ナタリー PowerPush - SWIM SWEET UNDER SHALLOW

テンションの低い2人が作る“ドメジャー”な音楽

テンションは低い……たぶん

──「Safari」のセルフライナーノーツでタナカさんが「四つ打ちなのにノリにくい」って書かれてましたけど、このアルバム全体で見てもノレる曲や盛り上がれる曲ってないですよね。

左からヨシダミドリ、タナカヒロキ。

タナカ ないっすね。

──それは意図して?

タナカ 全然意図的じゃないです。「Safari」をシングルでリリースしたときに、ネットとかでけっこう「テンションが低い」みたいなことを書かれて。

ヨシダ 「平熱」とか。

タナカ でも「Safari」は僕らの曲の中では一番テンションが高かったんです(笑)。一般的には高くなかったみたいですけど。だから別に盛り上がらないっていうのも狙ってはないです。これが普通だと思ってた。むしろほかのバンドの盛り上がってる曲とか「どうやって作るんだろう?」って不思議です。

ヨシダ そこから外れていくようなのばっかり作っちゃう。

タナカ まあ盛り上がらないって言っても、例えばライブを突っ立って観てても盛り上がってる人はいるじゃないですか。そういう感じです。静かに盛り上がってる。

──ジャケットもこれまでとは違って全然色を使ってないですよね。「カラフルじゃない」っていうのがアルバムのテーマにもなっているのかなと感じたんですけど……。

ヨシダ それはありますね。曲ができる前から「カラフルなのはやめよう」「ジャケットの色のトーンを暗い色とちょっと薄い色の少ない色で構成しよう」と決めていました。

──それはなぜですか?

ヨシダ 洗練されたものを作りたかったっていうのが大きいですね。

タナカ 色がない感じですかね。熱がない感じというか、汗かいてない感じ。

ヨシダ クールな。

タナカ カッコつけてるわけじゃないんですけどね。テンションが低いというか、低血圧な感じ。

──やっぱりテンションは低いんですね(笑)。

左からヨシダミドリ、タナカヒロキ。

タナカ テンションは低い……たぶん。言われるから、最近「低いんだな」って自覚してきました(笑)。

──ライブのときもこのテンションなんですか?

2人 このテンションです。

ヨシダ 全然ノッてない。

タナカ ライブは盛り上がらなきゃいけないとか、何かが「そうならなきゃいけない」っていうのがあんまり好きじゃないんです。みんな汗かかなきゃいけない、手を上げなきゃいけないと思ってるじゃないですか。そんなことはないと思うので。

「ドの上にミが乗ってきれいに聞こえる」は音楽にしかできない

──歌詞も、熱のない感じっていうのは意識されたんですか?

タナカ もともとメッセージがあるような感じでもないので、そこは特に。歌詞はあんまり主役にならないように、音とかメロディとかとの距離感や温度感を大切にしてますね。

ヨシダ 歌詞ばかりが主張しないような。歌詞もメロディも、どれかひとつが飛び出るとかそういうのではない気がします。

タナカ 言葉って、小説やドラマ、映画でも伝えられるじゃないですか。でも例えば「ドの上にミが乗ってきれいに聞こえる」とか「こういうリズムの上にこういう和音が乗ってきれいに聞こえる」とかって音楽でしかできない。そういうところを出したいんです。

やりたいようにやってたら関わる人が減っていった

タナカヒロキ

──レコーディングやPV制作もお2人でやられてるんですよね?

タナカ そうです。最初のアルバムを作ったときは、ドラムをサポートメンバーに叩いてもらったり、レコーディングもスタジオでエンジニアさんにやってもらったりしてたんですけど、このアルバムからは誰も関わってなくて。演奏からレコーディング、ミックス、マスタリングまで全部自分たちでやりました。

──DIYな活動をしていくバンドっていうのをコンセプトに掲げているというわけでもないんですか?

タナカ 全然違うんです。そもそも2人でやってるのも、やりたいようにやってたらだんだん関わる人が減っていっただけですし、まあインディペンデントになってるとは思うんですけど、それも結果としてなってるだけであって、別に目指してたわけじゃないんです。もし周りに音楽観が合う人がいればメンバーも違ってたかもしれないし、全部自分たちでやってるのもそれが一番やりやすかったっていうだけで。

ニューアルバム「focus」2014年5月14日発売 / 1944円 / hiraoyogi record / CARP-005
CD収録曲
  1. McKinley
  2. Safari
  3. Madras
  4. Goethe
  5. waterfall
  6. vivaldi festival
  7. dokomademo
  8. cacotopia
  9. sustain, sustainer
  10. Crawl
SWIM SWEET UNDER SHALLOW(スイムスイートアンダーシャロウ)

タナカヒロキとヨシダミドリによる2ピースバンド。浮遊感のあるギターサウンドと男女ツインボーカルを特徴とする。2011年1月に1stアルバム「elephantic」、同年11月に2ndアルバム「moslight passion」を発表。その後マイペースに活動を続け、3曲入り音源「Safari e.p.」「Madras e.p.」「Background Music e.p.」を配信リリースする。2014年4月には3曲入りのシングル「Background Music e.p.」を無料配信し、同年5月に待望の3rdアルバム「focus」を発表。