粗品×syudou|第7世代の2人が語るボカロ愛

ユニバーサルミュージック協力のもとレーベル「soshina」を立ち上げ、本格的に音楽活動をスタートさせた霜降り明星の粗品が、第1弾作品「乱数調整のリバースシンデレラ feat. 彩宮すう(CV:竹達彩奈)」をリリースした。

2歳からピアノを習い始め、かつては指揮者を目指したことがあるほど音楽に造詣が深い粗品。今年1月には自身のYouTube公式チャンネルで発表してきたボカロ曲計8作品を配信リリースするなど、その才能が多方面から注目されている。

音楽ナタリーでは粗品と、Adoへ提供した「うっせぇわ」が話題のボカロP・syudouの対談をセッティング。お笑い界、ボカロ界それぞれで“第7世代”に属する2人が初対面し、互いの音楽観やボーカロイド愛を探る。なお芸人をリスペクトしているというsyudouは、粗品および霜降り明星、ひいては深夜ラジオに対する熱い思いを前書きにしたためた自作の「粗品様楽曲考察資料」を自らプリンターで印刷し持参。インタビューからその熱量も感じ取ってほしい。

取材 / 倉嶌孝彦 文 / 鈴木身和 撮影 / 岩澤高雄

なぜ僕なのか

syudou 最初のつかみは重要だろうと考えて、今までに出た粗品さんの楽曲を僕なりに分析した資料を作ってきました。

粗品 ええー! なんすかこれ!!

syudouが自作した「粗品様楽曲考察資料」の表紙。

syudou 10ページくらいあります。

粗品 表紙ダサいなあ、俺の宣材写真(笑)。

syudou そこは勘弁してください(笑)。初対面なので僕の自己紹介ということで。

粗品 でも「霜降り明星のだましうち!」(ABCラジオで放送中のレギュラーラジオ番組)を聴いていただいてますよね?

syudou はい。僕は粗品さんをリスペクトしているので、ラジオは仕事とは一切関係なく聴いています。

粗品 すごいな! これはあとでじっくり読ませていただきます。すんません、ありがとうございます。

syudou これをお渡しできたので、今日やりたいことはだいぶ達成しました(笑)。

──今回粗品さん自身が取材の対談相手にsyudouさんをご指名されたということですが、数いるボカロPの中からsyudouさんを選んだ理由はなんだったんですか?

syudou それですよ! なぜ僕なのか。

粗品 理由はいろいろあるんですけど、やっぱり今一番すごい方だからということですかね。言ったらミーハーすぎるかなと思いつつ、やっぱり「うっせぇわ」がエグいですよね。しかも僕が勝手に“借金替え歌”というものをさせてもらいまして。ごめんなさい、あんな素晴らしい作品を勝手に。

syudou いやー、血湧き肉躍りました!

粗品 Twitter上で替え歌に反応していただいたとき、霜降り明星のだいぶ深いファンじゃないと知らないような単語が出てきたので、びっくりしてうれしくて。

syudou お米ですよね(「水曜日のダウンタウン」2019年2月6日放送回「ロケ中にタレントを撒くことなど容易説」第2弾で霜降り明星が仕掛けられたドッキリの関連ワード)。

粗品 あれがめっちゃうれしくて。対談というとおこがましいですけど、お話ししてみたいなと思いました。

syudou よかったー! イチかバチかだったんですよ。「ファンかよ。きっしょ」って離れちゃう方もいるかもしれないじゃないですか。

粗品 全然です!

syudou 粗品さんが「うっせぇわ」の替え歌を投稿してくれたとき、これはある種の大喜利が来たと思ったんです。上から行くのも違うし、ファン感を出しすぎるのも違うし、これに対してどう反応したらいいんだと考えたときに、ほかの人が見てもよくわからない、でも本人と一部の詳しい人だけ喜んでくれるものさえ出せればという気持ちでツイートして、それが今日につながったんです……!

粗品 そんなに思っていただいて(笑)。ありがとうございます。

爆跳ね「うっせぇわ」1億回再生

粗品 僕からも聞きたいことが山ほどあるんですよ。いちファンとしてなんですけど、「うっせぇわ」が今すごいことになってるじゃないですか。それについてどう思っていますか?

syudou まず、とにかくうれしいです。僕は大学を卒業して就職して、普通に生活する中でボーカロイドを日常と寄り添える音楽の形としてずっとやってきて。去年ようやく会社を辞めて、その年に出した「うっせぇわ」が跳ねたので、どんな形でも評価されるのはうれしいです。そもそも会社員だったので、自分のことを音楽家だなんてとても思えなかったですし。それが「曲を作ったsyudou」と言われるようになって、音楽の人だと見られている事実があまりにうれしくて。

粗品

粗品 とんでもない曲ですよね。

syudou ありがとうございます。あれはAdoさんの歌声があってこそなので。

粗品 Adoさんにはどういう経緯で楽曲提供することになったんですか?

syudou 実はまだAdoさんとは会ったことがなくて。

粗品 そうなんですか! お二人とも顔出しされてないですもんね。こんなに男前やのに。

syudou やめてくださいよー! 信じちゃいますよー。

粗品 なんでお顔出さないんですか?

syudou 一番はお客さんとの関係性ですね。会社も辞めたので顔を出す出さないはぶっちゃけどっちでもいいんですけど、ライブに来た人だけ顔が見れるとか、顔が見れることへの特別感を大事にしていて。それを易々とメディアに出すことで、観に来てくれるお客さんとの信頼関係が崩れちゃうことを気にしているんです。だからといって一生顔出ししないとは思っていなくて。僕みたいなのが生意気な話ですけど、お客さんとちゃんと信頼関係が築けたときに満を持して出せたらいいなと思っています。

粗品 すごいなあ。「うっせぇわ」は、こんな曲が作りたいってどっちが言い出したんですか?

syudou あれはAdoさんから仕事の依頼を受けた形です。僕が2018年の頭に「邪魔」という曲を発表して、この曲を2019年にAdoさんが歌ってくれたんですけど、そのカバーが人気になってTikTokでも跳ねて。この曲って俺の恨みつらみだけを書いたけっこう酷い曲なんですよ(笑)。それに共感する女子高生がいるというだけで当時はとんでもないことだったんですけど、声もすごいですし、なんだこれは!?って記憶に残っていたんです。その後、Adoさんがデビューするタイミングで真っ先に仕事を振ってくださって、「あの子だ! これは引き受けよう」と。

粗品 その「うっせぇわ」が爆跳ねして……すごいっすね。お互いにシンデレラストーリーというか。もうすぐYouTubeの再生回数1億いきますよ。1億ってすごないですか!?(※取材は3月上旬に実施)

syudou いやあ、考えられないですね。自分のボーカロイド曲が去年1000万回いって、だいぶ達成感があったんですけど、1億って人生単位であるかないかですよね。