極端な話、半分くらいカバーでもいいと思っている
──アルバムの曲を集めていく過程で、1stアルバムのほうがやりやすかったということはないですか? 一般公募の話もそうですけど、2枚目になってくるとそれっぽいものを避けたりするようになったりして。
久保田 たしかにちょっと難しくなりました。どういうタイプにしようかなって考えるときに、これ1回やっちゃったかなっていうのはだんだん出てきますよね。基本は“60年代のいい曲”っていうのがあるんですけど、やっぱりちょっとずつ鋳型を作るじゃないけど、まともになって落ち着くのがイヤなので、何かしらちょっとずつ違うことはやりたいなと思っていて。台詞もそうだし、剣さんもそうだし、わざと1曲目に今のJ-POPじゃありえないようなリズムパターンの曲を入れてみたり。
中森 あと、1stアルバムのときにけっこう言われたのが、GS歌謡っぽいってことだったんですよ。そんなふうに作った覚えはないんだけど。
久保田 僕はグループサウンズっていうよりはナイアガラサウンドだと思うんですけどね。
中森 だから、今回はそっちのほうに寄せないようにはちょっと意識しました。もともと寄せたつもりもなかったんですけど。
久保田 今回悩んだのは、詞曲のアイデアですね。アレンジは中森さんのギターに頼っているところがあって、こういう言いかたは中森さんに失礼ですけど、それはなんとでもなると言うか。そっちよりも、こういうメロディラインとかこういうコーラスとか、一度そのタイプをやっちゃうと、次に探すときにはどうしようかなって、いろいろ考えないといけないんです。そうは言っても今回自分は1曲しか書いてないから偉そうなことを言えないんですけど(笑)。
──久保田さんはLes 5-4-3-2-1時代に得た教訓として、「曲は人に頼んだほうがいい。なぜなら自分だけで書くと大変だからだ」というようなことを言われていて。
久保田 20年前に苦しい思いをしたので(笑)。全曲やるのは無理だと思いました。アイデアがあっても、自分でそれを消化して作れないんですよ。アルバムでは多くても2、3曲作れればいいほうで、12曲全部作るってなるとどうしてもどうでもいい曲が出てくる。Les 5-4-3-2-1のときはつらかったですね。そういう経験もあり、SOLEILはみんなの力で(笑)。僕は全体像を見ていればいいのかなと。気持ち、DJ目線もありますけどね。
中森 The Beatlesは当時、自分たちで曲を作ることにびっくりされたわけじゃないですか。でもそれ以降、どこから始まったのかわかりませんけど、バンドで出すときには自分たちのオリジナル曲じゃなきゃいけないっていうのがあって。僕はそうは思わないんですね。自分たちが好きな曲を歌ったり演奏したりしたいというのがあって、それは別にカバーでもいいと思うんです。こうやって好きな人に頼んで、好きな曲を書いてもらって並べてまとめるっていうのは楽しいなと思ってやっているんですけどね。
久保田 1枚目は頼みすぎちゃって、いい曲がいっぱい集まったので結局カバーはしていないんですけど、今回は2曲やれました。
──カバーはヒックスヴィルの「恋のはじまり」と70年代のSF特撮ドラマ「謎の円盤UFO」のテーマ曲が収録されています。ヒックスヴィルの曲をやろうと思った経緯は?
中森 もともと初期The Beatles的な気持ちで作った曲だったので、合うんじゃないかなと思って。
──それいゆさんは原曲を聴かれました?
それいゆ はい。覚えるために聴きました。
──その影響を受けない歌唱がさすがだなと。
それいゆ いやいや、真似できないです。
久保田 でも、森若さんの曲はレコーディング前にずっと聴いていたからけっこう……いや、似てないかな(笑)。森若さんの歌はもう少し巻き舌で、それいゆちゃんはクールな感じです。
──中森さんがさっき言ったように、オリジナルとかカバーにこだわらずやってもいいじゃないかということですよね。
中森 はい。極端な話、半分くらいカバーでもいいと思っているくらいです。60年代なんて、みんなすぐにカバーしていたじゃないですか。何カ月後かには同じ曲がいくつも出たりして。それってやっぱり、いい曲はいいんだぞっていうことなんですよね。
なんなら早く大人になりたい
──話を聞いていて、SOLEILのフォーマットは強固なものだからどんなカバーをやっても面白そうだなと思いました。
久保田 それは1枚目を作ったときに思いました。だから、ある程度はどんな曲が来ても大丈夫だろうって。曲が長いと困るくらいで。「UFO」も普通はギターサウンドにならないと思うんですけど、ちゃんとなったっていう。
──この曲をやろうと思ったのは?
久保田 もともとはライブでもやっている「キャプテン・スカーレット」を入れたかったんですけど、許諾が下りなくて。ほかのバリー・グレイの曲だと「海底大戦争 スティングレイ」と「宇宙家族ロビンソン」と「謎の円盤UFO」が候補に挙がって、どれも難しそうだったんですけど、それいゆちゃんのお父さんが「UFO」マニアだっていう情報をキーパーソン(それいゆの母)から聞きまして。
──へー!
久保田 イギリスで子供のときから見ていたという。この曲がモッズに人気というのもありますしね。それでカバーすることにしました。でもやっぱり、その3曲の中では「UFO」が一番よかったなと思ってます。これ、僕ばっかり喋っちゃうんで(笑)、それいゆちゃんに喋ってもらいましょうか。
──では、それいゆさんに質問です。スカートの澤部渡さんが書いた「卒業するのは少しさみしい」という曲がありますが、実際さみしいですか?
それいゆ さみしくないです。
中森 えー(笑)。
久保田 友達と別れても平気なんですか?
それいゆ はい。なんなら早く大人になりたい。
中森 そんなー。
それいゆ だって、なりたくなかったですか?
──確かになりたかった(笑)。
中森 うん。高校生になりたかったね(笑)。
──楽曲そのものはいかがでしたか?
それいゆ スカートは普段からすごく聴いていたんですよ。だから歌えるのはうれしかったです。
──ただ、さみしくは?
それいゆ ない(笑)。
久保田 大人はしんみりする曲なんだけどなあ。
──SOLEILはどの曲もそうですけど、それいゆさんが楽しげに歌っているのがなぜかしんみりするんですよね。
久保田 それは本当にそうですね。
──といったあたりで時間になってしまいました。
久保田 それいゆちゃん、最初の頃よりしゃべれるようになりましたよね。
それいゆ うーん、今日はヤバい気がする(笑)。でも、お二人がたくさんしゃべってくれるから。
中森 最後になんかしゃべっておきなよ。
それいゆ ……オバケはナシで!
──オバケのくだりをカットしたらそれこそ、それいゆさんの出番が減っちゃいますよ。
久保田 ありで!
──それいゆさん的に今回の仕上がりはどうですか?
久保田 それは全然聞いたことなかった。こないだは「UFO」しか聴いてないって言ってましたよね。
それいゆ 「UFO」は何回も聴いてる。
中森 インストだし、歌ってないじゃん(笑)。
それいゆ あと「Baby Boo」を聴くときは台詞のところは絶対に早送りします(笑)。今回はビブラフォンとか、いろいろやったから、レコーディングが楽しかったです。だから、けっこう聴いてますよ。仕上がりは……いいと思います。
久保田 おお。「今回はダメだね」とか言えばいいじゃん。
それいゆ なんで(笑)。
──リリースがあり、東名阪ツアーのあとはしばらくお休みに入ると。大人のお二人も寂しいんじゃないですか?
中森 どうですか?
久保田 大丈夫です。3枚目の準備をするので(笑)。7月20日が、それいゆちゃんの誕生日なんですけど、16歳になったときにアルバムを出したいなと。
──最初に言っていたように14、15、16歳と記録していくわけですね。
久保田 そうですね、藤圭子路線で。
中森 あれは「十五、十六、十七と」ね(笑)。
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