SPECIAL OTHERSとSPECIAL OTHERS ACOUSTICの違い
──シックな雰囲気から一転、2曲目の「Wayfarer」は軽快でグルーヴィなタッチですね。芹澤さんのグロッケンが全体を引っ張ってますが、同じ鍵盤楽器でも指で弾くのとマレットで叩くのでは、かなり感覚は変わってきます?
芹澤 まったく違いますね。グロッケンは鍵盤というより、どちらかと言うと音階のある打楽器と言ったほうが正確なので。SOAを始めた頃に、ほぼゼロから勉強しました。良太にドラムの叩き方を教えてもらって、参考にしたり。
──へええ。メロディを奏でるより、むしろリズムを打っていく感じ?
芹澤 それに近いですね。カンカンカンとテンポよくいかないと面白さが出ない楽器なので。ドラムの手順を学んだことで、右手と左手の関係性とか、めっちゃ勉強になりましたし。そのスキルが通常のSPECIAL OTHERSでの演奏にフィードバックされている部分もかなりあると思います。「Wayfarer」もちょっと変わったリズムなんだよね。
宮原 うん。ハチゴ(5/8拍子)とハチロク(6/8拍子)を、短い小節で繰り返している。それを体に覚え込ませるのも楽しかったです。
──4曲目の「IDOL」は、デビューミニアルバムのタイトル曲で、ライブでもよく披露されるファンにはおなじみのナンバーですね。アコースティックで演奏してみていかがでしたか?
柳下 この曲をリリースしたのは2006年。作ったのはたぶん23歳くらいだと思うので、もう15年も前なんですけど……まったく違和感なく弾けましたね。自分たちで言うのも変だけど、やっぱりいい曲だったんだなと。
宮原 この曲では、ヤギがギターでメロディとベースラインの両方を弾いているので、その分アンサンブルで遊べました。例えばオリジナルの楽曲ではギターが弾いているメロディを今回はマンドリンに置き換えてみたり。
又吉 これも日本のバンドでは珍しいアレンジかもしれないね。マンドリンでぐいぐい引っ張っていくというのは。
──ちょっとアイリッシュパンクっぽい雰囲気もありますよね。
又吉 はい。正直「マンドリンの使い方ってこれで合ってるのかな?」と迷う瞬間もないではないですけど(笑)。勢いのある曲調に仕上がったし、まあ、SOAならではの楽器の使い方を楽しんでいただければいいなと。
7年分の進化を刻んだ「Birdie」と「CP」
──5曲目の「My Home Town」は、懐かしくてちょっと切ない曲調が印象に残りました。スペアザは横浜出身ですが、4人にとっての地元感をサウンドにするとこういう感じになるんですか?
宮原 いえ。The Barr Brothersという、僕の大好きなカナダのバンドがいまして。いつか、彼らになったつもりで曲を作ってみようと前々から思ってたんです。で、今回やっとそれができたんですけど……北米のバンドって、いかにも“マイ・ホーム・タウン”とか言いそうじゃないですか。
芹澤 テキトーなネーミングだよなあ(笑)。
──なるほど(笑)。今回のアルバムには過去のシングルのカップリング曲も2つセルフカバーされています。6曲目「Birdie」と8曲目「CP」は、どちらも2011年にリリースされた楽曲のSOAバージョンですがこの選曲は意図的に?
宮原 と言うか、もともとはこの2曲がSOAの出発点だったんです。どちらもアコースティック楽器で作った曲で。それをエレクトリックにアレンジし直して、シングルのカップリングにしたんですね。なので当然、前作「LIGHT」に収録するつもりだったんですけど……。
又吉 アルバムを作り始めたら、誰も思い出さなかったというね。
──おお! それはまた。
宮原 リリースしてから「あ、ヤベえ! 入れ忘れてんじゃん!」となったんですが、もうあとの祭り(笑)。で、今回はしっかり収録しました。7年分の進化と言うか、よりタイトでグルーヴィな演奏ができたんじゃないかなと。
柳下 これまでライブでもあまり演奏していない、あまり日の目を浴びてこなかった曲だしね。「こんないい曲もありますよ」という思いを込めて。
芹澤 今度のツアーが、ライブで聴く絶好のチャンスです!
──もう1つ面白かったのが、7曲目「ローゼン」。これはメジャーデビュー前の2005年に、シンガーのLeyonaさんと共作した曲だとか。
芹澤 そう、知る人ぞ知る名曲。今でもライブのアンコールとかでは、たまに演奏してるんですけどね。
柳下 オリジナルにはLeyonaのヴォーカルが入ってますが、今回のバージョンではその歌メロを、ほぼ芹澤が鍵ハモで弾いてるよね。
芹澤 うん。彼女の歌を聴きながら、抑揚だったり独特のタイム感だったりを自分なりに再現してみました。やっぱりすごい歌い手なので、そこは思いきりインスパイアされています。あと、鍵ハモって息を吹き込む楽器なので、歌の呼吸に似てるところがあって。その意味でもすごく勉強になりました。
──そこはグロッケンと使い分けていると。
芹澤 ですね。リズム感を出すならグロッケン、メロディで歌を表現するなら鍵盤ハーモニカが合う。テンポのあるフレーズだと、やっぱり鍵ハモはあまりしっくりこないんですよ。アタックも遅いですし。
SOAの演奏はテレパシーっぽい
──ラストを飾るのは、アルバムのタイトルでもある「Telepathy」。思わず顔がほころぶ愛らしいナンバーです。“超感覚的知覚”とか“精神感応”を意味するテレパシーという言葉は、どこからイメージしたんですか?
芹澤 よく言うんですけど、アコースティックスタイルでの演奏って、例えばブレイクを作るときも各自が意識を研ぎ澄まして、ここというタイミングを全員で完璧に合わせないとカッコよくならない。そういうのって、まさにテレパシーっぽいじゃないですか。まあ、実際のところは先にタイトルが思い浮かんで、意味は完全に後付けなんですけど(笑)。
柳下 でも、言い得て妙と言うか……。俺たちのやってる音楽って、けっこうそういう部分は重要だなとは思います。それはアコースティックに限らず。
宮原 しかも俺たちの場合、歌詞もないからね。サウンドだけで思いを伝えるというのは、やっぱテレパシーに近い……のかなと(笑)。確かこの曲も、ヤギがギターのフレーズをポロポロって弾いていて、そこに俺がギターを合わせる感じで自然とできたんじゃなかったっけ?
柳下 うん。そうだったと思う。
又吉 そう考えると、改めてばっちりなタイトルだなと(笑)。
──実際、生楽器のアンサンブルも前作より大きく進化していますし。何よりアコースティック編成なのに、どこか都会っぽい匂いがする。そこがいかにもスペアザらしくて面白いなと感じました。
芹澤 そうなんです。僕ら自分で、“アーバンストリートミュージック”って言ってるんですけど。
宮原 キミ、そのコピーめっちゃ推してるよね(笑)。
芹澤 もともと僕ら、街で生まれて、街で育ったわけですし。その感覚を出したい気持ちは常にありますよね。都会って、もちろん刺激的な部分も多いけど、機材を運ぼうと思っても道路が渋滞していたり独特の不便さもあるじゃないですか。その中で自分たちの手でヒョイッと運べて、その気になれば都会の路上でも演奏できちゃう音楽。今回の「Telepathy」では、その感じをうまく出せたらいいなと。
柳下 やっぱ、プラハまで行って路上で演奏してよかった(笑)。
──5月末から全国18カ所のツアーも始まります。最後に一言、抱負をお願いできますか。
又吉 今回は、エレクトリック編成とはかなり趣が違う小さな会場でも演奏しますので。普段のスペアザとは異なる雰囲気も楽しんでもらえるはず。僕らもアコースティックの響きを生かしつつ、「Telepathy」というアルバムをダイナミックに表現しようと思うので。
芹澤 皆さん、歌って踊って楽しんでください。
宮原 ははは(笑)。俺たち、歌詞はないけどな!
芹澤 心で歌うって意味です(笑)。
宮原 でも真面目な話、ライブハウスではかなり“踊れる仕様“のサウンド作りにしようと、目論んでますので。皆さん、ぜひ遊びに来てほしいです!
- SPECIAL OTHERS ACOUSTIC
「Telepathy」 - 2018年5月16日発売 / SPEEDSTAR RECORDS
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初回限定盤 [CD+DVD]
3780円 / VIZL-1367 -
通常盤 [CD]
3024円 / VICL-64989
- CD収録曲
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- WOLF
- Wayfarer
- STEADY
- IDOL
- My Home Town
- Birdie
- ローゼン
- CP
- Mirage
- Telepathy
- 初回限定盤DVD「ズッコケ4人組のプラハ珍道中」収録内容
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- 「STEADY」ミュージックビデオ
- 「WOLF」ミュージックビデオ
- 密着ドキュメント
- SPECIAL OTHERS ACOUSTIC
2nd ALBUM「Telepathy」Release Tour 2018 -
- 2018年5月26日(土)
- 新潟県 りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館・能楽堂
- 2018年5月27日(日)
- 長野県 北野文芸座
- 2018年6月1日(金)
- 長崎県 長崎県美術館 エントランスロビー
- 2018年6月2日(土)
- 福岡県 電気ビルみらいホール
- 2018年6月7日(木)
- 宮城県 darwin
- 2018年6月9日(土)
- 山形県 山形県郷土館「文翔館」
- 2018年6月10日(日)
- 群馬県 ながめ余興場
- 2018年6月16日(土)
- 山口県 周南RISING HALL
- 2018年6月17日(日)
- 岡山県 YEBISU YA PRO
- 2018年6月22日(金)
- 北海道 cube garden
- 2018年6月23日(土)
- 北海道 CASINO DRIVE
- 2018年6月30日(土)
- 沖縄県 ガンガラーの谷 ケイブカフェ
- 2018年7月7日(土)
- 愛知県 THE BOTTOM LINE
- 2018年7月8日(日)
- 静岡県 LiveHouse 浜松 窓枠
- 2018年7月11日(水)
- 東京都 LIQUIDROOM
- 2018年7月15日(日)
- 大阪府 服部緑地野外音楽堂(※追加公演)
- 2018年7月16日(月・祝)
- 滋賀県 サケデリック・スペース酒游舘
- 2018年8月25日(土)
- 東京都 上野恩賜公園野外ステージ(※追加公演)
- SPECIAL OTHERS(スペシャルアザース)
- 1995年、高校の同級生だった宮原“TOYIN”良太(Dr)、又吉“SEGUN”優也(B)、柳下“DAYO”武史(G)、芹澤“REMI”優真(Key)の4人で結成。2000年から本格的に活動を始め、2004年8月に1stミニアルバム「BEN」をリリース。2005年6月の2ndミニアルバム「UNCLE JOHN」発表後には「FUJI ROCK FESTIVAL '05」に出演し、大きな注目を集める。2006年6月にミニアルバム「IDOL」でメジャーデビューを果たす。2011年11月にさまざまなアーティストと共演したコラボ作品集「SPECIAL OTHERS」を発表し、2013年6月には初の東京・日本武道館公演を成功させた。2014年10月に、メンバー4人がアコースティック楽器で演奏する新プロジェクト「SPECIAL OTHERS ACOUSTIC」名義での“デビュー”アルバム「LIGHT」をリリース。2017年3月にデビュー10周年を飾るコラボアルバム第2弾「SPECIAL OTHERS II」を発表した。2018年5月にSPECIAL OTHERS ACOUSTIC名義でのニューアルバム「Telepathy」をリリース。