1998年に都内を拠点に活動を開始したストレイテナー。音楽ナタリーでは彼らが結成20周年のアニバーサリーイヤーを迎えたことを記念して、計3回にわたってストレイテナーの20年の変遷をたどる特集を掲載する。
第1回の特集ではバンドのオリジナルメンバーであるホリエアツシ(Vo, G, Piano)とナカヤマシンペイ(Dr)にインタビューを実施。20年共に歩んできたお互いの変化について語り合ってもらったほか、ストレイテナーの年表をもとに2人で活動していた頃を振り返るトークも展開してもらった。またインタビューの中では、最新シングル「The Future Is Now / タイムリープ」についても話を聞いている。
取材・文 / 倉嶌孝彦 撮影 / 草場雄介
何も捨ててこなかった20年
──結成20周年のアニバーサリーイヤーを迎えましたが、オリジナルメンバーであるお二人は20年という歴史をどう感じているんでしょうか?
ホリエアツシ(Vo, G, Piano) バンドがずっと続いていると、なかなか過去を振り返る機会ってないんですよね。だから正直、あまり実感がないんです。
ナカヤマシンペイ(Dr) アニバーサリーイヤーを迎えたこともあって、最近よく結成20周年について聞かれるんですけど、「感慨深い」とかそういう思いって特にないんですよね。
ホリエ 環境が変わってないからね。
ナカヤマ そう。僕らは2人から3人、4人とメンバーは増えてきましたけど、誰かがバンドを抜けたことがないですし、ライブのスタッフもレコーディングのスタッフもほとんど変わらずにやってこれたんです。今ここにいられることが何よりってくらいで、20年の時の流れを感じることはあんまりないんですよね。
ホリエ 長い付き合いの中で何も捨ててこなかったんですよね。僕自身、すごく断捨離が苦手なタイプなんです(笑)。だから仲間を増やすだけ増やしながらそのまま歩いてきちゃったのが今のストレイテナーなのかな。
──ストレイテナーというバンドは、メンバーの脱退がなければ病気やケガによる長期の活動休止もないんですよね。バンド名の通り真っ直ぐ歩んできたバンドだと感じました。
ホリエ 名前を付けたときはそこまで意図したわけじゃなかったんですけど、振り返ってみると確かにまっすぐな道ができていた感覚がありますね。
──お二人ともストレイテナー以外にもいろいろなバンドやプロジェクトに関わる機会があると思いますが、ストレイテナーというバンドならではの空気感は感じますか?
ナカヤマ 居心地いい実家というか、気を遣わないでいい感じがありますね。もちろんいろんなバンドを楽しくやらせてもらってますけど、よそはやっぱりよその家っていう感じがあるんです。
ホリエ バンドにはバンドの物語があるから、僕がいるからストレイテナーが僕の色に染まってるってわけではないんです。メンバー4人はもちろん、スタッフさんやファンの方も含めてバンドの空気感につながっていて。ストレイテナーの色と言うか、ストレイテナーらしさって、年月が経てば経つほどどんどん確かなものになっている感覚があります。
よく言えば生き様を、悪く言えばエゴをぶつけてた
──前回のライブDVD / Blu-rayのインタビューでは、メンバーの皆さんが「大人になった」という話に落ち着くことが多くて(参照:ストレイテナー「Step Into My World TOUR 2016」インタビュー)。今回の取材ではホリエさんとナカヤマさんのお二人に、お互いの変化や成長を語っていただければと思っています。まずはホリエさんから見て、ナカヤマさんの変化をどう感じていますか?
ホリエ シンペイ個人だけじゃなくて、昔のストレイテナーは自分たちのことを知ってくれているかどうかに自信がなくて、外に向けてあまり開いていなかったんです。年が経つごとにだんだん外に向けて心を開くようになってきているのが一番の変化ですね。若かりし頃のことを思い出すと、だいぶ引きこもって閉じてたなって思います。ただ、僕はどっちかと言うと「この人たちは僕らのことを好きなんじゃないか」とか「認めてくれるかもしれない」みたいなことを気にしていて、気が合いそうな人たちとは仲よくなっていこうって意識はあったんですけど……。
ナカヤマ 僕は外に向けて1つも開いてなかったんですよね。
ホリエ たぶん興味もあんまりなかったんだと思う。
ナカヤマ うん、興味もなかった。
──今のシンペイさんは、さまざまなバンドに関わるプレイヤーになりましたよね。
ナカヤマ 長い間活動する中で友達が増えたし、人に対して疑心暗鬼になってたところがだんだん変わってきたんだと思います。
ホリエ シンペイはプレイもかなり変わったよね。
ナカヤマ うん。昔の自分はステージ上でよく言えば生き様を、悪く言えばエゴをぶつけてた。それがいつの頃か「僕は曲を聴かせるためにステージに上がっているんだ」ってことに気付いて。それに気付けてからステージでのパフォーマンスはだいぶ変わったと思います。バンドマンっていつまでもステージに上がれるわけじゃないし、実際にステージに上がれなくなる人がいっぱいいる中で、まだ取り返しの付くところで大事なことに気付けて、本当によかったと思ってます。
客観視できるようになったからできた「テナマニ」
──ちょっと話は逸れてしまうんですけど、今の話を聞いて、2月に東京・新木場STUDIO COASTで行われた「STRAIGHTENER MANIA」を思い出しました(参照:ストレイテナーがマニアに捧げた一夜、レア曲連発の「テナマニ」)。あの日のアンコールで披露された「BERSERKER TUNE」は、普段のライブアレンジが施された形ではなく原曲を忠実に再現した形で。今シンペイさんが話した「曲を聴かせるためにステージに上がる」という言葉が体現されていたと思います。
ナカヤマ 「原曲版でやろう」って言い出したのはひなっち(日向秀和 / B)なんです。「原曲は原曲でやったらカッコいいから、そのままやろうぜ」って話してて、本当にその通りだなって。しかもライブのときは僕らの演奏とお客さんの反応もバッチリかみ合った。
ホリエ 原曲に立ち返ってここまで反応がいいとは思わなかったよね。メチャクチャうれしかったです。
──普段のライブで滅多に演奏しないマニアックな楽曲だけを披露する「STRAIGHTENER MANIA」というライブイベントが開催できたのも、20年というバンドの歩みがあったからこそですよね。
ホリエ 「テナマニ」では、インディーズの頃の曲もなるべく変えずにやろうって方針で練習やリハをやってたんです。
ナカヤマ ホリエくんが「このアレンジの魅力がわからない」とか言い出しても「ダメ! そのまま再現して!」って。
ホリエ 「このキメの繰り返し、いらないんじゃないか」とか思っちゃうんです。「UNICORN」のイントロで出てくるキメの繰り返しが毎コーラス出てくるんですけど、「今だったら絶対半分にするな」って思いながら、忠実に再現してました。
ナカヤマ 楽曲のクオリティを上げるのが目的じゃなかったから。
ホリエ 昔の曲をカッコよくしようと思えばいくらでもできるんですけど、古い曲や全然ライブで披露していない曲も自分たちの足跡だし、「テナマニ」はたまには掘り返してみるのもいいかなって企画だったから。カッコ悪いと思いながらもカッコ悪いままやっちゃうことに対して、もはや恥ずかしさもそんなになかったんですよね。
ナカヤマ 形はどうあれ「いい曲だからやろうよ」って気持ちがまずあった。
ホリエ ある意味、自分たちの曲を客観視できるようになったからできた企画だと思います。
──ただ2人時代、3人時代の曲を現体制でやる以上、多少のアレンジは必要になるわけですよね。
ホリエ そうなんです。だから、音の足し算もすごく気を遣ってました(笑)。
ナカヤマ 「当時でもこれ、鳴ってたんじゃない?」って音になってたよね。
ホリエ 今の自分じゃなくて当時の自分がもう1本ギターを重ねるんだったら、こうだったかな、みたいなことを考えながらリハをやってました。こういう経験はやっぱり20年やってきたからこそのものでしたね。
ホリエアツシが書く歌詞の変化
──話を戻して、シンペイさんはホリエさんの変化をどう感じていますか?
ナカヤマ まろやかになってきたと思います。昔はもっと職人肌っぽくて、アーティスティックなこだわりが強かった。でも最近はいろんなことに対していい意味で許容できるようになってきてる。お互い今年で40歳だし、閉じてたり尖ってたりしたところが大人になったんだなって思いますね。
──ソングライターとしてのホリエさんの変化は?
ナカヤマ 特に歌詞はよりダイレクトな表現に変わったと思います。僕自身はいい変化だと思ってますね。
ホリエ 若い頃は何から何まで暗喩にしてたところがあって。ストレートにメッセージを伝えることは照れるし、カッコいいと思ってなかったんです。「これは何を言いたいんだろう?」って考えるのが楽しいとも思ってたし、聴く人によって解釈が違うのも作品の1つの魅力につながるのかなって。ただ、単純に伝わりやすい言葉や表現方法も、技として取り入れなきゃなっていうのはいつからか意識し始めていたことなんです。例えばもう10年前の曲になるんですけど、「CLARITY」って曲は当時の僕からしたら赤裸々に思ったことを書いた曲だったりして。「眼に見える世界なんて嘘だらけさ」ってフレーズを繰り返し歌うなんて、もう少し前の自分だったら考えられないことだったと思います。
──2015年に「NO ~命の跡に咲いた花~」というシングルをリリースしたときは驚きました。ファンタジックな世界観の歌詞を書いてきたホリエさんが正面切って、戦争をテーマに「NO」というメッセージを発したわけですから。
ホリエ 終戦70年のタイミングだからっていうのはありますけど、確かに僕らが戦争をテーマに平和について歌うのを珍しいって思う人は多かったみたいですね。
ナカヤマ ただ僕ら長崎人は物心付いたときからずっとそういう教育を受けてきたわけですから、この曲ができたのは自然な流れだったと思います。「戦争反対」って思いは、誰しもが思っていることでもあるし。
ホリエ 「NO ~命の跡に咲いた花~」はテーマ付けこそリアリティのあるものですけど、書いた歌詞はそこまで具体的じゃないんですよね。本当は歌詞の中に「戦争」って言葉とかを置いてみようと思ってたんですけど、いつものように風景の描写とかから気持ちを想起させることができるんじゃないかって思った曲でもあるんです。こういう強いメッセージ性をテーマに掲げたことはそれまでなかったから、1つの転機だったのは確かですね。
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「Melodic Storm」より明るい新曲
- ストレイテナー
「The Future Is Now / タイムリープ」 - 2018年4月11日発売 / Virgin Music
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[CD]
1080円 / TYCT-30073
- 収録曲
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- The Future Is Now
- タイムリープ
- CLARITY(DECADE ELECTRO MIX)
- The Future Is Now -instrumental-
- タイムリープ -instrumental-
- CLARITY(DECADE ELECTRO MIX) -instrumental-
ストレイテナー「Future Dance TOUR」
- 2018年6月12日(火)東京都 Zepp DiverCity TOKYO
- 2018年6月14日(木)愛知県 DIAMOND HALL
- 2018年6月15日(金)岡山県 CRAZYMAMA KINGDOM
- 2018年6月17日(日)新潟県 NIIGATA LOTS
- 2018年6月23日(土)福岡県 DRUM LOGOS
- 2018年6月24日(日)大阪府 なんばHatch
- 2018年7月7日(土)北海道 札幌PENNY LANE24
- 2018年7月14日(土)宮城県 Rensa
- ストレイテナー
- 1998年にホリエアツシ(Vo, G, Piano)とナカヤマシンペイ(Dr)の2人で結成。2003年のメジャーデビューのタイミングで日向秀和(B)が加入。さらに2008年には元ART-SCHOOLの大山純(G)が加わり、4人編成に。2009年2月には4人編成となってから初めてのフルアルバム「Nexus」を発表し、同年5月にアルバムを携えてのツアーファイナルとして初の日本武道館公演を開催した。ホリエはソロプロジェクト・entとして、日向はNothing's Carved In Stone、EOR、killing Boyのバンドメンバーとしても活動するなど、各メンバーがさまざまなバンドやプロジェクトで活躍している。2016年5月にアルバム「COLD DISC」を発表。同年6月より計26カ所の会場を回る全国ツアー「Step Into My World TOUR」を開催し、ツアーのライブ映像を収めたライブBlu-ray / DVDを2017年3月にリリースした。バンド結成20周年のアニバーサリーイヤーとなる2018年には4月にニューシングル「The Future Is Now / タイムリープ」を、5月にニューアルバム(タイトル未定)を発表する。
2018年6月13日更新