エネルギーについて考え始めた3.11以降

──ACIDMANも太陽光発電を活用して日本武道館ライブや、シングル「EVERLIGHT」のレコーディングを行っていますが、太陽光発電の音は通常電源と比べてどんなところが違いますか？

もう全然違うんです。プロのミュージシャンの耳でっていうんじゃなく、誰が聴いても明らかに音がよかったです。蓄電池だから容量が多い分、エネルギーをくっきりと音に変換できてる証拠なんですけれど。面白かったのがディストーションというギターの音を歪ませるエフェクターがあるんですけど、太陽光だと音が歪まなかったんですね。

──歪まないんですか？

そう。要はクリアだから歪みが乗らないんです。歪み系のエフェクターはコンセントからの電源を想定して作られてるものなので。きれいな音を出すには太陽光の蓄電池の方が断然優れてる。同じ電気なのに、不思議だなあと思って。

──実際にやってみないとわからないことですね。そもそも大木さんがソーラーエネルギーに興味を持ったきっかけはなんだったんですか？

3.11の東日本大震災です。僕はあの震災前はそういうことに無知だったので、福島で作られた電気を使ってることすら知らなかったし、原子力も安全なものだと思っていたんです。震災以降はそれを反省して、エネルギーについて考えるようになって。昨日もちょうど福島県楢葉町でイベントがあったんですよ。昨年9月に避難指示が解除されて、まだ8％しか住民の皆さんが戻っていない町で6年ぶりに行われた盆踊りで歌わせてもらったんですけど、そういう現実を見ると原発に頼ったエネルギーで生きてる場合じゃないなと。我々だっていつ土地を追われるかわからない現状の中、科学を利用しながらも自然と共に生きるスタイルを探していかなきゃいけないと思いますね。

──そうした試みに共感したり、現状に気付かされる若いファンも多いと思います。

そうですね。これがきっかけになれば、もちろん脱原発をみんなに掲げてくれとは思わないし、考え方は自由でいいんですけど、「今、いつどうなるかわからないものがあるんだよ」ってことは知っといたほうがいいし。太陽光や風力でエネルギーは作れるんだってことは知るべきだなと思います。

タイジさんが旗振ってくれる以上ついていきます

──常連アーティストから見て、「中津川 THE SOLAR BUDOKAN」が今後こうなったらいいなといったビジョンはありますか？

このフェスって、ソーラーをきっかけに音楽と自然を一緒に体感する形になっていくと思うんです。次はもしかしたら風力なのかもしれない。こんなに自然にあるものでエネルギーを作れるんだ、共生できるんだというものをやっていくのが新しいフェスの形だと思うし、それが1つのムーブメントになっていけば世の中の価値観がどんどん変わってくると思うので。それに期待したいですね。

──スタッフから聞いたところによると、今年は小型の風力発電機も会場内に立てるそうです。フェスに協力しているシステム会社が東北地方での風力発電機の設置プロジェクトも始めたそうで、一部のエリアの電力を風力でやってみようという話になっているそうですよ。

へー、それは素晴らしい！ タイムリーなこと言ったな、俺。そういう社会的なインフラも含めたフェスになっていくと、どんどんやばいことになりますね。

──そうですね。また大木さんは中津川で初めて開催されたとき、ライブのMCで「このフェスがずっと続いていくように」って言っていたそうで。スタッフの皆さんはその言葉に感動して、その言葉に支えられて続けていってるとお話されていました。

ああ、言霊ですね。恐縮です。やっぱりこのフェスは哲学がしっかりしているところが素晴らしいんですよ。先日、「Reborn-Art Festival × ap bank fes 2016」に参加したんですけど、これはアートに特化しているフェスなんですよね。そういった意志のあるフェスは、その素晴らしさを肌で感じられるんです。ただアーティストを集めて、興行としてやってるんじゃない。

──ちなみに「中津川フェス」や「ap bank fes」のようにコンセプトがはっきりしているフェスのときは、演奏する曲を変えたりするんですか？

「EVERLIGHT」という曲は太陽光発電でレコーディングしたので、何回か意識的に演奏してたんですけど、最近はあまりこだわらずにとは思ってます。結局、自分たちの等身大の曲をやるのが一番いいということになって、そのときどきで判断する感じですね。

──これからACIDMANは20周年アニバーサリーイヤーに突入しますね。中津川フェスではありませんが、来年11月23日には主催イベント「SAITAMA ROCK FESTIVAL "SAI"」を埼玉・さいたまスーパーアリーナで開催されます。

はい。今までワンマンツアーばかりでイベントごとをあんまりやってこなかったので。これまでの20年を振り返るにあたって、先輩後輩含めみんなのおかげで来れたから、何かお祭りみたいなことが1つできればなと思いまして。自分たちの20年の歩みが見えるライブにしたいと思ってるんですが、そうなると欠かせないバンドたちがいっぱいいますね。

──そちらも中津川同様に熱い1日になりそうですね。最後にタイジさんにメッセージをお願いします。

これからも変わらず、この意味のあるイベントを引っ張っていってほしいと思います。俺らは、タイジさんが旗振ってくれる以上ついていきますので。今年もきっと晴れるでしょ。言霊があるんで大丈夫（笑）。

──ちなみにACIDMANは晴れバンドですか？

晴れバンドです。これまで野外ライブで雨に降られたのは2回ぐらいしかないですね。なので安心してください。