TOWA TEIの変名プロジェクト、Sweet Robots Against The Machineが16年ぶりに再始動。TOWA TEI、砂原良徳、バカリズムというメンバーでアルバム「3」を作り上げた。
音楽ナタリーでは再始動を記念して、TOWA TEIとバカリズムの対談を実施。今回バカリズムが参加した経緯や、2人の思わぬ共通点などを話してもらった。
取材・文 / 秦野邦彦 撮影 / 相澤心也
音楽と雑談の夕べ
──まずは8月1、2日に開催されたマンガ家・赤塚不二夫の死後10年記念イベント「フジオロックフェスティバル 2018」での、現メンバーによるSweet Robots Against The Machine (以下、SRATM)の初ライブのお話から聞かせてください。
TOWA TEI もともとSRATMでライブをやるつもりはなかったんですけど、先輩方に声をかけてもらったから逆に断る理由がなくて。赤塚不二夫さんの作品も好きですし、出演者もいいメンツだったし。
バカリズム すごい顔ぶれでした。
──女優・夏帆さんも歌唱している新曲「Dakitime」では、この日不参加だった夏帆さんのパートもバカリズムさんが一人二役で演じられて。
バカリズム リハーサルの段階でも、あの部分はふわっとしたままだったんです。夏帆さんがいないんだったら、お客さんに「ごはん食べましたか?」って聞くのはどうだろうとか。にしてはまあまあな尺だし、間が持たないだろう。だったらいっそ自分が一人二役でやったほうがいいんじゃないかってテイさんに言って。
テイ バカリさん、1人でライブなさるときもお客さんを信用していないんですか?
バカリズム そういうわけじゃないんですけど(笑)。反応がいいことをあまり期待しないと言うか、常に重いお客さんを想定してやってますね。
テイ 今年のバカリさんの単独ライブ「ドラマチック」を初日に観せていただいたんですけど、たまたまBOSE(スチャダラパー)が隣で、終演後「バカリさん、初日だからかテンポ早すぎ」と言ってました。「客席が爆笑してるのに次のセリフ言っちゃってるから、よく聞こえない」って。さすがラッパー、目の付けどころが違うなって。本人いわく「俺はラッパーじゃなくお笑い研究家ですから」だそうですけど(笑)。舞台だと、音楽で言うところのガイドになるクリック音とかないじゃないですか? それであの絶妙な間ができちゃうのがすごいですよね。あのライブ、何分でした? すごく短く感じたけど、60分以上あったのかな?
バカリズム 2時間です。今までで一番長いライブでした。
テイ えっ、2時間あるとは全然感じなかったな。映画でも120分の壁を越えてるのはそれだけでキツイじゃないですか。
バカリズム ちょっと時計を見始めちゃいますよね。僕も1時間半が集中力の限界だから、自分が作るものも理想としては90分内に収めたいんです。今回はちょっと長くなっちゃったんですけど。
テイ バカリさん、最初のシーンからすごく動いていて。
バカリズム あれで体力をだいぶ奪われて、コントの3本目くらいで「もう嫌だ、帰りたい!」って思いましたけどね(笑)。
テイ ははは!(笑) SRATMのライブについては僕はけっこう楽観的で、フロントマンがしっかりしてるから大丈夫だろうと思っていたんです。「フジオロック」だったのもハマりがよかったですね。一人二役ってすごく落語的じゃないですか。落語家さんも多数出演されたイベントだったから。
バカリズム ああ、確かに。
テイ これがもっと「コンサートを見に行くぞ!」っていう人が集まるフェスだったら、うちらみたいなトークを主体にしたユニットはどうかなっていうのがあるんですけど。
バカリズム 「音楽と雑談の夕べ」(笑)。
テイ 意外とディナーショーとか向いてるかもしれない。
SRATMとは
──改めて、このたびテイさんの変名プロジェクト「SRATM」がバカリズムさん、砂原良徳さんを迎えた3人組で16年ぶりに再始動したわけですが。
テイ 「バカリズム」がもともと2人組だったことをずいぶんあとになって知ったんですけど、僕も昔、Deee-Liteという3人組をやっていて。脱退後、シンガーならともかくDJのソロアルバムなんてどうせ売れないだろうとは思っていたんですけど、1stアルバム(1994年発売の「Future Listening!」)がけっこう売れて。
バカリズム 僕も持ってます。
テイ ありがとうございます。2ndアルバム(1997年発売の「Sound Museum」)を作るときはプレッシャーだったんですけど、意外と曲がいっぱいできちゃって。さすがに3枚組はちょっと重いから、その中から楽曲を分けて名前を隠して出したのが「Sweet Robots Against The Machine」(1997年発売)です。当時Rage Against the Machineっていうグループがカッコよかったから、「Sweet Robots Against The Machine」にしたらマヌケな感じがしていいかな、みたいな。SRATMの1stは制作費100万円で、エンジニアと2人でバリ島に行って一番いいホテルに泊まって、メシを食ってる間に野生の虫の声を録っておいて。その虫の声を使ったのがDisc 2(「A Night Of UBUD」)です。
バカリズム いいですねえ。優雅なアルバム。
テイ 当時は制作費100万つったら全然少ないですから。で、ジャケットは「これがいいね」なんて「Harper's BAZAAR」に載った当時一番売れてるスーパーモデルの写真を買い取って。700万円かかりましたけど。
バカリズム えーっ! そこが一番かかっちゃうんですか(笑)。
──今回の「3」の五木田智央さんが描かれたジャケットは1stと同じモチーフですね。
テイ 五木田くんも今頼むとすごく高いかもしれないんだけども昔からのよしみで予算内でやってくれました。ただ、SRATMはTOWA TEI名義のイメージと異なる楽曲を発表するときの変名のつもりだったんだけど、2ndを作った時点で、この音ならソロ名義でもいいと思って「TOWA TEI」(2002年リリース)というタイトルにして役目を終えたつもりだったんです。それからずいぶん経ってバカリさんと出会って、いつか“バカリトウワ”で何か一緒にやりたいですねって話をしていて、ようやく今回一緒にやることになったという。
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新ジャンル“スポークン・テクノ”を提唱
- Sweet Robots Against The Machine「3」
- 2018年7月18日発売 / BETTER DAYS
-
[CD]
3240円 / COCB-54263 -
- 収録曲
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- フューチャリズム(Futurism)
- ダキタイム(Dakitime)
- サセル体操(Gymnastics to make)
- 覚えてはいけない九九(Do not remember 99)
- アニマル(Animal)
- 非常識クイズ(Insane quiz)
- 捨てられない街角(Boxes)
- レイディオ(RADIO)
- 集会(Assembly)
- かわいい(Kawaii)
-
[アナログ2枚組]
5940円 / COJA-9335 -
- 収録曲
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DISC 1
A面- フューチャリズム(Futurism)
- ダキタイム(Dakitime)
- サセル体操(Gymnastics to make)
- 覚えてはいけない九九(Do not remember 99)
- アニマル(Animal)
B面
- 非常識クイズ(Insane quiz)
- 捨てられない街角(Boxes)
- レイディオ(RADIO)
- 集会(Assembly)
- かわいい(Kawaii)
DISC 2
A面- Futurism(Inst.)
- Dakitime(Inst.)
B面
- Do not remember 99(Inst.)
- Insane quiz(Inst.)
- Assembly(Inst.)
- Sweet Robots Against The Machine(スウィートロボッツアゲインストザマシーン)
- テイ・トウワの変名プロジェクト。1997年に砂原良徳、清水靖晃、Stretch Armstrongらを迎えて1stアルバム「Sweet Robots Against the Machine」を、2002年には砂原、細野晴臣 セニョールココナッツと共に2ndアルバム「TOWA TEI」を発表した。2018年7月に、砂原、バカリズムを迎えて16年ぶりのアルバム「3」をリリース。