。バンド結成20周年のアニバーサリーイヤーとなる2018年には4月にニューシングル「The Future Is Now / タイムリープ」を、5月にニューアルバム「Future Soundtrack」を発表する。
2018年9月18日更新