スパンコールグッドタイムズ特集|導かれるようにたどり着いた「キネマとユニバース」

「Vintage City Rock」をテーマに情緒的なリリックとアーバンな楽曲を届けつつ、どこかコミカルな要素も含んだライブパフォーマンスで観客を魅了する4人組アイドルグループ・スパンコールグッドタイムズ。彼女たちはこの夏、かねてからあこがれていたライブハウス、大阪・ユニバースで初の生バンドライブを実現させた(参照:スパンコールグッドタイムズ、味園ユニバースで熱狂の生バンドショー)。

「キネマとユニバース」と銘打ったこの公演は、ユニバースと同じくかつてキャバレーだった歴史を持つ東京・東京キネマ倶楽部を舞台に9月24日にも開催される。そして、この2公演に合わせて「スパンコール&チップス ~愛のユニバース味~」「スパンコール&チップス ~愛のキネマ味~」という2枚のミニアルバムが誕生。スパンコールグッドタイムズは今、ライブ活動と音楽制作の両軸で充実の時を過ごしている。

音楽ナタリーではユニバース公演の翌日、興奮冷めやらぬ状態のメンバーとプロデューサーのメルクマール祐にインタビュー。ライブで得た手応え、キネマ倶楽部公演への意気込み、2枚のミニアルバムの制作エピソードなどを語ってもらった。

取材・文 / 真貝聡撮影 / 坂本陽

今、いい風が吹いている

──前回音楽ナタリーのインタビューにご登場いただいたのは、去年12月に1stアルバム「SPANCALL NUMBER ~今夜のヒッツ!~」をリリースされたタイミングでした(参照:スパンコールグッドタイムズ 1stアルバム発売記念インタビュー)。そこからの約9カ月間、精力的にライブ活動を展開されてきたと思いますが、振り返ってみていかがですか?

メンバー一同 9カ月も経ってたんだ!

睦月真尋 あっという間に時間が過ぎた感じがします。

メルクマール祐 今日までずっと駆け抜けてきたもんね。

藤ナオ リリイベが終わったら次はワンマン、というふうに常に何かに向けて走ってきたから。

天野りこ ずっと途切れてない。

深田百香 何かを発表して、また次に発表して……の連続でした。

スパンコールグッドタイムズ

スパンコールグッドタイムズ

睦月 1stアルバムを出すまではところどころ立ち止まる時期もあったので、そこから9カ月間走り続けられたことは本当によかった。私、前よりも活動が楽しいんです。今年5月に渋谷CLUB QUATTROで開催した結成2周年記念ワンマンとか、昨日のユニバース公演もそう。新しいことにトライする機会が多いからこそ、大変なときもあるけど以前よりもやり甲斐を感じます。

天野 それに関係者の方々も含め、ライブを観てくれているお客さんからのうれしい声が届くようになった。楽しいことがいっぱい続いているなって(笑)。ふふ、素直にうれしい!

 みんなが言うように、僕も今はすごく楽しいですね!

 昨日の大阪から東京へ帰る車内でも、祐さんは5分に1回くらい「楽しかったな!」と言ってましたもんね。「まだ言ってる」と思うぐらい(笑)。

 これまでも必死に活動してきたけど、前と違うのは応援してくれる人が増えて、やりたいことが少しずつ実現できているということ。そして何より皆さんがスパンコールの活動を楽しみにしてくれている。だから……楽しいんですよね。前はあまり相手にされなかったというか、ライブに出ても「もしかしたら数合わせで呼ばれたんじゃない?」と寂しい気持ちになることもあった。「イベントに呼んでくれたのはうれしいけど、スパンコールに全然興味ないじゃん!」みたいな。

天野 うんうん。

 よそのグループが関係者に手厚く対応されているのを見て、「うちはそんな感じではないんだな」と悔しくなるときもあったけど、最近は「スパンコールさんが来るのを楽しみしてました!」と言ってもらえるようになって。わかりやすく風向きが変わったよね。

メンバー一同 そう!

 やりたいことがたくさんあるんですよ。メンバーもそうだと思うし、僕も実現できていないことがいっぱいある。今までだったらできなかったことが、どんどんできるようになっているので、「次はこんなワンマンをしようぜ」とか「こんなアルバムを作ろうぜ」と力がみなぎっている。今、いい風が吹いていて楽しいですね。

メルクマール祐

メルクマール祐

必死に水面下で準備をしてきた

──1stアルバムの頃は、今の状況を予想できていました?

深田 先のことは見えなかったよね。目の前にある壁をなんとか乗り越えようとしてる感じだったから、今のほうが未来が見えています。

天野 昔は楽しさを噛み締めるというよりも、「やらなきゃ、走らなきゃ!」という意識が強かったです。今は未来に明るい景色がいっぱい広がっていますね。

 以前は応援してくださるお客さんも少なくて。ちゃんと力を付けてからライブに挑みたいという気持ちが強かったんです。アルバムを出すことが決まるまでは、ライブの本数も本当に少なかったし。月に4、5本ぐらいだった。

 そんなときもありましたよね。土日もライブが全然ない、みたいな。

睦月 ライブを全然やっていなかった頃は「少ないからこそ、1本1本のライブに集中して臨みなさい」と言われていました。

睦月真尋

睦月真尋

 アイドルはバンドやアーティストと比べて、基本的にライブの本数が多いんです。ただ、それが一概にいいわけでもないと思うんですね。例えば月に10本あるとしたら、3日に1本のペースじゃないですか。3日に1回のライブを全部いいものにしなきゃいけないわけで。本来は1本のライブに対してもっと念入りな準備が必要なはずだし、そう考えると一流のアーティストでもなかなか難しい本数ですよね。数を打って場数を踏んでほしい気持ちもあるけど、それとは反対の矛盾した気持ちもある。実力が伴っていない状態で、そんなに本数を打ってお客さんを呼ぶのはどうなの?と。実力不足のままライブをお届けするくらいなら、本数を制限して決まってるライブをすべていいクオリティにしたい、という考えで数を減らしていました。

 だからこそ緊張感がありました。月に4本ほどしかライブがないから、1本足りともクオリティを下げるわけにはいかない。そこでライブに対する気持ちの作り方を学べた気がします。

 耐える時期だったよね。周りのグループは何十本もライブをやっていて、X(Twitter)に「今日もライブでした!」みたいな投稿が流れてくるわけですよ。そんな中、うちはライブがないからツイートすることもなくなって(笑)。

 あの時代は心苦しかった(笑)。

深田 「どうしよう? 特に報告がないぞ」と。

深田百香

深田百香

 本来は、ライブがあったら絶対にコケちゃいけない。ライブ本数を多くするにしても、メンバーにまずは1本のライブに対しての向き合い方を学んでほしかった。ステージに立つアーティストが質より量を取っちゃったら、もうそれってエンタテインメントではないと思うんですよね。でも時間がないからといってライブは試す場でもないんです。だから僕らは必死に水面下で準備をしてきた。そんな時期を経て「これならどこのイベントでもやっていけるな」という状態になったタイミングで「そろそろアルバムを出して、ワンマンの規模もちゃんと大きくしていこう」と話したんだよね。