ナタリー PowerPush - ステレオポニー×かりゆし58
沖縄出身2バンドがコラボ 新曲で“人生”を歌う
平成生まれの子としゃべるのは新鮮
──ところでかりゆしの皆さんには、沖縄の先輩・後輩といえる間柄のバンドはいるんですか?
前川 1人ぐらいか? (比嘉)栄昇さんとか(島袋)優さん(BEGIN)はおっさんやもんな?(笑)
──多くのバンドは地元でインディーズ活動して、それから全国に行くというパターンだと思うんですけど。
前川 の、ほうが多いですね。俺たちの場合は20歳ぐらいからバラバラの仕事をしてて、23、4歳ぐらいで再び集まって、「今の仕事一生やるのしんどいなあ」みたいな愚痴から始まって。学生の頃、後夜祭でバンドやったことがあったから「あんなことやれたら楽しいかもね」ってやり始めたら、東京の会社がデモテープ拾ってくれて。4回目のライブぐらいでもうデビューが決まってた。「へたくそ!」って言われながらここまできたんで、本当に適当だったと思いますよ。
──だからこそたくましいのかもしれませんね。ステレオポニーの皆さんは、かりゆし58をどんな存在として見ていましたか?
SHIHO 同じ沖縄の、すごい尊敬するアーティストさんでしたね。自分らの時代に知らない人はいない、みたいな。
AIMI どこの県でもそうだと思うんですけど、沖縄ならではのすごく流行る音楽がけっこうあって。その中の1ジャンルじゃないですけど、そういうのを作ったアーティストさんというか。BEGINさんもそうですし。で、東京に来てみたら、こっちでも親しまれるようなアーティストさんになっていて、「すごいなあ」と思いましたね。沖縄を代表する……代表してもいいんじゃないですかね。
前川 ま、お前が決めることじゃないけどな。
一同 (笑)。
AIMI AIMIが決めるさ(笑)。
──ははは。もう、こういう言いたい放題な、仲のいい感じになってるんですね(笑)。
前川 はい(笑)。あんまりなかったですからね、平成生まれの子としゃべるの。新鮮です。
人生のひとつのスパイスとしてバンドがある
──そんな沖縄の星も、長く活動してきて、先日やっと東京と大阪で野音ワンマンライブをやられたぐらいで。
前川 楽しかった……しかないな(笑)。のんびりやらしてもらって。そこにステレオポニーも観に来てくれて。
AIMI 「新しいなあ」と思いました。今までこういうバンドは観たことがないです。
前川 宴会芸だよ(笑)。
AIMI 楽しかったのはもちろんなんですけど、お客さんもオリオンビールとかを飲みながら、ゆったり聴いてて。自分たちはライブハウスで、お客さんと「一緒にやろうよ!」っていうライブなので、(かりゆしの)「好きにやったらいいさあ」って、まんまそういうふうに言ってたんですけど、無理せずそこにいて、自分が思うままに聴けるライブってあまりないんじゃないかなあと思いましたね。それが「新しいな」と。かりゆしさんの場合は、「自分はこう思ってるよ」っていうのをはっきり作ってて、ステージと客席の高さは現実には違うんですけど、その高さが見えなかったというか。みんな一緒の目線な感じがして、それっていいなあと思ったんですよ。
前川 そう言ってくれる人が少なくともここに3人いる(笑)。
──ははは。
前川 レーベルメイトの人とかは「紅白に出たい」とか「いつか武道館でやりたい」っていう目標を掲げてやってるとか聞くけど、紅白で何を歌いたいの? と。例えば、家族でのんびり正月迎えるときに、紅白からどんな歌が聴こえていたいのか、それを歌ったらいいんじゃない? みたいな話をするんですよ。ライブももちろん、あれだけ大きい音出して、照明つけてやったら高揚感はあるけど、終われば翌日、みんなバラバラの現実に向き合いますよね。その翌日にみんなが持って帰れるもの、余韻が残るようなことをやれたらいいなあ。で、それにはどんな音楽やパフォーマンスがいいんだろうね? って考えていったんです。
──現実に戻りはするんだけど、というところですね。
前川 そこを怖がってしまうと、依存というか「音楽がないと生きていけない」とか「かりゆしに一生ついていきます」ってなっちゃう。そういう言葉はちょっと寂しいじゃないですか。みんなの人生のオマケに音楽があって、俺たちの人生のひとつのスパイスとしてかりゆし58っていうバンドがある。お前(新屋)も俺も別の家に帰っていくしね。
新屋 うん。
CD収録曲
- たとえば唄えなくなったら
- SHOOTING STAR
- たとえば唄えなくなったら -AIMI duet Ver-
- たとえば唄えなくなったら -前川真悟 duet Ver-
- たとえば唄えなくなったら -Instrumental-
ステレオポニー
沖縄県で結成された、AIMI(Vo, G)、NOHANA(B)、SHIHO(Dr)の3人からなる女性ロックバンド。2008年、10代限定ロックフェスティバル「閃光ライオット」の福岡地区予選に出演し、ハイクオリティなサウンドで注目を集める。これがきっかけとなり、同年11月にシングル「ヒトヒラのハナビラ」でメジャーデビュー。続く2ndシングル「泪のムコウ」はアニメ「機動戦士ガンダム00(ダブルオー) -2nd Season-」のオープニングテーマに起用されたこともあり、オリコンウィークリーチャート2位にランクインするスマッシュヒットとなった。2009年3月にはアメリカで行われた音楽見本市「SXSW」に出演し、初の海外ライブを敢行。同年9月には初のフルアルバム「ハイド.ランジアが咲いている」をリリースした。2011年に入ってからはこれまで以上に精力的なライブを展開しており、10月には東名阪ワンマンツアー「秋の夜長はLIVEで乗り切れ ~@STEREOPONY-LOVERS.COM」を行う。
かりゆし58(かりゆしごじゅうはち)
2005年に前川真悟(Vo, B)、新屋行裕(G)、中村洋貴(Dr)により結成。バンド名は沖縄の方言で「めでたい / 縁起がいい」の意味を持つ「かりゆし」と、沖縄のメインストリート国道58号から。2006年2月にミニアルバム「恋人よ」をリリース。続くシングル「アンマー」がロングヒットを記録し、同年末の第39回日本有線大賞新人賞を受賞する。2008年には新メンバー宮平直樹(G)が加入し、現在は4人編成で活動中。2009年2月リリースのシングル「さよなら」が松山ケンイチ主演ドラマ「銭ゲバ」主題歌に抜擢され大きな話題に。2011年9月からはベストアルバム「かりゆし58ベスト」を携えて初の全国ホールツアーも実施。沖縄で生まれ育った彼らならではの"島唄"を全国に向けて歌い続けている。