音楽ナタリー PowerPush - ★STAR GUiTAR
「ダンスミュージック×ピアノ」という実験
★STAR GUiTAR
H ZETT M
MELTEN(JABBERLOOP、fox capture plan)
3人のピアノ本質論
──今回はテクノという幹に枝葉の存在としてピアノがありました。ではピアノというのは皆さんにとってどういうものと捉えているのでしょうか。
★STAR 単純に一番身近な楽器ですし、今回やってすごく思ったのが主役と脇役が同時にできるのがすごいなって。ガッて前に出たりわざと引っ込めたりの抑揚がつけやすくて、どんな形にも変われるものなんだなって思います。
MELTEN 一番自分がハッキリ出る楽器だなと思いますね。★STAR GUiTARくんが言ったとおり主役にも脇役にもなれるよさもあるし、そうですね、自分を表現できる一番のツールかなと思っています。幅広く、ダイレクトに。
──なるほど。ではH ZETT Mさんはいかがですか?
H ZETT M ピアノとは何か……。
MELTEN 難しいですよね(笑)。
H ZETT M (笑)。まあピアノにかぎらず音楽自体がそうなんですけど、世界を広げるものといいますかね。それを通して「ああ世界ってこんないい世界があるんだ」っていうのを知れるって思いますね。で、聴いた人がいい気持ちになるというか、「いい日だな」みたいに感じられるようになればいいんじゃないかなって思いますね。
──アーティストを迎えずに★STAR GUiTARさんが1人で作ったピアノ曲はどういった方向性で生まれましたか?
★STAR 僕がやったピアノの曲はあえて弾かないで作るのがいいんじゃないかって思ったんです。ペンツールだけで作ってみるとか、それをわざと人っぽく聞かせるためにあえてひたすらテンポをオートメーションで変えるとか。違う意味で同じ場所に立つっていうのも面白いかと思ってやりました。
──作り方も多岐にわたって、ピアノとの融合は今作で十分に果たせたと言えるのではないでしょうか?
★STAR 果たせたと思うし、一方でもっとやりたいことが増えたなって(笑)。本当にピアノは面白いです。
トレンドをただ受け入れるのではなく、噛み砕いてアウトプット
──先ほど「ピアノでEDM」っていう言葉が出ました。これはどういうイメージだったのでしょうか? EDMといえば歌モノ的だったり、メロディアスでドラマチックな曲展開という特徴がありますが。
★STAR 今回でいうEDMは、ハデさの面ではなくていわゆるメインテーマ、サビの一番派手なところでリズムがなくなるっていう構成の特徴を指していて。盛り上げて盛り上げて……そしていきなりリズムだけに移る展開が多いんですけど、そのメインテーマ部分を落とすっていうところをEDMから抜き出したかったんです。
MELTEN ああ、確かに感じるかも。ドラムとか後ろで鳴ってるシンセパッドの感じとか。
★STAR あるもの、完成している何かに対して違うことをするのが僕は好きで。このアルバムでも「Butterfly Effect」っていう曲はピアノだけでダブステップをやるっていうテーマがあったりするんです。
MELTEN へー。
★STAR そうやって制約を課した上で作るのが好きなんです。まあひねくれてるんですけど(笑)。
──EDMをはじめダンスミュージックは流行に左右されていく傾向が強いものだと思うのですが、★STAR GUiTARさんはトレンドをどう意識していますか?
★STAR 単純に好きだからいろいろと聴くんですけど、そのまま受け入れてアウトプットするのではない。今回で言えばピアノを使ったみたいに、まずどう自分なりに噛み砕くかってところから始めますね。それによってメインストリームからは外れてしまうとしても、提案する側でいたいかなって。★STAR GUiTARはそういう感じでやっています。
──今作はピアノを使って別の遊びを提示した?
★STAR そうですね。ピアノが好きな方に対しても、ダンスミュージックを聴いてる方に対してもそう。こういう面白い音楽があるよって提案ですね。
“ピアノアルバム”の次は?
──今後はライブでの共演にも期待したいところです。
★STAR 僕も期待したいです(笑)。
MELTEN やってみたいですね。
──おそらく曲を作るのとはまた別の感じになりますもんね。
MELTEN バンドの曲とかでもずっと何回もやっていると飽きてきて若干マイナーチェンジとかするんですよ。★STAR GUiTARの曲でもそういうことができたら面白いなーと思います。
──楽曲は当初弾いたものから最終的に★STAR GUiTARさんのアレンジによって生まれ変わりました。もしライブがあればそれをさらに演奏でアレンジしていくことになるんでしょうね。
MELTEN しかもそれを実際にお客さんの前でアウトプットするんですから面白いですよね。最初全然想像していなかったものを自分が弾くっていうのは不思議です。
H ZETT M 僕はもう可能な限り★STAR GUiTARさんの編集の通りに弾いてやりたいですね。
全員 (笑)。
H ZETT M それかそのスピリットを自分なりに表現しますね。編集し直すというか。編集プレイですよ。
★STAR それ、客席で観たいです(笑)。僕はH ZETT Mさんが弾いてるあのソロとかが何回も弾いてここだってなるのか、パッとここだろっていうのが最初からあるのかっていうのが気になっていて。
H ZETT M パッと答えが見えてるわけではないんですけど、まずはとりあえずやってみます。
MELTEN そこで作ったものが固まっていく感じですか。ソロとかを聴いてもいつも思うんですけど。
H ZETT M そうですね。なんか時間が正解にしてくれるみたいなのがあるんですよね。パッと弾いてこれだっていう。そのほうがやってて面白いかなって思いますしね。
MELTEN カッコいい……。
H ZETT M (笑)。僕が今回思ったのは、まずはダンスミュージック最高っていうこと。それと「行き当たりばったり」って言葉が今日出てきたんですけど、そういう動物的な感覚というか、目の前のものをシャッとつかんでいく様子を見てみたいなスタイルが★STAR GUiTARさんの面白いところかなって。
★STAR はい。自分を信じてがんばります!
- ★STAR GUiTAR ニューアルバム「Schrödinger's Scale」/ 2014年9月10日発売 / CLUSTER SOUNDS / CSMC-022
- [CD] 2160円 / CSMC-022
-
収録曲
- echoes feat. H ZETT M
- Rise in revolt feat. MELTEN (JABBERLOOP, fox capture plan)
- Butterfly Effect feat. Hidetake Takayama -Schrodinger's Edit-
- Calling feat. Hiroko Sebu
- Special Ordinary
- elements feat. Shoji Kawadai (16-BIT Generator)
- Solitude Gravity feat. Hidetake Takayama
- Nothing Gonna Change My World feat. Schroeder-Headz -Schrodinger's Edit-
- Will feat. Chieko Kikuchi (KAGERO) -Schrodinger's Edit-
- fib
- Live feat. Hidetake Takayama -Schrodinger's Edit-
- back to the basics.
-
★STAR GUiTAR(スターギター)
プロデューサー / アレンジャーのSiZKによるソロプロジェクト。2010年8月にデジタルシングル「Brain Function feat. Azumi from yolica」でデビューし、2011年1月には1stアルバム「Carbon Copy」でiTunes Storeダンスチャート1位を記録。テクノを基軸にハウス、エレクトロ、ドラムンベースやエレクトロニカなどの多彩なダンスミュージックを昇華したサウンドを展開する。そして2014年9月10日に「ダンスミュージック×ピアノ」をテーマにしたコンセプトアルバム「Schrödinger's Scale」をリリース。H ZETT M、MELTEN(JABBER LOOP、fox capture plan)、Schroeder-Headzなど幅広いキーボーディストとの共作でアルバムを完成させた。
-
H ZETT M(エイチゼットエム)
生年月日不詳、青鼻が特徴のピアノマジシャン。2004、05年にH是都Mの名前で第1期東京事変に参加。2007年、アルバム 「5+2=11」(ゴッタニ)でソロデビューを果たし、以来精力的にオリジナルアルバムやアニメソングのカバー集などのコンセプトアルバムをリリースする。2011年には台湾でワンマンライブを行うなど、その高い技巧とオリジナリティあふれるパフォーマンスによって国内外で大きな注目を集める。2013年にはドラムにH ZETT KOU、ウッドベースにH ZETT NIREを迎えたH ZETTRIO名義でアルバム「★★★」(三ツ星)を発表。
-
MELTEN(メルテン)
1983年生まれ、本名は岸本亮。2005年3月にクラブジャズバンドJABBERLOOPに加入し、躍動感のある鍵盤さばきでオーディエンスを魅了する。2011年にはカワイヒデヒロ(B / Immigrant's Bossa Band)、井上司(Dr / nhhmbase)とともにfox capture planを結成。“現代版ジャズロック”をコンセプトとした情熱的かつクールで新感覚なサウンドを展開する。