ナタリー PowerPush - 渡辺信一郎総監督×KenKen

「スペース☆ダンディ」宇宙的サウンドトラックの作り方

「宇宙最高!」「イエーイ!」

──KenKenさんが監督を知ったのもさっき言っていたプロジェクトがきっかけですか?

KenKen いや、もう昔から監督の作品が大好きで。中1か小6くらいのときに劇場版の「カウボーイビバップ 天国の扉」を観に行ってますし。

渡辺 そのときの中坊がまさか(笑)。

KenKen

KenKen そうなんですよ。だから今、監督の作品っていうテーブルに上げてもらえてる感じがメッチャうれしいし、最初からピーンときたのもそういう理由なんだと思う。で「スペース☆ダンディ」に提供した曲自体、実は中坊っぽいというか、16歳の頃に作った曲を全部レコーディングし直したんですよ。当時やってたバンドが解散しちゃって結局出せなかった曲のストックが20数曲あって。1話目で使っていただいた「朝は来るから すぐ明けるから」も当時の曲を今風にアレンジしたものだし。

──なぜティーンの頃の曲をリアレンジしようと?

KenKen 監督と最初の打ち合わせをした帰りがけにはすでに頭の中で何曲かできてたんですけど、部屋に帰り改めていろいろ考え直してみたら、その曲ってちょっと大人っぽくなりすぎてる気がしたんですよね。今の自分の感じで曲を作ると、思いのほか自分が頭がよくなっちゃってる感じがしちゃって。ちょっと地球っぽかった(笑)。

渡辺 あはははは(笑)。

KenKen これはいかんな、と(笑)。もうなんも考えないで本当に衝動で曲を作らなきゃいけない作品なんだからって。

左から渡辺信一郎、KenKen。

渡辺 宇宙最高!って(笑)。

KenKen イエーイ!って(笑)。「スペース☆ダンディ」の持つファンキーさって、今のオレの持っている感覚よりも、10年前のオレの感覚に近い気がしたんですよ。このアニメの楽しさって、楽器をちょっと弾けるようになりだした頃に感じてたあの楽しさと似てるんだろうなって。実際あの頃作った、何も考えてない、全部ペンタトニック!みたいな感じのリフって今聴いても実はカッコよかったりしますし。

“おっぱい見たら興奮する”オレとの対決

渡辺 決して余ってた曲を出したわけではない、と(笑)。

KenKen 全然そういうことじゃないです(笑)。むしろ超大事にしてたリフ、12年間ずっと「いつ出そうか」って考えてたリフですから。「このリフはここで出すしかない!」って感じの曲なんです。「スペース☆ダンディ」のおかげで世の中に出せたことだし、たぶんこれからこの曲、普通にライブとかでもやりますよ。またアレンジし直して新曲として出す可能性すらある(笑)。

渡辺 知らん顔して(笑)。でも本当にそのくらい素晴らしい曲なんですよね。宇宙感があるし、ファンキーだし。

KenKen

KenKen ただだから気合いは入りましたね。好きな監督の作品に自分の音が乗るっていう意味でもそうだし、過去の自分と勝負するっていう意味でも。元の曲を改めて聴き直してみたらスゲー瞬発力があったし。自分がちゃんと曲に記録されてるんですよ。おっぱい見たら興奮する年齢ならではの多感な感じとか、情熱的な感じが(笑)。それにいかに負けないか、っていうのはテーマでした。

渡辺 昔の自分と対決することってけっこうありますよね。昔書いたものがたまたま出てきて「あっ、おもしれえな」って思ったり。今、これより面白いものを書けているだろうかと思うと……。

KenKen ドーンって迫ってくるものがありますよね。だって「朝は来るから すぐ明けるから」の元になった曲を作った16、17歳の頃って28歳のヤツのことなんか超バカにしてたもん。「オッサンが!」とか超言ってたし(笑)。

渡辺 根拠なくそういうことを言うもんですから、若い頃って。スタジオジブリから仕事のオファーが来て、それを断る、みたいな妄想をしたりとか(笑)。

KenKen そういうことスゲー考えてました! 「レッチリに入らないか?」「いや入んない、入んない」みたいなこととか超考えてた(笑)。

渡辺信一郎

渡辺 だから僕の場合なら、そんなことばっかり妄想してたくせに意外といいもの作ってた自分にだけはバカにされたくない、「歳とってダメになったね」ってコイツにだけは言われたくないって思いますよね。

KenKen そうそう。だから「朝は来るから すぐ明けるから」がスゲーいいところに落ち着いてくれてよかったなって思ってます。昔の自分にちゃんと勝てたし。ただ、劇伴を作るのは今回が初めてだったから、第1話を観たときに「ああ、チャイナシンバルを叩きすぎるとアニメの中の効果音とカブっちゃうんだな」っていうことがよくわかったりとかしてみたりもしていて(笑)。

渡辺 そのくらいでいいんですよ(笑)。クレバーに作られちゃうと、あのファンキーな感じは出ないから。

V.A.「TVアニメーション『スペース☆ダンディ』O.S.T.1 ベストヒット BBP」 / 2014年3月26日発売 / 3240円 / FlyingDog / VTCL-60368
V.A.「TVアニメーション『スペース☆ダンディ』O.S.T.1 ベストヒット BBP」
収録曲 / アーティスト
  1. Star Future. / ☆Taku Takahashi
  2. ビバナミダ(TV size)/ 岡村靖幸
  3. HOT WIND / TUCKER
  4. Fatty but oh so Goody / Mountain Mocha Kilimanjaro
  5. キミトナラ / 川辺ヒロシ
  6. love you,dandy / kensuke ushio(agraph)
  7. 星屑のパイプライン / ジャンク フジヤマ
  8. 哀愁のDANDY / 芳野藤丸
  9. Hey Wha / DOKAKA
  10. コネクト / KenKen
  11. Gun Man Muller Hunt Oh! / ☆Taku Takahashi
  12. アクションマン / 笹沼位吉
  13. SPACE FUN CLUB / ZEN-LA-ROCK feat. ロボ宙
  14. Tumbleweed / Latin Quarter
  15. Dandy in Love / 向井秀徳
  16. 知りたい / 泉まくら×mabanua
  17. New Disco on the Block / ☆Taku Takahashi
  18. The RAW / mito
  19. 朝は来るから すぐ明けるから / KenKen
  20. ANATATO / LUVRAW
  21. SPACE CHANTEY(宇宙舟歌~ただし、船酔い気味の) / 難波弘之
  22. Cosmic Adventure / Mountain Mocha Kilimanjaro
  23. X次元へようこそ(TV size)/ やくしまるえつこ
TVアニメ「スペース☆ダンディ」2014年7月よりシーズン2放送開始
「スペース☆ダンディ」
KenKen(けんけん)

KenKen

1985年東京都生まれ。ロックバンド、RIZE、Dragon Ash、WAGDUG FUTURISTIC UNITY、the day、獄門島一家に参加し、そのカリスマ的な存在感と抜群のベースプレイは、音楽シーンの中で一目置かれている。そのほかベース教則アプリ「KenKenが教えるベースギター #1」をリリースし、資生堂unoのCM音楽を担当するなど、ライブ以外での音楽活動も多く、ゲーマーとして「週刊 ファミ通」で連載コラムページを持つなど、音楽業界のみならず多彩なセンスで幅広く活躍。また2014年1月から放送のアニメ「スペース☆ダンディ」のサウンドトラックに参加し、また3月からはムッシュかまやつと山岸竜之介とのバンド「LIFE IS GROOVE」も始動させている。