3ほんわかびより / 千石冠 starring 長縄まりあ

──「ほんわかびより」は千石冠と長縄まりあさんのキャラクター通りのほんわかした萌え声なんだけど、ベースになっているのは温度の低いラテンハウスという。

ほかのキャラの曲とのバランスも考える中で、ちょっとマイナーでメロウなラテンハウスなら合うかもなと。最初の2人が明るいメジャーだから、しっとりとしたマイナーコードで考えていきました。

──「お嬢様、マスコット的キャラ、口数少ない」というキーワードからラテンハウスを導き出すのはなかなか難しそうだなと思いましたけど。もっとビートのない、ゆっくりした曲とかをイメージしそうな気もするし。

最初に考えた花名の曲をゆるいシャッフルのおとなしい曲にしたから、バランス的にほかの3人は少しアゲようと思ってたんですよ。まだ「本当にアゲなくていいんですか？」と聞いてた頃だから（笑）。ぼそぼそした感じを残しつつ、ビートを落とさないようにするにはどんな曲がいいのかなあ……と考えたのがこれです。ガットギターもよかったですね。最初は入ってなかったんですけど、試しに入れてみたら哀愁がグッと深まって。シングル発売イベントのときにメンバーがこの曲を「情熱的な曲」って言ってて、そうでもないけどなと思ってたんだけど（笑）、あれはたぶんガットギターのスパニッシュな感じに反応してたんだろうね。

──長縄さんの声がうまくハマってますね。

レコーディングはすごく早かったですよ。つかむのが早くて。中学生のときに吹奏楽でクラリネットを死ぬほど練習してたらしくて、音楽的な勘がいいんです。何小節目からどうのみたいな話も普通にできて、すごくしっかりしてましたね。ドーナツあげたら喜んで2個食べてました（笑）。歌う前に1個食べて、歌い終えてからもう1個。

4Sweet Slow Days / 京塚志温 starring M・A・O

──ここからは大人キャラ3名の楽曲が続きます。「Sweet Slow Days」は華やかなスウィングジャズ調で、すごく心地いいです。

4ビートは絶対に1曲やりたかったんです。志温はハッピーなキャラだから、メジャーの4ビートが合うだろうなって。この曲もわりとすんなり出てきたんですけど、細かく作り直してこの形になりました。初めはもっと転調が多くてどんどん展開していく感じだったんだけど、ちょっと難しくなりすぎちゃって。こういう4ビートのポップスは、好きな人ならいくつか好みの雛形があるでしょ？

──ミュージカル映画のサントラだったり、人気の高い曲のパターンがいくつかありますね。

そのどれかに寄せてみたり、いろいろ考えてみたんだけど、狙って難しくするとハッピーな感じがストレートに伝わらないので、シンプルに聞こえるように少しずつ調整しました。

──M・A・Oさんの優しい歌声もマッチしてますね。

最初はけっこう苦労してたみたいで、1番を歌ったところで一旦ストップしたんですよ。でも2番で“ハッピー感”みたいなものをつかんでからはどんどんノリノリになってきたので、「今の感じで1番をもう1回」とお願いして。結果全体がハッピーな雰囲気になりました。

5ココロ替え宣言 / 万年大会 starring 内田真礼

──この曲はテクノポップ的な打ち込みで、ほかとは少し毛色が違います。

万年大会（はんねんひろえ）のキャラクターや全体のバランスを考えて、この曲だけ全編打ち込みにしました。ふわふわした曲が多いアルバムの中で、1曲ビシバシと強い曲があるのもいいかなって。最初に「キャラソン＝アゲる曲」という話をしていた中での、僕が考えるキャラソンがこんな感じ。

──ディレクターのメモはわかりやすいような、わかりにくいような（笑）。内田真礼さんが見事にキャラを演じてます。

歌い方として「照れながら歌ってる感じ」というのもありました。歌入れは楽しかったなあ。真礼さんは基礎がしっかりしてるから、「キャラを入れてほしいんですよ」「ニュアンスをください」と言うとどんどん引き出しを開けてくる。ソロでも活躍されている方だからレコーディングも慣れていて作業が早いので「もうちょっと違うやついけますかねー？」とか楽しんじゃって。「それもいいですねー。そうきたかー」「そっちかー！」みたいな（笑）。言えば出てくる。正しい音符じゃない、わざとピッチを外してニュアンスを出すテクニックもわかっているし、技をいっぱい持ってるんですよ。

6シュガー＆シュガーレス / 榎並清瀬 starring 沼倉愛美

──これも大人っぽい雰囲気だけど「ストロベリーアイスクリーム」とはまた違う、本気のアダルト路線ですね。ここまでメロウでテンポを落とした16ビートは、最近のキャラソンにはあまりないかもしれません。

メモにあったキーワードのほかに「沼倉さんはすごく歌える方なので、歌唱力を生かせる曲を」とも言われたんです。自分の曲は好きなように作ってたけど、アニメの仕事でいろんな人に曲を作るようになって、音域的なところをすごく考えるようになったんですよ。基本的になるべくメロディの幅が広がりすぎないようにして、人によってはさらに何音か使ってみたり。この曲は少し広めに作ってますね。

──沼倉さんのレコーディングはどうでしたか？

オケが十分大人っぽかったけど、歌入れで沼倉さんがさらにキャラを入れてくるから、より大人っぽくなりましたね。キャラに寄せるならもっと低くてもいいと沼倉さんはおっしゃってたけど、どこのキーが正解かは難しくて、低すぎると曲の印象も変わってしまう。いろいろ試しながらやったけど、それでもレコーディングは早かったです。

7みんなありがと。 / 一之瀬花名 starring 近藤玲奈

──そしてラストの「みんなありがと。」です。

物語のラストに関わる曲なので、ここを基準にしようと1曲目に書き始めました。キーワードの中でも「遠回り」の部分をディレクターは特に強く言っていて。「人生遠回りした結果、いろんな素敵な出会いがある」というのが「スロウスタート」という作品全体のテーマでもあるので、「ありがとう」を伝える曲だけど、どバラードではなく、散歩しているイメージ。だったらゆるいシャッフルが合うかなと。

──ちょっと夕暮れ感のある、切ない雰囲気で。確かに散歩っぽいイメージなんだけど……最後にバート・バカラックを彷彿とさせる急展開があって、シングル発売イベントでの初披露のときはみんなびっくりしてました（笑）。曲が終わって拍手をしようとしたら、アンコールが始まったみたいな。

最後にあの展開を入れるのは初めからぼんやり考えていたんです。シャッフルでストリングスとコーラスがあって、トランペットを入れて……だったらバカラックかなと。

──近藤さんのボーカルはいかがでしたか？

あんまり慣れてないのかと思ってたけど、けっこう堂々としてましたね。ピッチ感はすごくよくて。

──STARTails☆のインタビュー（参照：STARTails☆（近藤玲奈、伊藤彩沙、嶺内ともみ、長縄まりあ）「ne! ne! ne!」インタビュー）では1人だけ終始不思議でしたけど……。

変わった子だよねー。レコーディングのときは変な感じあまり出なかったな。期待してたんですけど（笑）。これから歌う現場も増えてくると思うし、どんどんうまくなっていくんじゃないかなあ。