音楽ナタリー PowerPush - ストレイテナー ホリエアツシ×岡田将生

歌い手と役者、雪の町での邂逅

知り合いかよ!

──そうして今回、お仕事の場でご一緒することになりました。この話が決まったときの心境っていかがでした?

ホリエ 僕は去年の暮れに連絡を受けまして。スタッフにいきなり「タイアップの話がある」って言われたんですよ。僕らタイアップってめったにないんで(笑)、「マジっすか?」「なんだなんだ!?」なんてざわついてたら、「鈴井貴之さんが監督のドラマです」って。「なんだよ、知り合いかよ!」って思いましたね。

岡田 あはははは(笑)。

左から岡田将生、ホリエアツシ。

ホリエ そうしたら続けて「主演は岡田将生くんです」って言われて「あ、また知り合いだ!」って(笑)。でもそんな所も僕たちらしいっていうか。バンドのことを理解してくれている人たちが作る作品に携われる機会だと思ったんで、二つ返事で「やります!」って言って。めっちゃうれしかったですね。

岡田 僕もこのお話を聞いたとき、本当にうれしかったです。自分が好きなバンドが、自分がやらせてもらうドラマのオープニングテーマを歌ってくれるなんて。ドラマの撮影中ってテーマ曲を歌ってくださるアーティストさんの曲を聴いているので、今回の撮影の最中はテナーをずっと聴いてました。こんなに幸せなことはないですよね。

──好きなバンドのディスコグラフィに自分が関わった作品が載るって、どういった感覚ですか?

岡田 もう自慢しまくりですよ! それこそ、ホリエさんと僕の共通の知り合いの落合モトキくんとかに「ドラマやるんだけど、テーマ曲テナーだぜ? うらやましいだろ」とか言って(笑)。

ホリエ あはは(笑)。どんな反応だった?

岡田 「マジで!?」って言ってました(笑)。

バンドでやれたのがうれしい

──先ほど少しお話にもありましたけど、ホリエさんはもともと鈴井さんと交流があったんですよね。

ホリエアツシ

ホリエ そうですね。僕、以前「水曜どうでしょう」にすごく助けられたっていうか……自分が落ち込んだときにこの番組を観たら、鈴井さんや大泉(洋)さんがものすごくくだらないことをすごい大変そうに、けどがんばってやってる姿がツボに入って、なんかもう感動しちゃって。それ以来ずっと「水曜どうでしょう」が大好きなんですけど、ある日どうでしょうファンのミュージシャンの先輩方が鈴井さんを誘って飲むっていうときに「ホリエも好きだったよな」って僕を誘ってくれたんですね。それがきっかけで鈴井さんと知り合いました。で、その初対面のときにテナーのCDを渡したら鈴井さんがその音源を聴いてくださったみたいで、2010年に僕のソロプロジェクトのentのほうで鈴井さんのOOPARTSっていう劇団の舞台のメインテーマを作らせてもらったんです。それ以降もコンスタントに関わらせてもらってますね。

──岡田さんは、鈴井さんとのお仕事は今回が初めてですよね。鈴井さんの印象はいかがでしたか?

鈴井貴之

岡田 やっぱり僕も「水曜どうでしょう」の「ミスター」のイメージがあったんですけど、初めてお会いしたときにはそのイメージとは違う、監督としての顔をされていました。このドラマにかける強い思いみたいなものを感じたので「鈴井さんについていけば大丈夫だ」と思いましたね。

──ホリエさんは以前ソロのentとして鈴井さんとタッグを組まれて、今回はストレイテナーとして一緒にお仕事をしたわけですが、ソロのときとは異なる思いがありましたか?

ホリエ バンドでやれたっていうのがやっぱりうれしかったですよね。もともと鈴井さんはバンドの音を気に入ってくれていたから。僕自身もホームグラウンドで作れるなっていう感覚でした。

雪景色をイメージして

──オファーを受けてドラマのコンセプトに沿った楽曲を作る作業って、普段の制作とは違った取り組み方になるものですか?

ホリエ そうですね。テーマが設けられているっていうのはモチベーションが全然違います。僕、普段自分の曲を作るときってファンのことをあんまり考えてなくて……(笑)、自分が納得したいもの、自分の好きなものを作るんですよ。そのときって、日々聴いてる音楽だったり何かしらを糧にしてはいるにせよ、ゼロから生み出す感覚なんですね。だけどあらかじめテーマがあると、その作品のためにっていう気持ちがあって、最初から5割くらい作品ができてる感覚。そこが面白いなって思います。特に今回は、自分自身が好きなものを相手がリクエストしてくれたんで、作りやすかったですね。

──鈴井さんとの関係性も関わっているんですね。

「不便な便利屋」のワンシーン。 ©「不便な便利屋」製作委員会

ホリエ そうですね。やっぱり自分たちの音楽を聴いてくれているっていうのが、何よりもありがたいですね。

──ドラマの舞台は「北海道の名もなき町」とされていますが、実際のロケは鈴井さんの故郷である道内の赤平市で行われました。ホリエさんは鈴井さんと一緒に赤平へ行かれたことがあるんですよね?

ホリエ もう2年以上前ですけど、赤平にある鈴井さんのアトリエに行ったんですよ。「RISING SUN ROCK FESTIVAL」で北海道に行ったときに「もし暇があるんだったら、うちのアトリエに1泊していかない?」って鈴井さんに言われて。将生くん、ドラマの撮影のときはアトリエに寝泊りしてたの?

岡田 いや、違いますね。でも僕も初日に行かせていただきました。

ホリエ 敷地内にはツリーハウスもあったりして。鈴井さんはそのアトリエにアーティストとかを招いていて、鈴井さんご本人がいなくてもぷらっと来て創作活動ができるようになってるみたいなんです。僕が行ったのは真夏だったんですごい気持ちよかったですね。ただ蛾がたくさんいたんで、夕涼みに外に出たら蛾が怖かった(笑)。

岡田 あはははは(笑)。

ホリエ 冬にも行ってみたいなと思ってたんですけど、冬は冬で大変そうだね。

岡田将生

岡田 大変でした。寒いですよ。僕は年明けから2カ月間赤平でロケをしてたんですけど、毎日景色が違うというか、雪と天候によって景色の見え方が変わるので「素敵だなあ」と思ってました。あと、住んでる方々がとにかく明るいんですよ。本当にドラマで描かれてるような感じで、毎日仕事したあとにみんなでお酒を飲んで明日を迎える、みたいな。素敵な街でしたね。

ホリエ 何か作業したりしてると街の人が手伝いに来てくれたりするんでしょ?

岡田 そうなんです。

ホリエ 今回の曲は自分が見た夏の景色に雪がどういう感じに積もるのかをイメージしたり、鈴井さんのFacebookに雪景色の写真が上がってたりしてたので、それを見て「ほうほう」と考えながら作りました。

──鈴井さんとはどのようにコンセプトを共有したんですか?

ホリエ 正月明けに会って具体的なお話をしまして。1話1話ちょっとした事件が起きてドタバタ劇があるコメディドラマなんだけど、将生くんが演じてる主人公の竹山くんがどういうきっかけでその場所にやって来て、結果何を感じてどうなっていくのかっていうのを前もって……聞いちゃったんですよ(笑)。

岡田 (笑)。台本は読みました?

ホリエ 台本ももらったんですけど、あんまりストーリーを細かく知りたくないっていうか……楽しみにしてたんで(笑)、第1話だけがっつり読んで、登場人物がそれぞれどういう役割を持っているのかっていうところは把握しました。

ストレイテナーニューシングル「The Place Has No Name」 / 2015年4月22日発売 / UNIVERSAL MUSIC
ストレイテナーニューシングル「The Place Has No Name」
初回限定盤 [CD+DVD] / 2052円 / TYCT-39030
通常盤 [CD] / 1080円 / TYCT-30041
CD収録曲
  1. The Place Has No Name
  2. 覚星
  3. The Place Has No Name -instrumental-
  4. 覚星 -instrumental-
初回限定盤DVD収録内容

"Swimming City Flying Circus TOUR -2014.11.28 at SHIBUYA CLUB QUATTRO-"

  1. The Novemberist
  2. 泳ぐ鳥
  3. BLACK DYED
  4. Super Magical Illusion
  5. クラムボン・インザエアー
  6. Wonderfornia
  7. You and I
  8. 彩雲
  9. The World Record
  10. 瞬きをしない猫
テレビ東京系 ドラマ24「不便な便利屋」

「不便な便利屋」

放送:毎週金曜日深夜0:12~0:52
※テレビ大阪は毎週月曜日夜11:58~深夜0:40

脚本・監督:鈴井貴之

出演:岡田将生 / 鈴木浩介 / 森山栄治 / トリンドル玲奈 / 森崎博之(TEAM NACS) / さくまみお / 田中要次 / 井之上隆志 / 遠藤憲一 / and more

製作著作:「不便な便利屋」製作委員会

ストーリー

真っ白な雪に閉ざされた北海道の名もなき田舎町の便利屋には、おせっかいを絵に描いたような松井(鈴木浩介)と、離婚歴3回の梅本(遠藤憲一)、そして若き脚本家の竹山(岡田将生)がいる。竹山は富良野へ行こうとしていたが、吹雪の夜に乗車していたバスがこの町で立ち往生。空腹を満たすために立ち寄った居酒屋で大いなる勘違いに巻き込まれ、酔って財布も携帯も失ってしまい……。仕方なくこの場所に滞在することになったのだ。

ストレイテナー

ストレイテナー

1998年にホリエアツシ(Vo, G, Key)とナカヤマシンペイ(Dr)の2人で結成。2003年のメジャーデビューのタイミングで日向秀和(B)が加入。さらに2008年には元ART-SCHOOLの大山純(G)が加わり、4人編成に。2009年2月には4人編成となってから初めてのフルアルバム「Nexus」を発表し、同年5月にアルバムを携えてのツアーファイナルとして初の日本武道館公演を開催した。ホリエはソロプロジェクト・entとして、日向はNothing's Carved in Stone、EOR、killing Boyのバンドメンバーとしても活躍。またナカヤマと大山は2011年にanother sunnydayを結成している。2014年には約3年2カ月ぶりのニューアルバム「Behind The Scene」を発表。2015年4月にはテレビ東京系ドラマ「不便な便利屋」のオープニングテーマを収録したニューシングル「The Place Has No Name」をリリースした。

岡田将生(オカダマサキ )

岡田将生

1989年8月15日生まれ、東京都出身の俳優。2006年、CMでデビュー。2009年には「ホノカアボーイ」で映画初主演を果たす。近作は映画では「オー!ファーザー」「想いのこし」「映画 ST 赤と白の捜査ファイル」、ドラマではフジテレビ系「リーガルハイ」、日本テレビ系「ST 赤と白の捜査ファイル」など。2015年4月スタートのテレビ東京系「不便な便利屋」で主演を務める。また6月27日に主演映画「ストレイヤーズ・クロニクル」が公開予定。

衣装(岡田将生):シューズ6万2000円(パラブーツ、価格は税別)、ほかスタイリスト私物
読者問い合わせ先:03-5766-6688(パラブーツ青山店)