ナタリー PowerPush - ステレオポニー×かりゆし58
沖縄出身2バンドがコラボ 新曲で“人生”を歌う
歌えなくなった自分を想像するのが怖い
──今、前川さんが言ったことって、今回のシングルの内容にもタイトルにもつながってますね。
前川 ちょうど去年の年末から「バンドどうする?」とか、「それぞれの人生に何を持って帰る?」っていう話をしてて。で、かりゆしは今年5周年で。そこにAIMIちゃんたちからこの話をもらって、「最近こんなこと考えてるんだ」っていうのを一緒に歌えたから、ホントに必然だと信じて歌いましたね。
──前川さんの中に浮かんでいたものはどんな情景だったんですか。
前川 なんでしょうね……例えばタイトルを「たとえば唄えなくなったら」にしたんですけど、それを聞いたときにAIMIちゃんは「もしそうなった場面の自分を想像するのが怖い」というふうに言ってて。「ああ、そうか。そうもとれるんか」と。この歌詞って、全部疑問形でひとつも答えを言ってない歌なんですけど、聴く人によって印象はバラバラになるし、俺が浮かべた情景もその日によって変わってたりするし、実はこれと決まった描写がないんですね。
──タイトルは後から決めたんですか?
前川 はい、飲みながら決めました(笑)。
──その割に重いテーマですよね。
AIMI はい。ただ、この曲に対しては「こういう曲だから、こういう人に聴いてほしい」とかじゃなく、それぞれの人が聴いたり、歌ったりしたときに何か感じられるものがあったらそれでいいんじゃないかと思って。それを自分に向けても、歌いたいと思ったんですね。
──聴く人によって「何ができなくなるか?」を想像できるし。
前川 最近、BEGINと一緒にライブをやって、その打ち上げで栄昇さんが「沖縄は毎年台風が来る。で、おじい、おばあから習ったことは、台風はいらないものばかりを流していく、余計なものが流れていくらしいよ」って話をしてて。でも、なくなった後に残っているものが大事なもんかもわからん、っていう考え方もあるし。人って自分らしさをどうしても人と比べて、「座標軸の右から何番目で、下から何番目」とか、位置を測ってしまいますよね。それはちょっと寂しいなあと思うんで、そうならんかったらいいけどなあ、という気持ちも込めて歌いました。
出会いが一番の収穫
──今回のコラボシングルを作ってみて、何が一番大きな収穫だったと思いますか?
前川 もう、単純に出会いですね。今まで聞いたことのない考えや感覚、それはAIMIちゃんからも、SHIHOからも、NOHANAちゃんからも見えたし。初めて会ったときよりも、今のほうが会うのが楽しみになってますからね。
AIMI ほぅー!
新屋 僕はレコーディングの最後に行って、ソロ弾いただけですけど(笑)、やっぱり出会いですね。これからまた何かいろんなことをやれる機会をもらうのも楽しみになったし。
AIMI 私は「この人に出会えてよかった」って、久しぶりに思いました。それは好きなアーティストさんだからとかじゃなくて、自分とは違う考えをたくさん持ってる人だという意味で、だからこそ、自分の中でまたいっぱい考えることもできたし。そういう機会はこの出会いのおかげだと思うし、それって私個人だけじゃなくて、ステレオポニーのものになってると思うので。
──SHIHOさんは?
SHIHO 「これが得られた」って言葉にするのは難しいんですけど、かりゆし58っていうアーティストとかかわっていくにつれて、自分もバンドもいろんな刺激をもらえてるんです。深く関わればかかわるほど、もっともっといろんなものを吸収できるんじゃないかなと思うんで、これからもよろしくお願いします(笑)。
──では、NOHANAさんは?
NOHANA 本当に楽しかったし、うれしかったっていう思いが強くて。音楽的にも今までやったことがないようなことがやれたので、いい勉強になったなと思いますね。
──いつかライブでも、共演しているところを観たいですね。
前川 そうですね、ぜひやりたいです!
CD収録曲
- たとえば唄えなくなったら
- SHOOTING STAR
- たとえば唄えなくなったら -AIMI duet Ver-
- たとえば唄えなくなったら -前川真悟 duet Ver-
- たとえば唄えなくなったら -Instrumental-
ステレオポニー
沖縄県で結成された、AIMI(Vo, G)、NOHANA(B)、SHIHO(Dr)の3人からなる女性ロックバンド。2008年、10代限定ロックフェスティバル「閃光ライオット」の福岡地区予選に出演し、ハイクオリティなサウンドで注目を集める。これがきっかけとなり、同年11月にシングル「ヒトヒラのハナビラ」でメジャーデビュー。続く2ndシングル「泪のムコウ」はアニメ「機動戦士ガンダム00(ダブルオー) -2nd Season-」のオープニングテーマに起用されたこともあり、オリコンウィークリーチャート2位にランクインするスマッシュヒットとなった。2009年3月にはアメリカで行われた音楽見本市「SXSW」に出演し、初の海外ライブを敢行。同年9月には初のフルアルバム「ハイド.ランジアが咲いている」をリリースした。2011年に入ってからはこれまで以上に精力的なライブを展開しており、10月には東名阪ワンマンツアー「秋の夜長はLIVEで乗り切れ ~@STEREOPONY-LOVERS.COM」を行う。
かりゆし58(かりゆしごじゅうはち)
2005年に前川真悟(Vo, B)、新屋行裕(G)、中村洋貴(Dr)により結成。バンド名は沖縄の方言で「めでたい / 縁起がいい」の意味を持つ「かりゆし」と、沖縄のメインストリート国道58号から。2006年2月にミニアルバム「恋人よ」をリリース。続くシングル「アンマー」がロングヒットを記録し、同年末の第39回日本有線大賞新人賞を受賞する。2008年には新メンバー宮平直樹(G)が加入し、現在は4人編成で活動中。2009年2月リリースのシングル「さよなら」が松山ケンイチ主演ドラマ「銭ゲバ」主題歌に抜擢され大きな話題に。2011年9月からはベストアルバム「かりゆし58ベスト」を携えて初の全国ホールツアーも実施。沖縄で生まれ育った彼らならではの"島唄"を全国に向けて歌い続けている。