ナタリー PowerPush - THE STARBEMS

震災+ウルトラセブン+面白おじさん! 日高央のラウドロックバンドの作り方

2010年9月に“散開”したBEAT CRUSADERSのフロントマン、ヒダカトオルが「ヒダカトオル(BAND SET)」名義でのソロ活動を経て、漢字表記の日高央に改名。BEAT CRUSADERSのトレードマークだったお面をも脱ぎ捨てて、新バンド、THE STARBEMSを結成した。その待望のデビュー作「SAD MARATHON WITH VOMITING BLOOD」は、その日高や越川和磨(ex. 毛皮のマリーズ)、菊池篤(Fed MUSIC)ら6人から繰り出される新感覚のヘヴィロックアルバム。そのラウドなサウンドが震災以降の日常を突き抜けてゆく。

取材・文 / 小野田雄 撮影 / 佐藤類

BEAT CRUSADERS“散開”の理由はラウドロック?

──6人編成とは大所帯なバンドですよね。

日高央(Vo)

日高央(Vo) このバンドの前身となるヒダカトオル(BAND SET)名義での最初のライブは2010年大晦日の「COUNTDOWN JAPAN 10/11」だったんですけど、そのときハイスタ(Hi-STANDARD)を気取って3人編成で出演したら「歌いながら楽器弾くのは俺には無理だ!」って。ハイスタの偉大さが身に染みたんですよね(笑)。だからその後のライブではサポートを増やしていって、最終的には6人編成になっちゃったという(笑)。

──BEAT CRUSADERS“散開”後、日高さんはソロ活動やMONOBRIGHTへの加入、ヒダカトオルとフェッドミュージックでの活動に、さまざまなアーティストのプロデュースと、多岐にわたる音楽活動を行われていましたよね。

日高 BEAT CRUSADERSが“散開”する1、2年くらい前から、バンドをラウド化したかったんですよね。当時出てきた若手や後輩バンドたち、それこそお面つながりでいえばFACTだったり、今やスターバンドですけどONE OK ROCKだったり、“散開”前後に出てきたMAN WITH A MISSIONだったりが、軒並みラウド系バンドだったりして。そういう流れを目の当たりにしながら「そもそもBEAT CRUSADERSが始まった頃は自分だってTROPICAL GORILLAやBRAHMAN、SPREADだったりっていう全国各地のラウド系やパンクな人たちと対バンしてたのに、メジャーに移籍したり、メンバーチェンジを経たりしているうちに『ポップな面白おじさん』みたいな人になっちゃったなー」って、ふと思ったんですね。で、ちょうどその頃、BEAT CRUSADERSの最後のアルバム(2008年の「popdod」)でbloodthirsty butchersの吉村(秀樹)さんと1曲コラボをさせてもらって。

──「SUMMEREND」ですね。

日高 吉村さんもどちらかといえばラウド界隈の方だし、そのコラボがすごくうまくいった上に、一緒にフェスにも出演したときもどのバンドよりも音がデカかった。それが気持ちよかったし、楽しかったんですね。で「せっかく吉村さんと仲良くなって、一緒に音楽をやるようになったからには、BEAT CRUSADERSも吉村さんや、その隣にいるeastern youthやSLANGと対バンしてもおかしくない存在になっていくべきなんじゃないか」「それがバンド、ミュージシャンとして成長するっていうことなんじゃないかな?」って思ったんです。だけど、一緒にバンドをやるようになって7、8年も経つと、メンバー5人の指向もそれぞれ変わっていくし「BEAT CRUSADERSとしてラウドロックをやるのは無理があるんじゃないか?」っていう声もあったりして。結局意見がまとまらず、そのまま“散開”を選んだんです。その後はいいタイミングでMONOBRIGHTから誘われたり、ヒダカトオルとフェッドミュージックが始まったり、はたまたプロデュースも頼まれていたりもしたので「BEAT CRUSADERSで叶わなかったことはソロでいろいろ試そう。そしてメンバーやサウンドが固まったタイミングで新たなバンドとして一からやれればいいかな」と思って。それがTHE STARBEMS結成の最初の最初のきっかけですね。

震災と闘うラウドロックバンドたち

──では新バンドの構想を描きながら、その準備段階としてソロ活動を行っていた、と。

日高 まあ今のバンドは自分の想像とは違うんですけど、次のパーマネントなバンドはとびきりラウドな音楽性でありたいとは思っていましたね。だからソロ活動をやるにあたっては「弾き語りでもするんじゃないの?」と思われてはいけないし、あとバンド結成を構想する自分に対しての叱咤激励の意味も込めて「ヒダカトオル(BAND SET)」と表記することにしたんです。

──そして2011年3月にはヒダカトオル(BAND SET)での初ツアーがありましたが、東日本大震災が起きて、ツアー続行か中止かで悩まれて。最終的にはツアーを強行されましたが、そのときの経験って現在のTHE STARBEMSの活動に影響を与えていますか?

日高 そうですね。「次のバンドは闇雲にラウドなサウンドで」って考えていたんですけど、最初に作っていた曲は普通にメロコアだったんですね。それまでの自分はポップな部分を評価していただいていたので、そのポップ感を強調しながらラウドな新曲を作った結果、そういうものが生まれたものの「これじゃあ、アカンなあ」と思っていたところに震災が起こって。その震災直後に真っ先に動いていたのがBRAHMANだったり、SLANGだったりして。震災復興が進まない怒りとサウンド、それから音楽以外の部分でも復興支援に対する姿勢や活動が合致して見えたのは、やっぱりラウドなバンドたちだったんですね。MAN WITH A MISSIONにしてもふくしまインドアパークの募金や石巻へい輪プロジェクトに協力してましたし、10-FEETも「ふとん大作戦」として募金を集めて物資を送ったりしていたし。そういうバンドの支援活動を知って、ますますラウドな音を出したいと思ったんです。

ニューアルバム「SAD MARATHON WITH VOMITING BLOOD」 / 2013年6月5日発売 / DefSTAR Records
初回限定盤 [CD+DVD] / 3200円 / DFCL-2008~9
通常盤 [CD] / 2800円 / DFCL-2010
CD収録曲
  1. DESTINY
  2. The Crackin'
  3. MAXIMUM ROCK'N'ROLL
  4. WISE BLOOD
  5. ARE U SURE?
  6. INSIDE OUT
  7. No Reaction
  8. FUCKIN' IN THE AIR
  9. HIGH RISK
  10. FORGIVENESS
  11. HUMAN RIGHTS
  12. DREADRONE
  13. GOOD-BYE LOVE
初回限定盤DVD収録内容
  • THE SEARCH FOR ANIMAL CHIN~東北ライブハウス大作戦ツアー“PLACE TO PLAY 2013”
THE STARBEMS(ざ・すたーべむず)

THE STARBEMS

2010年のBEAT CRUSADERS“散開”後、日高央(Vo)が展開していたソロユニット「ヒダカトオル(BAND SET)」がその前身。ヒダカトオル(BAND SET)のサポートメンバーとして寺尾順平(B / ex. ワイルドマイルド)、後藤裕亮(G / LOCAL SOUND STYLE)、高地広明(Dr / SHENKY GUNS)、越川和磨(G / ex. 毛皮のマリーズ)、菊池篤(G / Fed MUSIC)が続々と集結し、2012年9月よりTHE STARBEMSとして活動を開始する。2013年3月、ユニコーンのトリビュートアルバム「ユニコーン・カバーズ」に提供した「I’m a loser」のカバーがTHE STARBEMS名義での初音源となり、翌4月に1stシングル「FUTURE PRIMITIVE e.p.」を4444枚限定でリリース。そして6月、1stアルバム「SAD MARATHON WITH VOMITING BLOOD」をリリースする。