ナタリー PowerPush - S.R.S

平成生まれの感性が光る甘酸っぱいロックチューン堂々完成

等身大の言葉で飾らない歌詞に

──2曲目の「ゴールデンカントリー」は、タイトルどおり牧歌的なあたたかい雰囲気があります。そういう嗜好も山口さんの中にルーツとしてあるんですか?

山口 そうですね。カントリーというジャンルを聴いてきたわけじゃないんですけど、僕はすごくTHE BEATLESが好きで。彼らって、音楽的に最強のミクスチャーと言えるんじゃないかと思うんです。だからこういう曲調も自然と僕の中のフィルターを通して出てくるのかなと。

──歌詞に出てくる「丘」はどこか特定の場所を指してる?

山口 地元の学校の近くにある実在の丘です。よくアコギを持ってその神社に行くんですけど、目の前に広がる田んぼや、1本サーッと通った線路とか、その景色がとにかく好きで。行くと3~4時間はいますね。

──山口さんの歌詞って、ペンで言うとサインペンや水彩ではなくクレヨンやクーピーみたいな……そんなやわらかさがあるんですよね。

山口 あぁ、うれしいです。それは多分、僕が歌詞に対して飾ってないからかもしれない。大人っぽくシャーペンとか使ってないっていう等身大の言葉が、そういうやわらかさを出してるんじゃないかと思います。

歌詞を書くからには自分の思ってることや伝えたいことをわかってもらいたい

──3曲目の「さよならボクサー」は歌詞の独特の視点が面白いですね。

山口 高3のとき、仲の良い友達が来年アメリカに留学するって言い出したんですよ。とにかく仲が良かったからそいつに向けて何か書きたいと思って。で、彼のあだ名がボクサーだったんです。

──え!? 本当のボクシング選手じゃなくて?

山口 はい。でもそうとも取れるでしょ? “僕さあ”と“ボクサー”のダブルミーニングが思い浮かんでメモをしていて、そこから1年以上寝かせて焦らず作っていったんです。

──なるほど。リスナーによって捉え方がいろいろ変わる可能性があるのも面白いですね。

山口 いしわたりさんがよく「作詞をするにあたって、いろんな人がどんな視点で聴いてもすべて自分の想定内でイメージさせてあげられるのがいい歌詞だ」って言うんです。「ちゃんとその範囲の中で責任を持って書きなさい」って最初に言われて。

──それってかなり難しいことですよね。

山口 ですね。でもそういう歌詞っていろんな人から共感してもらえるじゃないですか? だからそこはいつも意識してますね。詞を書くからには自分の思ってることや伝えたいことをわかってもらいたい、知ってもらいたいから。

とにかく一生懸命、精一杯、音楽をやっていきたい

──今後はどのようなバンドを目指していきたいですか?

山口 バンドを続ける限りずっと言えることなんですが、とにかく一生懸命、精一杯に音楽をやっていきたい。ポジティブなパワーを与えられるような音楽をもっと作っていきたいと思います。

向尾 僕らの表現したい気持ちを、常に等身大で、背伸びせずにやっていけたらいいですね。

──ちなみに地元では今どんな状況なんですか?

上松 学校ではみんな応援してくれますね。あとはその友達とか、自分の知らないところでも聴いてくれてる人がたくさんいて。親もすごい応援してくれてて、親戚の会ったこともない人にも広めてくれてるらしいです(笑)。

──ライブバンドとしての夢は?

向尾 やっぱり大きな箱でやることですね。アリーナクラスの会場でライブとか。

畑中 うん、やりたい。

上松 地元の福岡マリンメッセは本当に夢!

──先日は山中湖でのプリプロ合宿もあったそうで。ちょっと気が早いですが、今後の新曲も楽しみにしています。

山口 合宿では今まで録りためたデモなどを丸1日かけて料理しました。とてもカッコいいものができたという自負があるので、期待しててください!

ニューシングル『ワンダーソング』 / 2009年9月9日発売 / 1050円(税込) / TOY'S FACTORY / TFCC-89285

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CD収録曲
  1. ワンダーソング
  2. ゴールデンカントリー
  3. さよならボクサー
S.R.S(えすあーるえす)

山口卓也(Vo, G)、向尾荒野(G)、上松幸平(B)、畑中拓也(Dr)の4人により2005年に結成されたギターロックバンド。ソングライティングを担当している山口のルーツである、UKロックのテイストを感じさせる温かみのあるサウンドと美しいメロディを特徴とする。2009年5月にリリースしたメジャーデビューシングル「Sometimes」が同月全国公開の映画「重力ピエロ」の主題歌に抜擢され、注目を集める。また2009年8月にはスペースシャワーTV主催のフェスティバル「SWEET LOVE SHOWER 2009」にオープニングアクトとして出演。着実にステップアップを続けている。現在も全員が現役学生で、北九州に在住している。