Survive Said The Prophetが1月15日にアルバム「Inside Your Head」をリリースする。
アルバムには「RED」「MUKANJYO」「Heroine」「Bridges」「Never; Saying Never」「Last Dance Lullaby」といった既発曲のリアレンジおよびリテイクバージョンを含む12曲を収録。「3 A.M.」には澤野弘之がストリングスアレンジとピアノで、新曲「Never; Saying Never」にはRei(Newspeak)がボーカルで参加している。
音楽ナタリーではメンバー全員に、今年の3月から3カ月間で47都道府県を回ったツアー「Now more than ever Tour」で得た手応えやアルバムの制作過程、そしてバンドの未来について話を聞いた。
取材・文 / 小林千絵 撮影 / Andy Ford
会場に足を運んでくれる人を大切にしたい
──Survive Said The Prophetは前作「s p a c e [ s ]」リリース後、ライブツアー「s p a c e [ s ]TOUR 2018-19」のツアーファイナルと追加公演で「Common Sense」、その後の47都道府県ツアー「Now more than ever Tour」で「Things Unsaid」「Closure」という3枚の会場限定シングルを発売しました。これはどういった思いから実施した施策だったんですか?
Yosh(Vo) 1つはライブに来てくれる人たちを大切にしたいという気持ち。もう1つは「俺らはスピードダウンしていないよ」というところを見せたいという思いです。なんなら「s p a c e [ s ]TOUR 2018-19」のツアーファイナルでは、シングルじゃなくてアルバムを出したかったくらいなんです。そのときすでにこのアルバムもコンセプトはできていて。でもさすがに各所から「いいよ」とは言われず(笑)。でもそれくらい、「やりすぎだ」と言われるくらいのことがしたかった。
──実際はシングルでしたけど、それでもすごい施策だなと思いました。事前告知などもなく「今日ライブ後、ロビーでシングルを売ります」って。ライブ会場どころか、CDショップに行かなくても新曲を聴けるこの時代に。
Yosh そんな時代だから余計にですかね。ライブハウスに行く意味を僕らから提示しないと、音楽が本当にこの世の中から消えちゃうような気がして。ライブハウスに行かなくても音楽が聴ける、もっと言えば家から出なくてもいろいろなコンテンツが楽しめる時代。そんな時代に、会場に足を運んで自分の目や耳で、その場で人が演奏している音楽を聴こうとする。そういう人を増やさないといけないし、そう思わせる音楽を増やさないといけない。そのためにまず僕らができることが、ライブ会場限定CDを出すことだったんです。
──なるほど。
Yosh 正直、このやり方でリスナーに誤解も与えてしまって、SNSで悪く言われてしまうこともあったんです。でもその誤解は、このアルバムを出すことですべて解かれることを祈っています。
気付きの多い47都道府県ツアー
──バンドにとって初の47都道府県ツアーはいかがでしたか? 3カ月で47都道府県を回りきる、日程的にかなり過酷そうなツアーでしたが。
Yosh はい、過酷でした。これまで47都道府県ツアーをやってきたライブバンドにすら「大丈夫か?」って真面目に心配されましたから(笑)。
Tatsuya(G) 「3カ月で回るの? 半年くらいかけないのか?」ってね(笑)。
Yosh この間、SiMと対バンしたんですけど、MAHさんにも「本当にやると思わなかった」「(サバプロを)見る目が変わった」って言われました。バンドマンが一番、47都道府県ツアーの大変さをわかりますからね。
Show(Dr) でも過酷だったからこそ、得たものも多くて。中でも、5人だけでやってるわけじゃないということを再確認できたことは大きかったです。うちは固定のクルーがけっこう多いんです。マネージャーはもちろん、PAや照明さんといったライブを作るクルーも。その人たちも一緒に回って。
──クルーも同じ行程で?
Show はい。正直、僕らより彼らのほうがしんどかったと思う。バンドを完走させるために、僕らが会場入りする前から準備してくれたり、会場を出たあとに撤収作業をしてくれたりしていたので。だからクルーに対するリスペクトも生まれるし、「それだけやってもらってるんだから自分たちも言い訳できないよな」っていうプレッシャーも生まれて。そのプレッシャーが、自分たちのライブにいい形で影響した。そういう意味でも僕ら5人の力だけじゃないんだなと思えました。
Yudai(B, Scream) 今回、47都道府県ツアーをやろうと思った表向きの理由は、日本のバンドなんだから日本をしっかり1周しておこうと思ったから。でもツアーを組んだ本当の理由は、Showの話にもつながるんだけど……ありがたいことにクルーが増えてきて、その中には過酷なツアーを経験したことのない人もいて、過酷なツアーを知っている俺らと、知らないクルーの間に意識の違いが出てきていることに気付いたから。アメリカのバンドとかって平気で10連チャン、15連チャンでライブをするじゃないですか。俺らも世界を見据えている以上、そういう過酷な状況でもライブができるようになっておかないといけないなと思ったんです。だから修行のような日程のツアーを組みました。
──実際にツアーを回って、クルーとの意識の差は埋まりました?
Yudai 埋まった部分もあるし、今回のツアーを経て改善点が見つかった部分もある。これから改修していきたいです。
──バンドの状況がよくなってきているこのタイミングで、改めてツアーの過酷さをみんなで共有するというところに立ち返ってくるのがライブバンドらしいですね。
Yudai ほかのメンバーはどうかわからないんですけど、僕はゼロスタートに戻るのが好きなんです。積み上げてきたものをぶっ壊してまたゼロから始めると、前よりももっと上に行ける気がして。そういう気持ちでバンド活動をやってる。“破壊と創造”みたいな。
──その破壊の1つが今回のツアーだったんですね。
Yudai はい。もしこのツアーが原因で解散するようなことがあったらそこまでのバンドだったんだってことだろうし。これを乗り越えられたから、より強いバンド、チームになれたんじゃないかなと思います。
Yosh 47都道府県ツアーを回ったことで、胸を張って「日本のバンドだよ」って言えるようになった気がするし、いろんな面で自信を持てるようになったよね。
Yudai うん。
Ivan(G) 僕はこのツアーに正直反対してました(笑)。それこそ「これまで積み上げてきたのに、なんで破壊するんだ」「ようやくここまできたのに」と思ってて。だけど、ツアーをやってる間に「やってよかった」と思えるようになった。クルーにもメンバーにもお客さんにも力をもらっているんだなと改めて感じられて。
──それはよかったですね。
Ivan 今回のツアーの何が一番引っかかってたかって言うと、3カ月毎日同じことを繰り返すということだったんです。でも実際にやってみたら、違うことのほうが多かった。というか、やってることは同じでも場所によってお客さんが違うし、日によって自分たちのテンションやコンディションも違う。だから……結局、47都道府県ツアー、やってよかったです(笑)。
一同 あははは(笑)。
──Tatsuyaさんはツアー、いかがでした?
Tatsuya まず、経験値として、行ったことない場所に行けたことがよかった。その土地土地の街の空気や人の雰囲気を、自分なりに感じてライブに落とし込めたと思う。行ったことない場所でもすごく盛り上がってくれたしね。
Ivan 全国を回って改めて思ったんですけど、その土地とそこに住む人ってリンクしているんですよね。「この土地で育ってるからこういうリアクションなんだ」っていうような。それは日本だけじゃなくて、どの国でもそうだと思うんですけど。だからそういう人間性みたいなものを体験して、よりその土地を知った感覚になれるのが面白かったです。世界1周したいくらいです!
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プロデューサーの「足りない」のひと言から