SOMETIME'S |さまざまな縁の中で生まれた、バラエティに富んだメジャー1stアルバム

やっぱり曲のクオリティが一番

──収録曲についても詳しく聞かせてください。まず1曲目の「Signal」。スピード感のあるサウンドと「僕たちを阻むSignalはもういらない」というラインが、アルバムのオープニングにピッタリだなと。

TAKKI 「Signal」のサウンドは1980年代のイメージですね。打ち込みの音もモダンではなく、あえて古い質感にして。完成した瞬間、これがアルバムの1曲目だなと思いました。

SOTA(Vo)

SOTA アレンジャーの藤田も「1曲目だと思って、こういうアレンジにした」と言ってたはずです。作曲の時点では単に「アッパーな曲にしよう」と思ってただけなんですけど、藤田がBPMを上げて、アレンジも大きく変えて。最初は「こういう案もあるよ」という極端なアイデアなのかなと思ってたんですけど、そのまま形になりました。メロディに関しては、ファルセットを意識していて。この頃は「裏声でどこまでいけるか、やってみよう」みたいなモードだったんですよ。

TAKKI ギターもこだわってますね。自分のギターの師匠にジェームス・タイラー(1980年代、LAのスタジオミュージシャンに支持されたギター)をお借りしたんですけど、まさに本物のサウンドという音になっていて。個人的にも気に入ってます。

──“止まらず突き進む”という意思を反映した歌詞も印象的でした。

TAKKI あえて古めかしい言葉を使ってるんですよ。ちょっとダサい英語だったり、言葉遊びが多めで。ストーリーというより情景描写を重視していて、書いていて楽しかったです。

──先行配信された「My Love」は、SOMETIME'Sのポップな側面がしっかり前に出た曲ですね。

SOTA アルバム制作の後半くらいでデモ音源が10曲くらいあって。中でも「My Love」はかなりキャッチーで、「先にこの曲を走らせよう」ということになったんです。デモの段階ではずっと「My Love~」と歌ってるだけだったんですけど(笑)、あとはTAKKIにお任せして。

TAKKI しっかりギターで聴かせるファンクナンバーがなかったので、それをやってみようと。ベース、ドラム、ギターのグルーヴをしっかり出せたし、満足してますね。もっとシンセを積む予定だったんですけど、ベースのフレーズがよかったから「これを押し出したほうがいいね」という判断で。

──TAKKIさんのギターと同じくらいベースが目立ってますよね。

TAKKI そうですね。そこは音楽としてよくなるほうを選んだというか。やっぱり曲のクオリティが一番ですからね。

第3のメンバー・藤田道哉から見たSOMETIME'S

──そして4曲目の「KAGERO」は、叙情的なメロディを軸にしたバラードです。こういうテイストの楽曲も、SOMETIME'Sの武器ですよね。

SOTA はい、自分たちの中でもバラードはけっこう得意だと思っていて。「KAGERO」はもうちょっとアップテンポのポップスだったんですけど、エンジニアの西陽仁さんにアレンジにも関わってもらったんです。曲を詰めていく中でテンポを落とし、キーも下げて、今の形になりました。歌詞もかなり「あーでもない、こーでもない」を繰り返して。

TAKKI バラードなので歌詞が大事ということで。ストーリーも必要だし、パワーワードというか、キャッチーな言葉も意識して。大幅な変更が3回、ストーリーが決まってから2回直したりしてかなり大変でした(笑)。ラブソングに聞こえるように書いたんですけど、実は親に対する思いも込めていて。聴く人によって、親、元カレ、元カノ、今付き合ってる人だったり、思い浮かべる相手は違うと思います。

──日本語のフレーズが多くても、しっかりグルーヴが感じられるのも特徴的ですよね。

TAKKI それは僕も発見でしたね。日本語を中心にして、いかにSOTAのフロウを生かすかを考えてたんですけど、ちゃんとSOMETIME'Sらしくなったので。

SOTA しっかり歌が聴こえる曲なので、もちろんボーカルも大事で。いい形に着地できてよかったです。

──アコギと歌を軸にしたアコースティックなナンバー「迎火」は、2人だけで録ったんですか?

SOTA ギターと歌はそうで、ウクレレは弾いてもらいました。

TAKKI(G)

TAKKI 最初、レーベルヘッドが僕に「ウクレレ弾いたら?」とムチャぶりしてきたんですよ。めちゃくちゃ練習して、いざレコーディングに臨んだらエンジニアの西さんが「ウクレレ弾く人、呼べますよ」って、乾修一郎さんという方にその場で連絡してくれたんです。結局、僕はギターを弾いて、ウクレレは乾さんに演奏してもらって(笑)。

SOTA ハハハハ。

TAKKI 結果、よかったですよ。僕みたいな素人がウクレレを弾くよりも、専門の方にやってもらったほうがいいので。

SOTA そうだね(笑)。レコーディングは一発録りだったんですけど、それも楽しかったです。

──後半の「HIPHOPMAN」もアルバムの聴きどころだと思います。このビート、めちゃくちゃカッコいいですね。

SOTA 作曲のクレジットに僕と藤田の名前があるんですけど、もとのアイデアは藤田なんですよ。第3のメンバーと言っていい存在だし、彼の目から見たSOMETIME'Sを表現した曲だなと。シンセとサンプリングが軸になってるんですが、藤田にこういうスタイルの曲を作らせるとさすがですね。あとレコーディングにはLUCKY TAPESの田口恵人(B)、高橋健介(G)が参加してくれて。TAKKIがほかのギタリストと一緒にレコーディングするのも初めてだったし、いろんな試みが詰まってます。

TAKKI 健介が客演してくれるのも楽しみだったし、意見交換しながら録音できたのも新鮮で面白くて。歌詞に関しては、とにかくSOTAのフロウを生かしたかったんです。いろんな英語のセンテンスを調べて、ヒップホップのスラングをかなり使ったから、タイトルも「HIPHOPMAN」かなって(笑)。

自分たちのことを書いた「You and I」

──「Don't know why」は完全にレゲエですね。

TAKKI ちゃんとレゲエになりました。2人とも全然レゲエは通ってないんですけどね(笑)。

SOTA うん、BGMとして聴いていたくらい。この曲、最初はまったくレゲエじゃなかったんですよ。

TAKKI 藤田が「レゲエにしたらどうですか?」って突拍子もないことを言い出して。

SOTA サポートメンバーもほとんどやったことがなかったし「大丈夫かな」と思ってたんだけど、やってみたらいい感じになって。これはもう、バンドの能力の高さのおかげですね。

TAKKI レゲエは音楽的なフォーマットくらいしか知らなかったんだけど、やってみたら本当によくて。特にオルガンが入ったことで、しっかり形になった実感がありますね。

SOTA  SOMETIME'Sはアレンジャー、サポートミュージシャンを含めて「とりあえずやってみよう」という姿勢なんですよ。ダメだったらダメで、そのときに考えればいいっていう。「Don't know why」はそれがいい方向に出ましたね。

──アルバムの最後は「You and I」で締めくくられます。これは歌詞が素晴らしいなと。

TAKKI ありがとうございます。「You and I」は最後にレコーディングした曲で。歌詞も最後に書いたんですけど、「ラブソングにも飽きたし、どうしようかな」とひとしきり悩んだあとに、しっかり自分たちのことを書こうと思って。決めたあとはスラスラ書けたというか、筆が止まることはなかったですね。

──自分とSOTAさんの関係性をまっすぐに描こう、と。

TAKKI 2人の関係というより、僕のことですね。自分の気持ちを書いたところが大きいと思います。

SOTA 歌詞の最終版を読んだときは、グッときましたね。「すごくいいです」とLINEで送りました。

TAKKI そうだね(笑)。

SOTA 歌のアプローチとしては、かなり落ち着いたトーンになってて。サビのメロディも低いし、コーラスをダブラー(元音に対して2つの音が鳴っているように聴こえるようにするエフェクター)を使ったり、これまでとは違った表現ができたかなと。

──レゲエの要素を取り入れた「Don't know why」もそうですけど、1stアルバムでいろんな楽曲を提示したことでさらに表現の幅が広がりそうですね。

SOTA そうしたいと思ってます。ただ、やりたいことがどんどん増えて「やりたいけどやれない」となるのはイヤなので、スキルアップしていかないと。

TAKKI うん。いざやるとなれば人に聴かせられるクオリティに持っていきたいくて。スキルアップは絶対に必要ですね。

SOMETIME'S

ライブ情報

SOMETIME'S Presents "ANYTIME"
  • 2021年9月14日(火)東京都 TOKIO TOKYO <出演者> SOMETIME'S / SPENSR / EMPTYKRAFT
SOMETIME'S CIRCLE & CIRCUS Release Tour 2021
  • 2021年10月15日(金)大阪府 ROCKTOWN
  • 2021年10月30日(土)東京都 WWW
SOMETIME'S(サムタイムス)
SOMETIME'S
2017年にSOTA(Vo)とTAKKI(G)の2人で結成された音楽ユニット。“夢を叶えるために毎日がんばっているなら、その夢かが「いつか」叶うようにという思いと「時々」休んでほしい”という思いからSOMETIME'Sと名付けられた。Apple Music「ブレイキング:J-Pop」、Spotify「Early Noise Japan」をはじめとしたプレイリスト入りを果たし、AWAでは新人ながらも“AWA 急上昇楽曲 No.1”、音楽認識アプリ「SHAZAM」では「Discovery チャート」にて1位を獲得した。2021年5月にはポニーキャニオン内のレーベル・IRORI Recordsから新作音源「Slow Dance EP」を発表。8月にはメジャー1stアルバム「CIRCLE & CIRCUS」をリリースした。