ナタリー Super Power Push - スピッツ

スピッツ徹底解剖 ~クリエイターが明かす舞台裏~

2011年全国ツアー開催決定! SPITZ JAMBOREE TOUR'とげまる2011'&'とげまリーナ'

「とげまる」全曲試聴実施中!

スピッツ「とげまる」

ニューアルバム「とげまる」2010年10月27日発売

それにしても「とげまる」とはいったい何なのだろう? トゲ+丸? あるいは「とげ丸」という架空のキャラクターか何かの名前? 曲単位でも、そして毎回のアルバムでもさまざまな想像を刺激してくれるスピッツだが、今作の題名はいつも以上に不思議なイメージや異物感をもたらしてくれる。

今回もここ数作続いている亀田誠治との共同プロデュースで、前作「さざなみCD」をリリースした以降の3年の間で、楽曲を少しずつ録りためながら作り進められてきたものだ(なにしろ「若葉」は一昨年秋のシングル曲である)。それもあってか、アップテンポからミディアム、バラードまで、幅広いタイプの楽曲があり、全体の構成力の高さにはベテランバンドらしい堅牢さが感じられる。

彼らの最大の魅力はマサムネの歌と声とメロディであり、ここでもその世界からハミ出すようなムチャは見られない。カントリータッチの「花の写真」やマサムネがのびやかなボーカルを聴かせる「聞かせてよ」などは、バンドのスタイルをきっちり遵守したものである。

しかしそうした安定感の一方で、ところどころにフレッシュなテンションが見え隠れするのがこのアルバム最大のポイントだ。まるでサーフロックな「恋する凡人」、アイドルポップのようなメロディが爆発する「幻のドラゴン」、ストレンジなビートが続いていく「どんどどん」。全14曲のうちのいくつかは今年春以降に行われた「SPITZ JAMBOREE TOUR 2010」などのライブの場ですでに披露されており、そこでは草野マサムネ自らがエレキギターを弾くなどしてバンド全体で突き進むような感覚が印象的だった。ここに来てバンド全体に改めて勢いが出てきているのは明白であり、例えば目立ちすぎないレベルの細やかなリズムアレンジによって演奏に高いテンションを加えていく4人の雰囲気は、いわゆるベテランバンドらしい落ち着きとは傾向を異にしている。

そうした力強いトーンは各曲の歌詞においても通じるところがあり、「霞む視界に目を凝らせ」(「ビギナー」)、「果ての果てを目ざせ」(「探検隊」)、「今走るんだどしゃ降りの中を 明日が見えなくなっても」(「恋する凡人」)、「まだ前書きの物語 崩れそうな背景を染めていけ」(「TRABANT」)など、いつもよりも前を向こうとしている表現が際立っている。本作でのスピッツは、どこか勇猛なのだ。

こんなにもフレッシュさを覚える内容なだけに、幕開けが「ビギナー」というタイトルの曲であることは、つくづくこのアルバムを象徴していると思う次第だ。そして各曲を聴きながら、脳ミソは再びアルバムタイトルの謎を追ってしまう……。来年でデビュー20周年を迎えるバンドのみずみずしさと頼もしさ、そしてやんちゃさまでが同居した充実作である。

(文/青木優)

スピッツ「シロクマ/ビギナー」

収録曲

  1. シロクマ 試聴する
  2. ビギナー 試聴する
  3. ナイフ (Live from SPITZ JAMBOREE TOUR 2010)
  4. シロクマ (Live from SPITZ JAMBOREE TOUR 2010)

ニューシングル「シロクマ/ビギナー」2010年9月29日発売

夏にリリースした「つぐみ」に続いてのシングルは、通算で数えると37枚目。「シロクマ」「ビギナー」の2曲が両A面で収録されている。

「シロクマ」は、スピッツらしいメロディアスな曲調を持つ穏やかなフォークロック。主人公である「すごく疲れたシロクマ」には、やはり今を生きる人間の姿を重ね合わせたくなるが、「まだ跳べるかな」「まだ間に合うはず」「なんとなくでは終われない」と、希望のカケラのような言葉が、少しずつではあるものの散りばめられている。この曲はアニメーションによるビデオクリップも非常に秀逸な仕上がりになっているので、ぜひともご覧いただきたい。

もう1曲の「ビギナー」は、かっ達なビートとともに歌われるロックバラードだ。さらにこのシングルには前回に続いてライブテイクが2曲収録されているのも秘かな注目点で、そのうちの「ナイフ」は1992年発表のミニアルバム「オーロラになれなかった人のために」からの曲。2010年、スピッツの現在形が確認できる1枚である。

(文/青木優)

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ニューシングル「シロクマ/ビギナー」 / 2010年9月29日発売 / 1200円(税込) / UNIVERSAL J / UPCH-5669

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収録曲
  1. シロクマ 試聴する
  2. ビギナー 試聴する
  3. ナイフ (Live from SPITZ JAMBOREE TOUR 2010)
  4. シロクマ (Live from SPITZ JAMBOREE TOUR 2010)

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スピッツ

草野マサムネ(Vo, G)、三輪テツヤ(G)、田村明浩(B)、崎山龍男(Dr)の4人で1987年に結成。新宿や渋谷などのライブハウスで精力的な活動を行い、着実に動員を増やしていく。1990年にインディーズからミニアルバム「ヒバリのこころ」を発表。草野の透き通る歌声と、強い存在感を放つメロディ&バンドサウンドが大きな話題を集める。1991年にはシングル「ヒバリのこころ」とアルバム「スピッツ」でメジャーデビュー。数々の作品を発表し続け、1995年のシングル「ロビンソン」が爆発的なヒットを記録する。以後現在に至るまで、多数のヒットシングル&アルバムをリリースしている。

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