ナタリー PowerPush - 曽我部恵一
全23曲67分「まぶしい」の秘密
音楽はもっと自由なもの
──例えばアルバムに入っている「純情」と「ホームバウンド、ホームバウンド」という2曲は、これ言い方が難しいけど……同じ曲ですよね? これはなんなんですか?
なんなんだろうね(笑)。
──そんな他人事みたいに(笑)。
何か理由があってそうしてるわけじゃないからさ。まあ「純情」って曲があって、「ホームバウンド、ホームバウンド」っていう曲があって、その2曲を混ぜてみたのがこれ。なんか面白いかなって(笑)。
──普通はあんまりやらない手法ですよね。
だから考え方ってもっと自由でいいと思うんだよね。なんでもいいし、いろんなのがあっていいって思ってる。俺はこういうのも自分のやり方の1つだなと思ったから。
──さらにその自由なスタンスさえも、今回はそのまま歌にしてますよね。「心の穴」という曲の「まったくよくある歌詩! あーだけどぼくは歌った」「誰も聴いちゃいないから 好きなように歌ったんだ」というフレーズが象徴的ですが。
うんうん。実際問題、誰もおまえのことなんか知らないし気にしてもないんだから、もう好きにやれよっていう気持ちはある。それは自分に言ってて、自分にハッパかけてるんだけど。
「みんなこれ絶対好きでしょ」
──曽我部さんは自分のレーベル・ROSE RECORDSを立ち上げて10年経ちますが、このアルバムの作風にはそのことも影響してるんじゃないかと思うんです。メジャーのフィールドで活動していて、チャートの動向とかラジオのパワープレイ獲得とか、そういうものが頭にある人からはこの音楽は出てこない気がするので。
出てこないかなあ? 本当はそういう人から出てくるべきだと思ってるんだけど。
──もっとメジャーな立ち位置にいる人が攻めなきゃダメだと。
うん、でも俺はこのアルバムをメジャーなものだと思って作ってたけどね。
──えっ、これを?
これを!(笑)
──それはどういう認識なんですか?
いや、だって俺は「みんなこういうのが聴きたいんじゃないの?」って思ってるもん。なぜなら俺が聴きたいから。俺はこのアルバムをアバンギャルドなものだとは思ってないからね、そもそも。
──奇をてらったわけではないと。
うん、形はどうでもいいんだよ。例えばすごくかっちりしたポップソングが10曲入ったアルバムを作ってる人も別に保守的っていうことはないと思うし、みんながそれぞれやりたいことをやったらいいってだけで。好きなものを作るのが自由ってことだと思うから。アバンギャルドだから自由だとか、スクエアだから自由じゃないとか、そういうふうには思わないよね。
──なるほど。「聴き手のことはどうでもいい。俺がやりたいことをやるんだ」と思ってるわけではないんですね。
そう。「みんなこれ絶対好きでしょ」って思ってる。ジャケも3Dで飛び出るし(笑)。
収録曲
- 東京はひとりで歩く
- 汚染水
- ちりぬるを
- 純情
- ママの住む町
- 碧落 -へきらく-
- とんかつ定食たべたい
- だいじょうぶ、じゅんくん
- それはぼくぢゃないよ
- 工場街のシュウちゃん
- ホームバウンド、ホームバウンド
- あぁ!マリア
- ボサノバ
- 悲しい歌
- ハッピー
- 心の穴
- 夕暮れダンスミュージック
- 一年間
- 夢の列車(第二部)
- 高まってる
- パレード
- 坂道
- まぶしい
初回限定盤は3Dジャケット&3Dメガネ付き。
曽我部恵一(そかべけいいち)
1971年生まれ、香川県出身のシンガーソングライター。1990年代からサニーデイ・サービスの中心人物として活躍し、バンド解散後の2001年からソロアーティストとしての活動を開始する。精力的なライブ活動と作品リリースを続け、客演やプロデュースワークなども多数。現在は曽我部恵一BAND、および再結成したサニーデイ・サービスのメンバーとしても活動しており、フォーキーでポップなサウンドとパワフルなロックナンバーが多くの音楽ファンから愛され続けている。2004年からは自主レーベル「ROSE RECORDS」を設立し、自身の作品を含むさまざまなアイテムをリリースしている。3児の父。