SOMETIME'S|新作音源「Slow Dance EP」で鳴らす、2人だからこそ紡げる音楽

SOMETIME'Sが5月26日にポニーキャニオン内のレーベル・IRORI Recordsから新作音源「Slow Dance EP」をリリースした。

SOMETIME'Sは、SOTA(Vo)とTAKKI(G)の2人によって2017年に結成された音楽ユニット。ブラックミュージックをルーツにしたバンドサウンドに、王道のポップス要素を融合させてJ-POPのフォーマットへ落とし込んだ親しみやすい楽曲がサブスクリプションサービスを中心に話題となっている。「Slow Dance EP」には、SOMETIME'Sにとって最初のオリジナルソング「Slow Dance」、ライブの定番曲「Raindrop」「シンデレラストーリー」、2月に配信リリースされたバラードナンバー「HORIZON」など全6曲が収録されている。

音楽ナタリー初登場となる今回は、以前は別々のバンドで活動していたという彼らが歩んできた音楽生活を振り返りながら、「Slow Dance EP」の制作背景について語ってもらった。

取材・文 / 倉嶌孝彦 撮影 / 斎藤大嗣

顔見知りの同級生と大人になって再会

──音楽ナタリー初登場ということもあり、まずはSOMETIME'S結成の経緯から聞かせてください。

TAKKI(G) もともと同じ高校に通っていたんですが、お互いのことを認識しながらも学生時代は全然交流がなくて。高校卒業後にそれぞれ違うバンドで活動していて、ライブハウスで会ったときに「おう」って挨拶するような関係でした。

SOTA(Vo) 僕のバンドのほうがちょっとキャリアが長くて、地元の横浜でTAKKIのバンドを呼んで対バンを何度かしていたんですよ。学生時代は全然交流がなかったけど、大人になってからお互いの存在が気になりだして、バンド同士で絡んでたんです。

TAKKI 僕のバンドが解散することになって、その後僕はしばらくスタジオミュージシャンとして活動していたんです。でも、自分が本当にやりたい音楽活動はこういう形ではないという自覚はあって。どういう形で音楽をやりたいか悩んでいるとき、SOTAに「一緒にやらない?」と声をかけてもらって。

──いろんなバンドマン、いろんなアーティストがいる中でTAKKIさんに声をかけた理由はなんだったんですか?

SOTA(Vo)

SOTA 単純にギターのプレイ、出音が好きだったのがありつつ、育ってきた環境が同じなのも大きかったです。考え方の指標というか、メンバー全員が同じベクトルを向いているかはバンドをやっていくうえですごく重要だと思っていて。TAKKIと僕は同じ高校だし、住んでいた場所も、触れてきたものも共通しているものがあるし、彼となら一緒に上を目指せるんじゃないかと思ったのかな。

──では逆にTAKKIさんから見て、SOTAさんのボーカリストとしての魅力はどんなところにあると感じていましたか?

TAKKI 出会ってきたボーカリストと比べてもフィジカルの能力が断然違うんですよ。並のボーカリストじゃないな、というのが第一印象で。しかも前のバンドではSOTAはツインボーカルの片割れという立ち位置で、それがすごくもったいない、こんなにフィジカルの能力が高くて技術もあるボーカリストはなかなかいないとずっと思っていました。

SOTA ボイトレに行くと「運動やってた人のほうがボーカルの鳴りがいい」みたいに言われるんですよ。僕は中学までサッカーをやっていて、高校ではラグビー部に所属していたので、幸運なことにそれが音楽にも生きているのかな。

TAKKI 僕はSOTAのような立派なフィジカルを持っているわけではないんですが、サッカーをやっていたというのは共通しているんです。中学まではサッカー少年で、中学の文化祭でバンドを組んだのがきっかけで音楽にのめり込んでいきました。最初は高校でもスポーツをやろうと思っていたんですが、高校にはスポーツ推薦で入学してくるような人が多くて、とにかくスポーツ全般のハードルが高くて嫌だなあと思っていたんです。高校1年のときはグランドホッケー部に所属していたんですけど、あまり面白くなかったから、その後軽音部に入って。その軽音部の顧問の先生が厳しくて、バンドスコアを使うことを一切禁止されていたんです。すべて耳コピでないとカバーをしちゃいけないみたいな(笑)。当時はすごく大変だったけど、このとき真剣に耳コピに取り組んでいたことで音楽の基礎力が付いたような感覚がありますね。

──中高とスポーツに打ち込んでいたSOTAさんはいつ音楽に目覚めたんですか?

SOTA 音楽自体はずっと好きで、小さい頃はサッカーと並行してピアノもやっていたんです。音楽に打ち込みたい気持ちはあったんですけど、高校生のときに「やっぱり部活はスポーツ」みたいな家族の意向もあって……。なので音楽とちゃんと向き合えるようになったのは、大学に進学してからなんですよ。

──そしてお互いが一緒にユニットを組むのは高校を卒業してから10年ほど経ってからですよね。

TAKKI 面白いですよね。学生時代は交流もなかったのに、大人になってから意気投合して。もしかしたら高校でスポーツを一緒にやっていたら今はこういう関係になれなかったかもしれないし、高校で一緒に軽音部に入っていてもこうはならなかったかもしれない。違う道を歩んできたからこそ、今一緒にこうやってやれているんだと思います。

作詞家を志すギタリスト

──一般的にバンドやデュオの場合、ボーカルが歌詞を書くイメージが強いんですが、SOMETIME'SではTAKKIさんが歌詞を書いて、SOTAさんが作曲をすることが多いんですよね?

TAKKI(G)

TAKKI 明確にそれぞれの役割を分けているわけではないんですが、SOMETIME'Sを結成する際に「僕が歌詞を書きたい」とは伝えていたんです。前のバンドでも歌詞を書いていたし、SOTAが歌詞を誰かに任せても構わないタイプの人だということは以前から知っていたので(笑)。

SOTA うん。全然構わないタイプ。

TAKKI 一時期は作詞家になりたかったくらい、自分の音楽活動の中で作詞に関する割合はけっこう大きいですね。僕はギタリストとしてギターに関してはしっかり分析してアカデミックにアプローチしたいタイプなんです。ただ、どこかアーティストとして自分の感性を光らせたい欲求を持っていて、それが発散できる分野が作詞だと思っていて。もしかしたらギターよりも作詞の研究をしている時間のほうが長いかもしれないですね。というのも作詞に関してはフィジカルの練習がない分、インプットの量と質が問われるわけですから。

SOTA TAKKIのメロディに言葉を当てはめるセンスは天才的だと思います。まだ言葉のない“メロディの語感”のようなものをちゃんと意識して、違和感なく言葉を乗せるんですよ。僕は基本的にメロディが好きな人間なので、言葉の意味がわからなくても洋楽を聴いて体を揺らして楽しむ、みたいなことを昔からしていて。曲によっては日本語の歌詞を付けてしまうことで音楽自体の楽しみ方を変えてしまうこともあるかもしれないんですが、TAKKIの歌詞にはそういう心配が一切ない。メロディのニュアンスを大事にしながら歌詞を書いてくれるのでめちゃくちゃ助かってます。

お互いの魅力

──アーティストとして2人がお互いにリスペクトしている点はどこですか?

TAKKI SOTAの男性的なボーカルは武器だなと感じています。最近の流行で言うと、中世的なボーカリストがすごく増えたなと思っていて。そんな中、男が男っぽく歌うボーカリストが日本ではあまり目立っていないんです。だからSOTAのボーカルには唯一無二な感じがある。それに、彼が歌うと曲にしっかり人間性が乗るんですよ。

──それはどういう意味ですか?

TAKKI 例えば、歌詞カードで読むとキレイな言葉なのに、SOTAが歌うと意外とハマらないことがある。その逆で、歌詞カードで読むとなんてことない言葉をSOTAが歌うとすごくハマる瞬間もある。作詞をする人間として普遍的にいい言葉をつづりたい欲求はあるんですが、SOMETIME'Sの曲としてSOTAに合うかどうかはまた別軸で存在しているんです。SOTAの人間性に引っ張られて生まれてくる歌詞もあるし、SOTAが歌うから修正する歌詞もたくさんある。自分1人の力で歌詞を書いている気があまりしないんですよね。

SOTA なんだか照れますね(笑)。

──逆にSOTAさんがTAKKIさんをリスペクトしているところはどこですか?

SOTA 演奏力も作詞の力も非常に助けられていますけど、やっぱりギタリストとしての存在感の大きさは常にリスペクトしています。ボーカルとギターの2人組なので、ギターソロを入れることが多いんですが、そのアプローチが毎回すごい。スタジオに入って何パターンも試していくんですけど、引き出しの数は多いし、どの曲も「これしかない!」みたいなソロを生み出していくんですよ。毎回毎回、いろんなサウンド、いろんなアプローチを試して最適解を導き出していく姿勢は本当にすごいと思います。

TAKKI 普段あまりお互いに褒め合うことはないのでうれしいです(笑)。

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