音楽ナタリー PowerPush - ★STAR GUiTAR
「ダンスミュージック×ピアノ」という実験
★STAR GUiTAR
H ZETT M
MELTEN(JABBERLOOP、fox capture plan)
★STAR GUiTARがニューアルバム「Schrödinger's Scale」(シュレーディンガーズ・スケール)をリリースした。本作は「ダンスミュージック×ピアノ」をテーマにしたもので、収録曲すべてがピアノをフィーチャーしたインストナンバーとなっている。
今回ナタリーでは★STAR GUiTARのほか、アルバムに参加したH ZETT MとMELTEN(JABBERLOOP、fox capture plan)を招き、3者による鼎談を実施。楽曲制作のプロセスや★STAR GUiTARの“実験結果”を振り返ってもらった。
取材・文 / 鵜飼亮次 撮影 / 佐藤類
ピアノ曲だけにした理由
──まず★STAR GUiTARさんにお伺いしたいのですが、どんな背景から今作を“1枚まるごとピアノ”でいこうと思ったのでしょうか?
★STAR GUiTAR もともと僕は前作、前々作のアルバムでピアノをフィーチャーしたものを曲単位でやっていて。それを作りながら「ピアノってなんて面白いんだろう、どれだけ可能性があるんだろう」って考えるようになってきたんです。だったら1枚それだけをテーマにして作ってみたいなと思ったのが始まりでした。アルバムの中で何曲かやるぐらいだったら今までと変わらないし、やるなら全部やったほうがコンセプトとして強い作品になるなって思って。
──それにしても全曲というのは相当な冒険だと思います。
★STAR そうですね。イコールインストアルバムになりますし。
──今作は12曲中9曲が誰かをフィーチャーする形で制作されていて、このアルバムだけで全7名のアーティストが参加していますね。
★STAR 僕だけで曲を作っても好みや手癖である程度予測が付いてしまうと思ったので、誰かにそうじゃないところへ引っ張っていってもらおうって考えたんです。その人の音を出してもらうことで「こう来るならこうしたい」って僕からも新しいアイデアが生まれてくるという、セッションのような感じを目指しました。人選に関しては行き当たりばったり的になっちゃうんですけど、そのときそのときで面白いと思った人と「いい曲を作りたいな」っていう考えになるので、結果的にそういう人選になっていますね。
フィーチャリングアーティストとの化学反応
──例えば今日の鼎談にいらっしゃったお2人を楽曲制作に声をかけた理由は?
★STAR MELTENくんはYouTubeでfox capture planを聴いて単純に「すげーカッコいい」って思ったところから始まっていて。僕が聴いた感じだとすごくテクノを感じる人だなあと。ジャズなのに音の使い方とかが僕の思うテクノ感と似てるなって、僕の大好きなMassive Attackだとかをカバーしていて「あれ、もしかしてこの人すごく合う人なんじゃないかな」って。しかもつながりが友達の友達くらい近かったんですよね。
MELTEN そう。★STAR GUiTARのサポートバンドのメンバーが僕と友達で。
★STAR リハ中に「最近気になるんだよねー」って話してたら「えっ? つながるんだけど」って感じで。それなら一度紹介してよと(笑)。H ZETT Mさんはもう説明するまでもなく皆さん知ってらっしゃると思うんですが……(笑)。
H ZETT M いやあ。
★STAR いい意味で予測できないハチャメチャ感がすごい好きで。「ここまできたからこういう展開」みたいなものを全部ブッ壊す人っていうイメージでした。だから僕を引っ張ってもらえるんじゃないかなって思ったんです。それが一緒にやりたいなって思った経緯ですね。
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- ★STAR GUiTAR ニューアルバム「Schrödinger's Scale」/ 2014年9月10日発売 / CLUSTER SOUNDS / CSMC-022
- [CD] 2160円 / CSMC-022
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収録曲
- echoes feat. H ZETT M
- Rise in revolt feat. MELTEN (JABBERLOOP, fox capture plan)
- Butterfly Effect feat. Hidetake Takayama -Schrodinger's Edit-
- Calling feat. Hiroko Sebu
- Special Ordinary
- elements feat. Shoji Kawadai (16-BIT Generator)
- Solitude Gravity feat. Hidetake Takayama
- Nothing Gonna Change My World feat. Schroeder-Headz -Schrodinger's Edit-
- Will feat. Chieko Kikuchi (KAGERO) -Schrodinger's Edit-
- fib
- Live feat. Hidetake Takayama -Schrodinger's Edit-
- back to the basics.
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★STAR GUiTAR(スターギター)
プロデューサー / アレンジャーのSiZKによるソロプロジェクト。2010年8月にデジタルシングル「Brain Function feat. Azumi from yolica」でデビューし、2011年1月には1stアルバム「Carbon Copy」でiTunes Storeダンスチャート1位を記録。テクノを基軸にハウス、エレクトロ、ドラムンベースやエレクトロニカなどの多彩なダンスミュージックを昇華したサウンドを展開する。そして2014年9月10日に「ダンスミュージック×ピアノ」をテーマにしたコンセプトアルバム「Schrödinger's Scale」をリリース。H ZETT M、MELTEN(JABBER LOOP、fox capture plan)、Schroeder-Headzなど幅広いキーボーディストとの共作でアルバムを完成させた。
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H ZETT M(エイチゼットエム)
生年月日不詳、青鼻が特徴のピアノマジシャン。2004、05年にH是都Mの名前で第1期東京事変に参加。2007年、アルバム 「5+2=11」(ゴッタニ)でソロデビューを果たし、以来精力的にオリジナルアルバムやアニメソングのカバー集などのコンセプトアルバムをリリースする。2011年には台湾でワンマンライブを行うなど、その高い技巧とオリジナリティあふれるパフォーマンスによって国内外で大きな注目を集める。2013年にはドラムにH ZETT KOU、ウッドベースにH ZETT NIREを迎えたH ZETTRIO名義でアルバム「★★★」(三ツ星)を発表。
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MELTEN(メルテン)
1983年生まれ、本名は岸本亮。2005年3月にクラブジャズバンドJABBERLOOPに加入し、躍動感のある鍵盤さばきでオーディエンスを魅了する。2011年にはカワイヒデヒロ(B / Immigrant's Bossa Band)、井上司(Dr / nhhmbase)とともにfox capture planを結成。“現代版ジャズロック”をコンセプトとした情熱的かつクールで新感覚なサウンドを展開する。