2年ほど未来を前借りした気持ちでユニバースへ
──昨夜のユニバースのワンマンを観たナタリーの編集部の方が「余裕すら感じるほど、堂々としたパフォーマンスだった」と言っていました。
祐 そう! 今、スパンコールのライブは最高なんですよ。
メンバー一同 ウェーイ!
──メンバーの皆さん的に、昨日のライブはどうでした?
メンバー一同 超楽しかったです!
深田 お客さんも「今までで一番楽しかった」と言ってくれる人が多かったです。
天野 歌っている最中にフロアを見たら、泣いている人もいて。「そんなに感動してくれるの!?」とびっくりしました。
──初めての生バンドライブだったんですよね。
祐 はい。その試みについてはわりと直前に思い浮かんだんです。そもそも、この時期にワンマンをする予定ではなくて。僕らにとって、ユニバースでワンマンをやることは1つの憧れだった。「キャパが大きい会場だし、まだ先の目標だけど、いつか絶対に叶えよう」と言っていたんです。そんな中、ユニバースが入っている味園ビルが年内で閉鎖されるというニュースを目にして。とりあえず、すぐに電話したんですよ。それで空いていたのが今回の開催日の8月25日だったんです。ただ……僕たちがユニバースなんて、ましてや東京以外でワンマンをしたことすらなかったですし。
天野 今回が初めてです。
祐 大阪の遠征だって、数えられるぐらいしか経験がなかったし、大阪での一発目のワンマンをユニバースでやるのはいろいろと段階を飛ばしている気がして、正直葛藤もありました。僕としては、無理してキャパの大きい場所でワンマンをすることに肯定的じゃないんです。だけど「挑戦せずにユニバースがなくなってしまうのなら、絶対にやりたい」と思って会場を押さえたのが今回のワンマン開催のきっかけでした。
深田 突然、スケジュールに「味園ユニバース ワンマン(仮)」と書いてあってびっくりしました。
祐 本当は2、3年後にたどり着くであろう場所として、見据えていたんですよ。あのキャバレーの雰囲気に合った生演奏とか、白いダンスフロアを生かしたステージ作りとか、そういうコンセプトありきのライブをやりたいと前から考えていて。2年ほど未来を前借りした気持ちで、今回やらせてもらいました。
藤 初めての大阪ワンマンだったし、生演奏も初めてで。今回は初挑戦がめっちゃ多かった。そんな中、バックバンドの方も本当に急遽決まったんですよね。
祐 最初は「ダンサーをつけようぜ」と言っていたんですけど、ダンスに関して僕は本当に何もわからないから、振付の先生にふわっと「本番まで1カ月ですけど、大丈夫ですよね?」と聞いたら、半ギレされました。
天野 怒られているのを目の前で見てました(笑)。
祐 「何言ってんの! 半年は必要だよ!」と言われて。とはいえ、安易にバンドセットにはしたくなかったんですね。普段はオケを使ってライブをしているアイドルの方が、ワンマンでバックバンドをつけてパフォーマンスしているのを観たときに、メンバーがバックバンドに気を使っていて、その一方でバンドの人たちは楽器陣だけで楽しんでいて「僕は何を観に来たのかな?」と思ったことがあるんです。つまりワンマンなのに、ワンマンじゃないんですよ。ステージに2組がずっといる感じ。スパンコールのお客さんは「バンドと一緒にやってくれ」とずっと言ってくれていたんですけど、バンドとの関係性もそうだし、メンバーが気を使わずにステージ上で堂々としていられる関係値をちゃんと作る必要がある。音楽的な知識もちゃんと身に付けてもらって、メンバーが本当に楽しんでくれる形になってからバンドを取り入れたいな、と思っていたんです。けど……ダンサーさんにNGが出てしまったので(笑)。
メンバー一同 あははは!
祐 そうは言っても、バンドも本番まで1カ月はキツい。決断するのに時間がかかって、結果、開催の2週間前に生バンドでやることを決めたという。
睦月 しかも、スパンコールの曲はめっちゃ難しいんですよ。
祐 そう。僕が言うのもなんなんですけど、うちの曲を演奏するのはかなり難しいんです。バンドメンバーも「難しい」と言っていたよね。
藤 みんな言ってました。
祐 でも、結果的にバンドでやって正解だったね。メンバーの選定に関しては、人気のあるバンドの方とかじゃなくて、普段は社会人のバンドサークルとかでセッションをしているような人たちを中心にして組みました。名前は知られてないんだけど、演奏が超絶うまくて「ちょっとこれを弾いてくれない?」と言ったらめちゃくちゃ弾ける、みたいな。とんでもなく技巧派な方々で、あとは見た目がダンディな人を選びました。
藤 本当にダンディな4人でした。
祐 あとはうちのアレンジとマニピュレーターを担当しているうちのギタリストに、当日はギターを弾いてもらって。
藤 いつもはPA席にいるのに、今回は後ろにいて不思議な感じでした。
ライブはトラブルが起きたほうがいい
──生演奏のライブだと、バンドメンバーと呼吸を合わせてパフォーマンスをする必要があったと思いますが、本番の手応えはどうでしたか?
メンバー一同 へへへへ。
──なんですか、その反応は(笑)。
祐 噛み合わせは悪かったよね。
メンバー一同 はははは!
祐 でも、その噛み合わせの悪さが面白くて。音のトラブルが起きたときに、メンバーがちゃんとエンタメに昇華してくれたんです。1stアルバムを出した頃だったら、あんなにうまく立ち回れていないよね。
藤 後半のいいところで音が止まってね。
天野 しかも2回。
祐 スパンコールの楽曲は楽器がいっぱい入っているから、生バンドだけだと音がスカスカになっちゃうんですね。だから同期が必要で、全体を通してクリックが流れているんですけど、途中でそれが止まったんですよ。そしていきなり、全然違う楽器の音が後ろから流れてきて。
藤・深田 それが怖かったんですよ!
祐 演奏してる側からしたら、もうヒヤヒヤですよ。止めれないので、進めるしかない。
藤 でも、そこでバックバンドのYOU'RE MY☆スターズのみんなとの距離が縮まった気がしてうれしかったです。
睦月 後半から一気に団結力が高まったよね。トラブルでさえも楽しかったから、生バンドって面白いなと思いました。
深田 特典会でお客さんに「今日はどこがよかった?」と聞いたら「音が止まったところ」と言われました。「それはもともと用意していた演出じゃないから!」って(笑)。
祐 音が止まったとき、藤がギターの人を詰めに行ったんですよ。
藤 新曲「UNIVERSE」の最中だったので、「どうなの? 宇宙に行くの? 行かないの?」と聞いたら「……行きそうです」って。
祐 藤の質問に対して、回答が冴えなかったんだよね。
一同 あはははは!
藤 あそこが一番盛り上がったかもしれない。お客さんが楽しんでくれているのもうれしくて。もちろん音が止まらないにこしたことはないけど、結果楽しかったからよかったです。
祐 ライブはトラブルが起きたほうがいい。その瞬間に火事場の馬鹿力が出るというか。
睦月 そういうときのナオさんがすごいんです!
天野 キレッキレ。
深田 (藤の)顔を見て「これは大丈夫だ!」と思っちゃった。
祐 トラブルが起きたら「ご馳走がキター!」って顔をするんです。最高。
藤 ははは。何年か前だったらあわあわしていただろうけど、今は「止まったー! イエーイ」ってむしろ燃える。
祐 2回目に音が止まったときなんて、吉本新喜劇みたいに全員がズッコケてさ。それを見て、本当に感動したんだよ。打ち合わせをしていないのに、ちゃんとみんなが同じ動きをしていたから。
天野 反射的にみんなでズコー!ってなりました。
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立ち止まる気持ちが一切ない