ストレイテナーがバンド結成20周年のアニバーサリーイヤーを迎えたことを記念して、音楽ナタリーでは計3回にわたる特集を掲載中。第2回となる今回はバンドのオリジナルメンバーであるホリエアツシ(Vo, G, Piano)とナカヤマシンペイ(Dr)に、2004年に加入した日向秀和(B)を加えた3人にインタビューを行い、音源リリースのペースやライブの動員など、活動の規模感が飛躍的に大きくなっていった“3人時代”の歩みを振り返ってもらった。またインタビュー内では、5月23日にリリースされる最新アルバム「Future Soundtrack」で彼らが感じたというバンドの新境地についても話を聞いた。
取材・文 / 倉嶌孝彦 撮影 / 後藤壮太郎
ストレイテナーは憧れの存在だった
──前回の特集ではホリエさんとシンペイさんの2人にインタビューを行いましたが(参照:ストレイテナー20周年企画 第1弾|まっすぐ歩き続けたバンドの原点)、今回は日向さんを加えた3人にお話を伺えればと思います。まだストレイテナーに加入する前の日向さんにとって、当時の2人はどういう存在でしたか?
日向秀和(B) 僕にとっては憧れの存在でしたね。ストレイテナーはちょっとパンクカルチャーっぽいところでやってて、一方のART-SCHOOLはわりとギターロックとか、パワーポップ系の見られ方をしていたバンドだったんですけど、どちらのバンドもルーツには通じるものがあると思っていて。でもストレイテナーは僕らよりもスタイリッシュに音楽をやっていたからすごくカッコよかった。
ホリエアツシ(Vo, G, Piano) ART-SCHOOLとはスプリット音源を出して、ツアーを回ったり、メジャーデビュー前からイベントとかでもよく対バンしてました。ひなっちはストレイテナーの新宿LOFTワンマンを観に来てくれたよね。
日向 うん。2人のライブを観て「ものすごくタフだな」と思いました。MCなし1時間半とか、ひたすら2人でがむしゃらに演奏してるんですよ。
ホリエ 確かそのときのひなっちの一言めの感想が「長え!」だった。
日向 そうそう(笑)。当時は2、3バンド集まってやることが多かったから、1組でこんなに長い時間演奏できるものなんだって驚いて。
──ベーシストである日向さんはベースレスの音楽をどう感じていましたか?
日向 2人の演奏を聴いていると「自分だったらベースでこう合わせる」みたいな音は頭の中で鳴るんですけど、すでに2人が鳴らす音で成り立っていたから。だから別に「ベースいらないな」って感じでしたね。
カタルシスしかなかった初の音合わせ
──ホリエさんやシンペイさんから見て、当時の日向さんはどういう印象でしたか?
ホリエ バンドって最初はギターボーカル同士が交流を持つことが多いから、ART-SCHOOLの中で最初に仲良くなったのは(木下)理樹でした。で、ART-SCHOOLのCLUB eggsite(現shibuya eggman)での企画に呼んでもらって、そのときにひなっちとは意気投合した覚えがあります。
日向 あったね。そんなこと。
ナカヤマシンペイ(Dr) 見た目に反してえらい腰が低くて柔らかい印象でしたね。僕らもそうだけど、やっぱり当時はとんがってるバンドマンが多かったし、きっと悪い人たちではないんだろうって思ってました。
日向 僕が当時のことでよく覚えているのは、ART-SCHOOLとストレイテナーのスプリットツアーの中で、一度“ストレイテナー号”に乗せてもらったことがあったんですよ。そのとき、すごく居心地がよくて(笑)。バンドの車って常に殺伐としてるものだと思ってたんですよ。実際ART-SCHOOLの車では常に音が爆音で鳴ってて、ピリピリした空気感があって。だからテナー号に乗ったときは「バンドをやってるのにこんな空気感で移動できるものなんだ」って驚いたんですよね。
ナカヤマ テナー号は、そもそも音楽が爆音で鳴ってないからね(笑)。
──前回のインタビューではシンペイさんが「3人で初めて音を合わせたときのことを覚えてる」とおっしゃっていました。日向さんも当時のことは覚えていますか?
日向 覚えてます。確か最初に「SILVER STAR」を合わせたんだよね。もうね、カタルシスしかなかったです。
ホリエ Foo Fightersで言う「Everlong」のミュージックビデオみたいな感じ。
日向 そうそう(笑)。
ホリエ 音のスケール感が大きくなって、全能感があったよね。
日向 当時のテナーの曲はベースレスが前提ではあったんだけど、実際に曲と向き合ってみると、僕が入る隙間を開けてくれていたような気がしたんですよね。だから実際に楽器を持って一緒に音を鳴らすと、わりとすんなり溶け込むことができたし、曲のパワーがグッと増す感覚があって。
ホリエ 僕らはずっとベースレスでライブをやってたけど、ベース無しでアレンジが成立しているというよりは、小さいライブハウスだからギターとドラムの音圧でカバーできてる感じだったので、ひなっちが入る違和感みたいなものは全然なかったんです。レコーディングでは鍵盤でベースラインみたいなフレーズを弾いてる曲もあったし。
日向 3人での初ライブのとき、3人でリハやってたら細美(武士)くんがコケちゃったんですよね(笑)。「どっひゃー」みたいな感じで。
──日向さんがサポートメンバーとしてストレイテナーのステージに立つことに対して、ファンの反応はどうでしたか?
ホリエ 僕らは3人でやることに絶対の自信があったんですけど。
日向 2人時代のストレイテナーを観続けてきたお客さんからしたら、最初はやっぱり違和感のようなものがあったと思うんです。だから3人のスタイルを形にしていくのは茨の道を行くようなものだとは思ってました。
ホリエ 最初に3人でやったときって本当に事前に何もアナウンスしてなくて、いきなりステージに3人が上がってストレイテナーとしてライブをやったんだよね。
ナカヤマ 今のバンドみたいに「明日重大告知があります!」とか呼びかけはなかったからね。
日向 当時はバンドのかけ持ちとかもそんなに例がなくて、バンド同士でサポートし合うこともあまりなかった。だからきっとファンによっては “裏切り”に近いニュアンスを感じてしまった人もいると思うんです。
ホリエ たぶんART-SCHOOLとストレイテナー、どちらも好きな人でも最初は戸惑ったんじゃないかな。
バンドって別に怒ってなくてもいいんだ
──前回の特集でホリエさんとシンペイさんにはお互いの変化を話していただいたんですが、日向さんから見てお2人はどう変わったと感じていますか?
日向 2人とも大人になったと思います。責任感を持って行動するようになったと思うし、社交的にもなった。ホリエくんの交流が広がっていったのはもちろんあるし、シンペイなんて以前はバンドマン同士の交流とか一切なかったんだけど、今ではいろんな人と飲みに行ってるみたいだし。キャリアを重ねていく中で責任感は増したと思うんだけど、ある意味では2人とも肩の荷が下りたのかもしれないですね。
ホリエ ひなっちはだいぶ丸くなったよね。
ナカヤマ うん。丸くなった。
日向 いやあ、昔はよくケンカしてたよね(笑)。
ホリエ 10年ぐらい前のひなっちは「バンドはこうあるべきだ」みたいなことをよく言ってたんです。僕とひなっちは活動のスタンスとかについて、ツアーの打ち上げで酔っ払ってよく議論してましたね。
ナカヤマ 全員が全員、角がなくなったんだよね。イライラすることとかも圧倒的に減ったと思うし。
日向 ここまで続けてきて、ようやくバンドがわかった気がするんだよね。バンドって別に怒ってなくてもいいんだって。
ホリエ 若いときは当然無名なわけだし、認められていないことに対する反骨精神を原動力にしていたところはあったよね。これは僕らだけではなくて、多くの若いバンドマンに共通するところだと思うけど。
日向 それに若いときのほうが「ロックとはこうあるべき」みたいな主張が強かった。「ロックバンドたるもの斜に構えるべき」みたいなことも考えてたし、マイノリティであることにある意味誇りを持っていたと思う。キャリアを重ねることで、いい意味でその考えが緩くなっていったよね。
ナカヤマ 売れてない時期は「全部のライブで絶対に勝ってやる」って意気込みで前座をやってたから。その時期に比べたら間違いなく気負わずにライブができてるし、そのほうが絶対にいい演奏ができる確信がありますね。
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3人での4年間はバンドの青春時代
- ストレイテナー「Future Soundtrack」
- 2018年5月23日発売 / Virgin Music
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初回限定盤 [CD+DVD]
5184円 / TYCT-69128 -
通常盤 [CD]
3240円 / TYCT-60117
- CD収録曲
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- Future Dance
- タイムリープ
- After Season
- Boy Friend
- 灯り(ストレイテナー×秦 基博)
- もうすぐきみの名前を呼ぶ
- The Future Is Now
- Superman Song
- Last Stargazer
- 月に読む手紙
- Our Land
- 初回限定盤DVD収録内容
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ONE-MAN LIVE テナモバ presents 'STRAIGHTENER MANIA' 2018.02.20 at STUDIO COAST
- REBIRTH
- Stilt
- STAINED ANDROID
- Dead Head Beat
- AFTER THE CALM
- WHITE ROOM BLACK STAR
- 星の夢
- BLACK DYED
- KINGMAKER
- LOVE RECORD
- 放物線
- TRIBUTE
- BERSERKER TUNE
- ストレイテナー
- 1998年にホリエアツシ(Vo, G, Piano)とナカヤマシンペイ(Dr)の2人で結成。2003年のメジャーデビューのタイミングで日向秀和(B)が加入。さらに2008年には元ART-SCHOOLの大山純(G)が加わり、4人編成に。2009年2月には4人編成となってから初めてのフルアルバム「Nexus」を発表し、同年5月にアルバムを携えてのツアーファイナルとして初の日本武道館公演を開催した。ホリエはソロプロジェクト・entとして、日向はNothing's Carved In Stone、EOR、killing Boyのバンドメンバーとしても活動するなど、各メンバーがさまざまなバンドやプロジェクトで活躍している。2016年5月にアルバム「COLD DISC」を発表。同年6月より計26カ所の会場を回る全国ツアー「Step Into My World TOUR」を開催し、ツアーのライブ映像を収めたライブBlu-ray / DVDを2017年3月にリリースした。バンド結成20周年のアニバーサリーイヤーとなる2018年には4月にニューシングル「The Future Is Now / タイムリープ」を、5月にニューアルバム「Future Soundtrack」を発表する。
2018年9月18日更新