ナタリー PowerPush - S.R.S
平成生まれの感性が光る甘酸っぱいロックチューン堂々完成
5月に発売したデビューシングル「Sometimes」が映画「重力ピエロ」の主題歌に起用され、ロングセールスを記録中のS.R.S。全員が現在も北九州在住の学生、さらに平成生まれという、まさに新世代を感じさせるロックバンドの登場だ。
9月9日にリリースされる2ndシングル「ワンダーソング」は、彼らの年代だから描けるティーンエイジの純粋な感情を綴ったロックチューン。プロデューサーにいしわたり淳治を迎えて制作された今作について、また、今後の展望について、メンバーの4人に話を訊いた。
取材・文/川倉由起子
始まりは自己紹介の「バンドやりたい!」から
──まずバンド結成のお話から聞かせていただけますか?
向尾荒野(G) 僕ら、全員同じ高専に今も通ってるんです。で、入学後の自己紹介のときドラムの畑中が「バンドを組みたいので興味のある人は声をかけてください」って言ってたのを聞いて、僕が声をかけたのが最初なんです。
上松幸平(B) 僕は、学校の廊下で音楽を聴いてたら、いきなり違うクラスの向尾に肩をポンって叩かれて「何聴きよん?」って言われて。「OASIS」って答えたら盛り上がったんです。
向尾 「これは誘うしかない!」と(笑)。
上松 そこで「ベースやらない?」って誘われて。突然で最初は戸惑いましたが、とりあえず1回練習を見にいったらもうベースが用意されていたんですよ。楽器なんて弾いたこともなかったのに(笑)。そこから練習していくうちにハマっていきました。
──なるほど。最後に加入した山口さんは?
山口卓也(Vo,G) 僕は当時、地元の友達と組んでた別のバンドがあるんですけど、そこで畑中がたまにドラムを叩いてて。辞めるってなったときに、畑中が「S.R.Sのボーカルやらない?」って誘ってくれたんです。
──じゃあ畑中さんは掛け持ちしてたんですか?
畑中拓也(Dr) S.R.Sの前身バンドが全然活動してなかったので掛け持ちってほどでもないんですけど、とりあえず僕はライブをしたかったので、たまに手伝ってました。
──じゃあ山口さん以外は人生初のバンドがS.R.Sなんですね。
向尾 そうなんです。それでここまで来れたのが驚きっていうか……でも本当にうれしいです。
──結成の翌年には地元の高校生バンドコンテストで優勝し、2007年には平成生まれのバンドコンテスト「Hジェネ祭り」で全国283組の頂点に立って。メンバー同士の結束もどんどん強くなっていったんじゃないですか?
上松 本当にまとまったなって思ったのは、やっぱり「Hジェネ祭り」の優勝からかな。
──その後すぐメジャーレーベルの契約も決まり、今年5月にシングル「Sometimes」でデビュー。これは映画「重力ピエロ」の主題歌でしたね。
向尾 映画を観た人から「作品にすごく合っている」って声をよくいただいて。それは単純にすごくうれしいし、映画の力を借りて僕たちの歌も広まったという実感はありました。
山口 相乗効果というか、「Sometimes」がいい形で映画に色付けできたと思うし、その逆も言えるだろうし。映画を観てくれた人や映画の関係者の方々に本当に感謝ですね。ちなみに監督さんとプロデューサーさんがたまたま僕らの曲を耳にして、「これでいきたい!」と言ってくださったらしいです。
好きな人といると湧き出るポジティブバイブレーション
──2ndシングル「ワンダーソング」のタイトル曲は、飾らない優しい言葉たちが印象的なロックナンバーですね。この曲を2枚目にしようと思ったのはなぜですか?
山口 まず、デビュー曲「Sometimes」が、いろんな人たちに聴いていただけたっていう印象があって。そこで「S.R.Sってどんなバンドだろう?」って思ってくれた人も多かったと思うんです。なので「ワンダーソング」を出すことで「こんな感じもS.R.Sなんだ」と幅をもっと感じてもらえたらな、と。
上松 やっぱりロックバンドなんで、こういうロックな曲も前に出していきたいという気持ちがありました。
向尾 この夏で全員20歳になるんですけど、10代最後のシングルという意味ではピッタリなんじゃないかなと。
──歌詞はどんなところから?
山口 例えば好きな人がいたとして、その人と一緒にいると湧き出るポジティブバイブレーションというか、エネルギーというか。「この子といたら何でもできちゃいそうとか、空でも飛べるんじゃないかっていう気持ちって何なんだろう!?」って感じたんです。それを歌にしてみたくて、素直に飾らない言葉で書いてみました。
──実際にそういう女性がいたんでしょうが、それは山口さんの中で結構大きな恋だったんですか?
山口 どうでしょうねぇ。昔のことは忘れちゃうんでねぇ……(笑)。
向尾 そういう話、弱いよね(笑)。
いしわたりさんは、僕らの意思を尊重しながら進めさせてくれる
──プロデューサーのいしわたり淳治さんとの制作はどんな感じなんですか?
山口 いしわたりさんのすごいところって、僕が作った曲を絶対に否定しないんですよね。「これはこれで完成、いいと思う。でも、もっと良くなるのにもったいない部分がある」っていう指摘の仕方をしてくれるんです。僕の勝手なプロデューサーのイメージは、ここはこうしてああして、って一方的な感じだったんです。だから最初にいしわたりさんと作業させてもらうとき、すごく警戒心があって。自分の中の絶対的な領域は何があっても崩させないって思ってたんです。でもいしわたりさんはそんなことを思わせることもなく、本当に僕の意思を尊重しながら進めさせてくれる。本当にカッコいいと思うんだったらそれでいいと思うって感じで。
──今回の歌詞で、具体的にアドバイスされた部分ってあります?
山口 2番のサビに「万年補欠も」というフレーズがあって、ここの修正前の歌詞を指摘されました。「もっと卓也なりの言葉で、お前にしか書けない言葉があるんじゃない?」って。でもそれによって「ワンダーソング」のチャームポイントというくらいいいフックになったし、本当にいしわたりさんがいなかったらできてなかったですね。歌詞に一本の筋がちゃんと通るようにアドバイスをしてくれるので、いい曲がどんどんできてる感じです。
S.R.S(えすあーるえす)
山口卓也(Vo, G)、向尾荒野(G)、上松幸平(B)、畑中拓也(Dr)の4人により2005年に結成されたギターロックバンド。ソングライティングを担当している山口のルーツである、UKロックのテイストを感じさせる温かみのあるサウンドと美しいメロディを特徴とする。2009年5月にリリースしたメジャーデビューシングル「Sometimes」が同月全国公開の映画「重力ピエロ」の主題歌に抜擢され、注目を集める。また2009年8月にはスペースシャワーTV主催のフェスティバル「SWEET LOVE SHOWER 2009」にオープニングアクトとして出演。着実にステップアップを続けている。現在も全員が現役学生で、北九州に在住している。