大阪出身の4ピースバンド・SPARK!!SOUND!!SHOW!!が2ndアルバム「NU BLACK」を9月18日にリリースした。
パンク、メロコア、ヒップホップ、R&Bなどを貪欲に取り込んだ雑食性のサウンド、フロアを熱狂の渦に巻き込むライブパフォーマンスによって急速に知名度を上げているスサシ。ライブ会場限定シングル「SCAR」「感電」を含む2ndフルアルバムには、活性化したメンバー同士の化学反応やバンドの個性が濃密に反映されている。
音楽ナタリーではメンバーのタナカユーキ(Vo, G)、チヨ(B, Cho)、タクマ(Syn, G)、イチロー(Dr, Cho)にインタビュー。10周年を迎えるバンドのキャリアを振り返りながら、新作「NU BLACK」について語ってもらった。
取材・文 / 森朋之 撮影 / tAiki
メンバーのやりたいことがバラバラだった
──ニューアルバム「NU BLACK」は、スサシの音楽的な個性、ライブの高揚感がリアルに伝わる作品だと思います。メロコア、ヒップホップ、テクノなどさまざまな要素が混ざっていますが、個人的にはハードコアパンクのテイストが入っているのがいいなと。
チヨ(B, Cho) ハードコアパンクって、どのあたりですか?
──GAUZE、G.I.S.M.に代表される日本のハードコアですね。
タナカユーキ(Vo, G) いいですね。僕らそういう音楽も聴いていたので。
──もともとはユーキさん、チヨさんを中心にスタートしたバンドなんですよね?
チヨ オリジナルメンバーは僕とユーキですね。僕が高1のときにユーキが高3で、僕はユーキがやってたバンドのライブを客として観ていたんです。そのバンドのメンバーが抜けたときに誘われて、一緒にやるようになって。
──初期のスサシは、どんな感じだったんですか?
ユーキ さっき挙げてくれたハードコアのバンドに影響を受けたバンドを聴いたりしてたので、自分もそういう感じでやってみたくて。
チヨ 速くてうるさいヤツですね(笑)。
ユーキ メロディやサビがない音楽をやりたかったんですよ。今回のアルバムに入ってる「スサシのマーチ」はその頃に作った曲なんです。
──ハードコア直系ですよね、「スサシのマーチ」は。
チヨ そうですね(笑)。その頃に出演してたライブハウスも、ハードコアのバンドがたくさん出ていて。
タクマ(Syn, G) 「火影-HOKAGE-」ってライブハウス。そこでユーキが働いてたんですよ。
ユーキ イベント制作もやってたから、その頃タクマが所属していたエレクトロユニットにも出てもらって。
タクマ エレクトロが好きだったわけじゃないんですけどね(笑)。その前はギターがギャンギャン鳴っているようなバンドで演奏していたんですけど、The 1975やPeach Pitを聴くようになって、ああいう感じもええなと。
ユーキ イチローも別のバンドにいたんです。J-POPとファンクが混ざった曲をパンキッシュにプレイするような感じだったんですけど、やっぱり対バンで知り合って。
イチロー(Dr, Cho) その頃のバンドはメンバーのやりたいことがバラバラだったんですよ(笑)。
──イチローさんから見て、当時のスサシはどんな印象だったんですか?
イチロー うるさい人たちですね。初めて会ったのが早稲田のライブハウスだったんですけど、「こういう人らとは仲良くならんでいいか」と思うくらい騒いでいて。
チヨ えらい言われようやな(笑)。最近、一番暴れてるのは彼ですけどね。
イチロー いつの間にかそうなってました。
──打ち上げも盛り上がるバンドなんですね。
チヨ メロコア、ハードコア畑でやってたから、「打ち上げは飲んでナンボ」みたいな環境で育ってるんですよ。ENTHとか、仲のいいバンドと一緒になると、どんちゃん騒ぎになりますね。
ユーキ 地方の悪しき風習やな(笑)。
踊れるクラブと熱いライブハウスのいいとこ取り
──2016年にイチローさん、2017年にタクマさんが加入して、この4人がそろったことで、活動も軌道に乗ってきた?
ユーキ それはめちゃめちゃありますね。タクマが入る前はイチローのイジり方がいまいちわからなかったんですよ。
チヨ クールで気難しいタイプやと思ってて(笑)。でも、タクマが入ってきて「こいつはイジってやったほうがいい」って感じになって、そこからもっと仲良くなりましたね。音楽的なところもタクマがまとめてくれるようになって、すべてがうまくいくようになりました。
──音楽的にはどういう方向を目指しているバンドなんですか?
ユーキ パンク、ハードコア、メタルも聴いてましたけど、レゲエやヒップホップも好きになって。そういう音楽を聴ける場所って、ライブハウスじゃなくてクラブなんですよね。1人でクラブに行ってるうちにベースミュージックなんかも聴き始めて、そういう音楽も楽しみつつ、でもライブハウスの熱さも好きだから「両方ともやりたい」と思って始めたのがスサシなんですよ。誰かがそういうバンドをやってたら、そのライブを観て満たされていたと思うんだけど、なかったから「だったら自分でやろう」っていう。今は自分のライブで踊りまくって満たされてますね(笑)。
──その方向性は、メンバーとも共有していた?
ユーキ 言葉では伝えてないかも。最初の頃は、完全に自分だけで曲を作ってたんですよ。ただデモ音源とかは作れなくて、スタジオに行って、口で説明して。
チヨ 「ドラムは“ドッパドッパ”やから」って(笑)。アナログ人間なんですよ。
ユーキ ギターで弾き語りして、それに合わせてドラムを叩いてもらって。「これを土台にして、こういうシンセ入れて」みたいな感じで作ってました。今はタクマが曲をまとめてくれてるし、タクマのほうから曲を持ってきてくれることもあって。ディスカッションしながら作ってますね。
タクマ 前は曲がけっこう散らかってたから(笑)、それを整理する感じですね。自分はスサシのよさもわかってるし、「こうしたほうが客もアガれる」みたいな想像もしながら。
チヨ すべての作業が早くなりましたね。
ユーキ メンバー同士のコミュニケーションの時間も増えたんですよ。1stアルバム「火花音楽匯演」(2018年6月発売)は自分がフル監修した曲がメインだったんですけど、今回はメンバーともしっかり話しながら作れた感じがあって。
チヨ 方向性も定まってきましたね。ライブのセットリストもユーキとタクマが中心になって決めてるんですけど、今回のアルバムは「ライブでこういう曲があったらいい」というものも入っていて。
タクマ うるさい曲が増えてますね。今のライブの感じに近いというか。
チヨ 確かに。ここ1年くらい、初期のハードコアな感じに戻っているところがあって。激しさ、バイオレンス、衝動みたいな部分が強くなってるし、10年目にして原点回帰しているのかも。
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本物の暴走族と一緒に