スピラ・スピカがメジャーデビュー5周年を迎えた。2018年8月8日に「ガンダムビルドダイバーズ」第2クールのエンディングテーマ「スタートダッシュ」でメジャーデビューを果たし、その後も「みだらな青ちゃんは勉強ができない」のエンディングテーマ「恋はミラクル」、「その着せ替え人形は恋をする」のオープニングテーマ「燦々デイズ」など、アニメのテーマソングを数多く担当してきた。
メンバーの卒業を経て、2022年9月から幹葉(Vo)のソロプロジェクトとして再始動したスピラ・スピカ。音楽ナタリーではメジャーデビューからの5年間を振り返りながら、デビュー記念日の8月8日にリリースされた最新曲「私の物語」、そして今後のスピラ・スピカの活動について、幹葉自身の言葉で語ってもらった。
取材・文 / 森朋之撮影 / 草場雄介
アニメで育った5年間
──メジャーデビューから5年。本当にいろいろなことがあったと思いますが、デビュー当初のことは覚えていますか?
メジャーデビューするまでは関西で活動してきたので、まず東京に出てくるところからですね(笑)。2018年初めに上京して、8月のデビューに向けて準備が始まって。関西で活動していた頃とは物事が進むテンポが全然違っていて、ついていくのに必死でした。デビュー曲の「スタートダッシュ」で初めてアニメのタイアップをやらせていただいたんですけど、アニメと音楽の関わり方も、影響力のすごさも、全然わかってなかったんです。とにかく目の前のことをやるだけでいっぱいっぱいでしたね。
──「リライズ」(「ガンダムビルドダイバーズRe:RISE」1st Seasonオープニングテーマ)、「Twinkle」(「ガンダムビルドダイバーズRe:RISE」2nd Seasonエンディングテーマ)など「ガンダムビルドダイバーズ」とスピラ・スピカの関わりはその後も続きました。
「『ガンダムビルドダイバーズ』の曲、スピスピだったんですね」と言われることも多いし、ガンダムをきっかけにして、いろんなつながりができて。森口博子さんとラジオやイベントでご一緒することもできました。今のスピラ・スピカがあるのは、ガンダムの力もすごく大きいです。
──作品とライブを重ねる中で、スピラ・スピカの個性も少しずつ確立されてきた印象もあります。
最初の頃は、私自身にあまり意志がなかった気がして。インディーズ時代はすべての曲をギターの寺西裕二が作っていて、私は「バンドで歌えて楽しい」くらいにしか思ってなかったんですよ。メジャーデビューして、アニメの曲を担当させてもらうようになって、アニメと自分がリンクするところを見つけようとする中で、やっと「こういうことが歌いたいのかも」みたいなことがわかってきたというか。スピラ・スピカというバンド名の由来でもあるんですけど、暗い道のりにいても、星の光のように輝いて道を照らして導けるようなバンドになりたいなって。
──デビューしたあとで、歌う意味が見えてきたと。いろんなテイストの曲を歌うことで、シンガーとしての幅も広がりましたよね。
そうですね。私の声はちょっとハスキーだし、「あまり明るくないな」と思ってたんですけど、アレンジャーの江口亮さんに「明るい声を出すために、目をちゃんと開いて、上を見て歌って」とアドバイスをもらったりして、少しずついろんな歌い方ができるようになって。特に4枚目のシングル「イヤヨイヤヨモスキノウチ!」(アニメ「通常攻撃が全体攻撃で二回攻撃のお母さんは好きですか?」オープニングテーマ)は歌い方の幅が広がったタイミングだったと思います。それまで担当してきたアニメ曲の中で一番はっちゃけていて、奇想天外なところもあって。そういう作品に出会ったことで、私の中で扉が開いたというか。そういえば私、インディーズの頃はライブで笑わないように気を付けてたんですよ。
──カッコよく見せるために?
そうそう(笑)。しゃべるとこの性格がバレちゃうから、MCもなるべく少なくして。そうしないとほかのバンドマンにナメられると思ってたんです。デビューしてからも、初めてアニサマ(「Animelo Summer Live」)に出させてもらった2019年頃までは、どこかカッコつけたところがあった気がして。それが変わってきたのは、「ピラミッド大逆転」(アニメ「俺だけ入れる隠しダンジョン」オープニングテーマ)くらいかな。あの曲で楽しい方向に振り切ったことで、「こっちのほうがカッコいいな」と気付けたので。アニメの力ってすごいですね(笑)。
──関わったアニメ作品に引っ張ってもらった感覚も?
はい。自分でも気付いてなかった自分を知れたし、明るい部分もどんどん出てきて。ありがたいです、本当に。
──デビュー3年目のタイミングでコロナ禍になりましたが、ライブでがんばってきたスピラ・スピカにとっては大きな痛手だったのでは?
スピラ・スピカがソロプロジェクトになった理由の1つかもしれないです。ライブができない中で、メンバーの方向性が違ってきたというか、それぞれ向かう先が見つかったんです。ただ、あの時期だからこそできた曲もあるんですよ。ライブをやっても、お客さんは声を出せない。それなら、ゆっくり聴いてもらえる曲を作ろうかって。「サヨナラナミダ」(アニメ「戦翼のシグルドリーヴァ」エンディングテーマ)もそう。ライブではピアノ1台で歌うこともあったし、自分の声や歌と向き合うことができたんだと思います。
──2022年2月にリリースした「燦々デイズ」(アニメ「その着せ替え人形は恋をする」オープニングテーマ)も話題を集めました。
「燦々デイズ」は本当にたくさんの方に聴いていただけて。今までで一番、海外の方からの反響が大きかった気がします。韓国の方が日本語で歌ってくれてたり、この曲を使ってコスプレ動画をアップしてくれたり。それって本当にとんでもないことだし、めちゃくちゃうれしかったです。海外のライブももっとやりたいですね。去年の冬にサウジアラビアでライブをやらせてもらったんですけど、それも本当に楽しかったので。
1人でもスピラ・スピカを名乗る意味
──2022年9月にスピラ・スピカは、幹葉さんのソロプロジェクトとして再始動しました。当時の気持ちを教えてもらえますか?
一番は「ファンのみんなに申し訳ない」でしたね。ただ、自分たちの中では「3人それぞれの道を行く」とガシッと決めていたし、「私はこれから何をやっていこうかな」というワクワク感もあって。とは言え、12月のワンマンライブまで3カ月以上あったので、実際にファンのみんなに会って、反応を直接確かめるまでは「本当に大丈夫なのかな?」という不安もありました。「離れてしまう人もいるだろうな」って思ってたので……。
──ソロプロジェクトになって最初のワンマンライブ、どうでした?
まだ声出し禁止だったんですけど、ファンのみんなの「自分たちがいるから大丈夫だよ」っていう気持ちが表情や手拍子、拍手を通して伝わってきて、すごくうれしかったです。「絶対に泣いちゃだめ」と思ってたんですけど、1曲目の「小さな勇気」を歌い始めた瞬間、グラグラ来ちゃいました(笑)。「小さな勇気」は上京したときのことを思い出しながら作った曲で、ライブ当日の“不安なところから一歩踏み出す”という自分の気持ちとリンクしちゃったんです。思い出に残る1日になりましたね。
──「スピラ・スピカという名前を背負っていく」というのも、ソロプロジェクトに移行する時点で決めていたんですか?
そこは3人でいろいろと話し合いました。ベースのますだは音楽から離れて、ギターの寺西はステージには立たないけど、曲は作り続けるということになって。私はやっぱりステージに立って歌いたかったんです。「何を歌いたいんだろう?」と考えたときに、やっぱりスピラ・スピカでやってきたことを続けたかったんですよね。それで2人に「スピラ・スピカの幹葉として歌っていきたんだけど」と話したら、「スピラ・スピカという名前を残してもらえるなら!」と言ってもらえて。みんなで作った曲を、これからも大切に歌っていきたいです。
──ソロプロジェクトになっても、スピラ・スピカの曲を歌うことに違和感はなかった?
まったくなかったです。インディーズの頃はメンバーだけで曲を作ってたんですけど、デビューしてからは重永亮介さんやSakuさんなど多くの方に曲を書いていただいたし、アレンジャーの方やディレクターの方にも支えてもらって。みんなで制作している感覚が強いので、ソロプロジェクトとして歌っても全然違和感はないですね。今年の春に開催したツアーでは北海道や広島にも初めて行けて、「体制は変わったけど、スピラ・スピカの音楽や伝えたいこと、何も変わってないよ」と、応援してくれる方たちに直接伝えられたんじゃないかなって。やっぱりライブは大事だし、もっともっと増やしていきたいです。
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