家族で楽しめるロックバンドもいいなと感じた武道館
──そのモードが変化する時期はあったんですか?
UZ 俺は2012年12月の日本武道館ライブですね(参照:SPYAIR、ENZEL☆脱退の初武道館ライブで1万人熱狂)。メンバー(ENZEL☆)が抜けるタイミングだったんですけど、その頃は「スタンディング以外はライブじゃない」と思っていて。
KENTA よく議論になったよね、そのことで。
UZ メロコア育ちだから、モッシュ、ダイブが好きだったし、「指定席ってなんなんだよ」という。でも、やってみたら武道館のライブはすごくよかったんですよ。「これもアリだな」と思ったし、家族で楽しめるロックバンドもいいなと。そこからですね、ポップな曲もやってみようと思い始めたのは。
IKE 最初の武道館ライブの映像を観ると、俺、すげえマジメな顔をしてるんだよね。後ろにチョケてくれるヤツ(ENZEL☆)がいたから(笑)、俺は真剣にやらないダメだなと思ってたんだろうね。彼が脱退してからは……。
KENTA 笑うようになったよね。
IKE そうなんだよ。たぶん、そこで吹っ切れたんだろうね。
──なるほど。MOMIKENさんはどうですか?
MOMIKEN 節目となる出来事は、けっこうあったと思いますね。自分たちのこともそうだし、世の中の流れもそうだし。いろんなことが起きすぎて、何がターニングポイントなのかわからなくなってます(笑)。
UZ ホントだよね。
KENTA 今もそうだし。
MOMIKEN そうそう。最近思うんだけど、この先もいろいろあるだろうから、「いつでも予想外のことが起きる」と覚悟したほうがいいなって。
アニメタイアップのおかげで楽曲が多角的に広がる
──「銀魂」「ハイキュー!!」をはじめ、アニメ作品のタイアップ曲もSPYAIRのキャリアを語るうえで欠かせないですよね。
UZ 間違いないですね。いろんな景色を見せてもらったし、バンドが活動を続けていられるのも、確実にそのおかげなので。
IKE うん。アニメは特に光り輝いているタイアップだし、いくつも経験させてもらって本当にありがたいなと思ってます。楽曲がより多角的に広がっていく感覚をひしひしと感じますよね。そういえば、先日の東京2020オリンピックの試合会場でも自分たちの曲が流れてたんですけど、それも間違いなく、アニメの力がないとたどり着けなかったところと思います。
──タイアップを生かせるかどうかも、バンドの力ですよね。
IKE そうですね。かつては、ロックバンドがアニメのタイアップをやると「悪魔に魂を売った」って言われたりして(笑)。
UZ 当時はそういう風潮もあったよね。
IKE もちろん偏見なんですけどね、実際に俺らも、いろんなバンドから「お前ら、チャラチャラしてるな」というレッテルを貼られてたと思うし。
UZ でも、こうやって10年以上も続けられてるのは強みだね。
MOMIKEN そうだね。
UZ 今は自信がありますからね、自分たちに。
過去のライブはもう1回全部なぞりたい
──ちなみにこの10年の中で、印象に残ってるライブを挙げるとすると?
IKE 2010年に千葉LOOKでSUPER BEAVERと対バンしたんですよ。どちらもまだ人気がなくて、それぞれ30人くらいしかお客さん呼べなかったんだけど、渋谷龍太(SUPER BEAVER)のステージを見て、「だいぶ変わってるけど、超好き!」と思って、ナンパしました(笑)。
KENTA SUPER BEAVERの話じゃん(笑)。ワンマンだと、2011年の渋谷CLUB QUATTROかな。チケットが200枚くらいしか売れてなくて、「埋まらないね。どうする?」って話してたんですけど、「サムライハート(Some Like It Hot!!)」が「銀魂」で流れ始めたら、一気にソールドアウトして。明らかにバンドの知名度が上がって、追い風が吹き始めたんですよね。
IKE 初めて風を感じたね。俺はやっぱり、2014年の広島CLUB QUATTROかな。
KENTA そこいく?(笑)
──2014年の「イマジネーション」ツアー中で、このライブの翌日にIKEさんが突然「脱退します」とツイートしてしまったという。
IKE イマジネーションが膨らみすぎたんでしょうね(笑)。
KENTA 広島のライブ、自分の声をつぶそうとしてたよね。
IKE え、そう?
UZ そうだよ。「血を吐きたいのかな」と思うくらいシャウトしてて。「SPYAIR、今日で最後かな」と思ったからね、あのとき。
MOMIKEN うん。そしたら次の日の朝、IKEがツイートしてて(笑)。
──当時はめちゃくちゃ驚きましたが、笑って話せるようになってよかったです(笑)。
IKE (笑)。印象に残ってるのは、2018年のワールドツアーかな。景色がまったく違ってたから。その翌年からはいきなりライブの数が減るんだけどね。
UZ 2020年なんて1本しかやってないしね。
KENTA ほとんどのバンドがそうでしょ、2020年は。
IKE そうだよね。配信ライブをやるか、やらないかの選択だけだったから。
UZ 2020年はデビュー10周年で、派手に活動する予定だったのに……。
IKE 何もできない!って(笑)。
MOMIKEN 何もかも止まったからね。
IKE うん。でも、こうやって振り返ってみると、いろいろ思い出しますね。最初の武道館もそうだし、デビューした翌年に開催した日比谷野音ライブもそうだし。
MOMIKEN 今年の「JUST LIKE THIS」もね。
IKE そうだね。もう1回、全部なぞりたいです。
KENTA 広島クアトロも?
IKE うん、それをファイナルに持ってこよう(笑)。
バンドを続けるために必要なのは趣味と健康
──SPYAIRはキャリアを重ねるごとに自由になっている印象があって。メンバーの皆さんはどう感じてますか?
IKE うん、どんどん自由になってると思います。音楽のジャンルも決めてないし、「ロックバンドでありたい」というのもないし……(UZに向かって)ごめんだけどね。
UZ いや、すごくわかる。
IKE とにかく、バンドを続けたいんですよね。なんというか、だいぶ認知もされてきたじゃないですか、俺ら(笑)。もはや「ビビることはない」と思ってる部分もあるし、音源をきちんと出してライブし続けていければいいのかなと。あとは趣味も充実させて。
──趣味?
IKE 音楽以外の趣味ですね。好きなことをやって、人間として安定していたほうが、いい歌を歌えるので。なので健康でいたいです。
UZ わかる。
KENTA え、どういうこと?
UZ (笑)。なんて言うのかな………こだわりが強いというのは、クリエイターとしてはいいことだと思うんですよ。俺らもインディーズの頃やメジャーデビューした頃はこだわりが強かったし、特に俺はそれがひどかったから。でも、少しずつ考え方も変わってきて、「ほかのことも楽しんで、バンドも楽しむ」という感じになってきて。そのために何が必要かというと、健康なんだよ。
MOMIKEN なるほどね!
IKE そこまで読み取ってくれたんだ(笑)。
UZ (笑)。それこそ「MILLION」(2013年8月発売の3rdアルバム)の頃は、人生のすべてを音楽に捧げていたし、自分の時間のほぼすべてをバンドに向けていて。そういう時期もあったけど、今は「ほかの時間も楽しんで、心に余裕を持って、バンドも楽しむ」という感じなんですよ。
IKE 難しい課題ですよね。どっちにしても肉体を使うし、例えば「あの会場でライブをやりたい」と思っても、体調がよくないと叶わない。そのためには地に足を付けて、健康的にバンドを進めていかないと。
UZ 10年経って、そういう心境になりましたね。
KENTA もちろん「バンドありき」が根本なのは変わってないですけどね。バンドをやらないと生きていけないし、趣味を楽しむこともできないじゃないですか。だからこそ、バンドを続けないと。心血を注いで、睡眠を削ってがんばっても、5年後にバンドがなくなったら、その後の人生どうしたらいいかわからないので。
MOMIKEN いつ何があるかわからないし、体には気を付けないとね。健康第一です(笑)。
KENTA (笑)。ロックバンドって健康と相反するイメージもあるけど、そんなの絶対ウソなんですよ。健康じゃないとライブを続けられないから。
IKE みんなの意見がまとまっちゃったね(笑)。