ナタリー PowerPush - 渡辺信一郎総監督×KenKen
「スペース☆ダンディ」宇宙的サウンドトラックの作り方
テレビアニメ「スペース☆ダンディ」のオリジナルサウンドトラックアルバム「TVアニメーション『スペース☆ダンディ』O.S.T.1 ベストヒット BBP」がリリースされた。
多彩なアーティストが名を連ね、アニメファンはもちろん音楽ファンの間でも大きな話題を集める「スペース☆ダンディ」。そのサントラ盤にはアニメのオープニングテーマを手がけた岡村靖幸、エンディングテーマを制作したやくしまるえつこと菅野よう子のほか、KenKen、☆Taku Takahashi(m-flo、block.fm)、向井秀徳、川辺ヒロシ(TOKYO No.1 SOUL SET)、ミト(クラムボン)らが提供した23曲が収録されている。
今回ナタリーでは「スペース☆ダンディ」の総監督・渡辺信一郎と、サントラアルバムに「コネクト」「朝は来るから すぐ明けるから」の2曲を提供したKenKenの対談を企画した。ディープな音楽ファンとして知られ、これまでも自身の監督作で気鋭の音楽クリエイターとコラボレートしてきた渡辺と、ディープなアニメファンとしても知られる国内屈指のベーシストは「スペース☆ダンディ」とそのサウンドトラックについて何を語るのか。その言葉にぜひ耳を傾けてみてほしい。
取材・文 / 成松哲 撮影 / 小坂茂雄
1984年以降の音楽スタイルは禁止でお願いします
──監督は「カウボーイビバップ」のときには菅野よう子さんと組んでジャジーな劇伴を作って、「サムライチャンプルー」の劇伴ではTsutchieさんやNujabesさん、四街道ネイチャーといったヒップホップ勢を起用しています。
渡辺信一郎 はい。
──で、音楽プロデューサーとして携わった映画「マインド・ゲーム」では山本精一さんを起用なさっている。この人選って監督の趣味なんですか?
渡辺 いや、もちろんオファーしているアーティストの音楽はもちろん好きだけど、単に自分の趣味に寄せてるわけではなくて、あくまで作品が呼んでいる音を付けているだけなんです。特に自分の原作で自分のアニメを作るときは、だいたい企画を考えている時点で音楽が頭の中で一緒に鳴ってるんですよ。考えて音を付けてるというよりも、最初からその音が鳴ってる感じ。「スペース☆ダンディ」についても今回のサントラのような雰囲気の音が、企画の段階から自分の中にありました。
──このアートワークにも見てとれるように80年代感あふれる音が鳴っていた?
渡辺 そうですね。あとは、昔の人が考えた宇宙、未来みたいなものがテーマの1つになってるんで、音楽も昔の人が宇宙や未来を想像して作ったような曲。「きっと宇宙ってこうなんじゃねえかな?」って妄想を働かせたような音がいいなと。だからアーティストさんによっては「1984年以降の音楽スタイルは禁止でお願いします」ってオファーの仕方をさせていただいてます(笑)。
KenKen あはははは(笑)。
ホントにオムツを履いてるようなテンションの曲
──KenKenさんにもそういうオファーが?
KenKen いや、オレのところには特には……。
渡辺 だってKenKenさんはそんなこと言わなくたって……。
KenKen 確かに最初の打ち合わせのときにアニメのあらかたのストーリーとかキャラのことを教えていただいて、3分くらいのティザームービーを観せていただいたんですけど、なんかもう一瞬でわかっちゃった感じはしてました(笑)。オレに何を求められているのかが。「あーっ! オレの一番得意なやつをやればいいんだ!」って。
渡辺 ファンキーな感じのアニメにもしたかったので、スペース感、宇宙感があってファンキーな音楽っていったらやっぱりP-FUNKとか、ブーツィ・コリンズ的なものだろうっていうことになって。で、そんなのやれる日本人っているかな?って考えたときに「あっ、約1名いた」と。
KenKen ピーンときた(笑)。実際、オレもピーンときたというか、ティザームービーを観せていただいた瞬間思い浮かんだのが、生楽器ファンク。モカキリ(Mountain Mocha Kilimanjaro)が参加することも聞いていたんですけど、オレに求められているのは、彼らのようなガレージファンクとはちょっと違う。ホントにオムツを履いてるようなテンションの曲なんだろうなって。ベースには絶対オートワウがかかってる感じの。
渡辺 そうそう!
──アニメの概要と3分の紹介映像を観ただけで意図がきちんと伝わっちゃう感じってちょっとスゴいですよね。お付き合いは長いんですか?
渡辺 いや、会ったのは今回が初めてですね。でも実は、7~8年前にとあるパチンコ関係のアニメ制作の話があって、そのときにKenKenさんの名前を知ったんですよ。あの頃、まだすごく若かったですよね。
KenKen 20歳ぐらいの頃ですね。
渡辺 で、曲をいくつか聴かせてもらって、すごくいいなと思って。若くて、こんなにファンキーで、しかもすごくうまい人がいるんだなあって。
KenKen ありがとうございます。
渡辺 まあ企画自体がなくなっちゃいましたけど(笑)。
- V.A.「TVアニメーション『スペース☆ダンディ』O.S.T.1 ベストヒット BBP」 / 2014年3月26日発売 / 3240円 / FlyingDog / VTCL-60368
- V.A.「TVアニメーション『スペース☆ダンディ』O.S.T.1 ベストヒット BBP」
収録曲 / アーティスト
- Star Future. / ☆Taku Takahashi
- ビバナミダ(TV size)/ 岡村靖幸
- HOT WIND / TUCKER
- Fatty but oh so Goody / Mountain Mocha Kilimanjaro
- キミトナラ / 川辺ヒロシ
- love you,dandy / kensuke ushio(agraph)
- 星屑のパイプライン / ジャンク フジヤマ
- 哀愁のDANDY / 芳野藤丸
- Hey Wha / DOKAKA
- コネクト / KenKen
- Gun Man Muller Hunt Oh! / ☆Taku Takahashi
- アクションマン / 笹沼位吉
- SPACE FUN CLUB / ZEN-LA-ROCK feat. ロボ宙
- Tumbleweed / Latin Quarter
- Dandy in Love / 向井秀徳
- 知りたい / 泉まくら×mabanua
- New Disco on the Block / ☆Taku Takahashi
- The RAW / mito
- 朝は来るから すぐ明けるから / KenKen
- ANATATO / LUVRAW
- SPACE CHANTEY(宇宙舟歌~ただし、船酔い気味の) / 難波弘之
- Cosmic Adventure / Mountain Mocha Kilimanjaro
- X次元へようこそ(TV size)/ やくしまるえつこ
- TVアニメ「スペース☆ダンディ」2014年7月よりシーズン2放送開始
- 「スペース☆ダンディ」
KenKen(けんけん)
1985年東京都生まれ。ロックバンド、RIZE、Dragon Ash、WAGDUG FUTURISTIC UNITY、the day、獄門島一家に参加し、そのカリスマ的な存在感と抜群のベースプレイは、音楽シーンの中で一目置かれている。そのほかベース教則アプリ「KenKenが教えるベースギター #1」をリリースし、資生堂unoのCM音楽を担当するなど、ライブ以外での音楽活動も多く、ゲーマーとして「週刊 ファミ通」で連載コラムページを持つなど、音楽業界のみならず多彩なセンスで幅広く活躍。また2014年1月から放送のアニメ「スペース☆ダンディ」のサウンドトラックに参加し、また3月からはムッシュかまやつと山岸竜之介とのバンド「LIFE IS GROOVE」も始動させている。