出会ってすぐにヘビーな話
──2人が出会った時期は、ちょうどSuGの解散前後と重なってますね。
武瑠 最後のツアーのちょっと前ですからね。バンドが終わることも話してたし。
山中 ビックリしましたね。「え、解散するの!?」って。
武瑠 決断するまでにはかなり時間がかかってるんですけどね。ただ、やればやるほど道が狭くなっていくというか、孤立する一方だったので、最後は辞めざるを得ない感じになって。最後のほうは「どんなに作品のレベルが上がっても、全然届いていない」って息苦しさもありました。もちろんファンの人たちは聴いてくれてたんだけど、広がりがなかったんですよね。クオリティが上がってるのは感じていたし、周りの人たちからの評価も高くなってたんだけど、届け先がどんどん狭くなっていたと言うか。それが一番キツかったかな。「ほかのバンドとかぶってないのがいい」ってよく言われたけど、こっちは1人で砂漠を歩いてるような気分だったから。
山中 それはつらいよね。
武瑠 その間あきらめずに試行錯誤したのはよかったと思う。そのおかげで作曲能力も上がったと思うし、それがsleepyheadにつながったから。
──その頃、山中さんに相談したことはあったんですか?
武瑠 超悩んでたから、めっちゃ話してました。
山中 出会ってすぐなのにすごくヘビーな話をしてましたね(笑)。ただ、武瑠くんが言ってることはよくわかったんです。僕らもヴィジュアル系のバンドやハードコアのバンドとも対バンしてきたし、僕ら自身も明確なジャンルを掲げて活動してきたわけではなくて。ある意味、似たような境遇にいると言うか……だから、自分たちの経験の中から「これはうまくいった」という成功例を話したりもしてました。武瑠くんはアンダーグラウンドのカルチャーも詳しいから、いろいろと教えてもらうことも多かったし。お互いに刺激し合える関係だと思ってます。
武瑠 うん。対バンツアーに呼んでくれたのもすごく大きかったですね(参照:THE ORAL CIGARETTES東名阪対バンにLiSA、武瑠ソロ、ぼくりり)。
山中 純粋に出てほしかったし、一緒にやりたいと思ったから声をかけたんだよ。
武瑠 「呼んでもらった以上、しょぼいライブは絶対にできない」ってプレッシャーはあったけどね(笑)。
山中 いやいや、めっちゃいいライブだったよ。
武瑠 ホント?
山中 うん。sleepyheadの最初のライブ(2018年3月に東京・TSUTAYA O-EASTで行われた「sleepyhead 0TH ANNIVERSARY LIVESHOW『透明新月』」)も観させてもらったんですけど、そのときは「ちょっと緊張してるのかな」という印象だったんです。でも大阪の対バンのときは最初から全然雰囲気が違っていたし、ライブ自体も見違えるほどよくなってた。武瑠くんも言ってたけど、新曲をしっかり自分のものにしている感じがあったし、「これがsleepyheadなんだな」と納得できました。
武瑠 最初のライブは「すべて新曲だ」という緊張感もあったし、事務的なことに追われ過ぎていて、全然余裕がなくて(笑)。「このままの自分でやるしかない」という感じで、MCでも思ったことをそのまま話して。お客さんを鼓舞するわけでもなく、トーンもかなり低かったんじゃないかな。それに比べたら大阪のときはかなりいい感じでやれたと思います。頭の2曲くらいは緊張してたけど、オーラルのファンも温かく迎えてくれたので。あんなに楽しかったのって、どれくらいぶりだろう?
山中 よかった(笑)。
──SuG時代とはライブに臨むテンションも違う?
武瑠 SuGと浮気者(ほかのアーティストとのコラボレーションを軸にした武瑠のソロプロジェクト)の間くらいの感覚かな。バンドのときに比べるとバラードやダンスナンバーが増えて、自分が好きなことをそのままやってる感じだと思います。切なくてダークなメロディを作るのはもともと得意だったんですけど、バンドではそこまで出してなかったんですよ。バラードを作ったときのメンバーの反応がイマイチよくなくて「自分がやりたいことを押し付けるのも変だし、だったら5人でやる意味がある曲を作ろう」と思ってたから。SuGの「桜雨」というバラードがあって、かなり評価してもらったんですけど、そのときもけっこう悩んでました。「自分の趣味に付き合わせてしまうのはよくないな」って。
──SuGにはポップなイメージがありましたからね。そのあたりオーラルはどうですか? メンバー全員でバンドの世界観をしっかり共有している印象があります。
山中 音楽性の違いみたいなことで悩んだことはまったくないですね。みんな「拓也がやりたいなら、やろう」と言ってくれるし。それよりもファンとバンドのバランスをどうやって取るかを考えることのほうが多いかな。
武瑠 オーラルの曲ってサビはキャッチーだけど、ギターのフレーズとかはダークだったりするでしょ? 野外フェスに出ることも多いから「青空の下でやるときはどうしてるんだろう?」って思うんだよね。
山中 そうなんや(笑)。自分たちがフェスの中にいられるのは、フェスに呼ばれるような最前線でやっているバンドの人たちとつながってることが大きいと思っているんですよね。いろんなジャンルのバンドと対バンもしますし。音楽性というよりも、人と人のつながりで呼んでもらってると言うか。武瑠くんとの関係もそうだけど、人として好きだなと思ったらずっと付き合えるタイプなので、人との関係からいろんな活動や仕事につながってることは多いですね。
──山中さんと武瑠さんは、音楽性にも共通しているところがあるんじゃないですか?
武瑠 そうかも。
山中 音楽は人から生まれるものだから、感性が似てたら音楽も似てきますよね。僕自身もヴィジュアル系の音楽は聴いていて、Janne Da Arc、LUNA SEAなども好きで。そういうところも共通しているのかなと。
武瑠 歌い方が全然違うから、ヴィジュアル系のイメージはないけど、実はオーラルってサウンドに“LUNA SEA感”があるんですよ。
山中 (中西)雅哉(Dr)もLUNA SEAが好きだからね。僕らの周りには、そういうバンドが好きな人が意外と少ないんですよ。Hi-STANDARD、ELLEGARDENあたりに影響を受けてるバンドが多いかな。生まれ育った環境や歴史、音楽のルーツはその人だけのものだから、それを生かしてナンボだと思っています。共通のルーツを持った人ともつながれるから、ルーツが見える音楽ができていると言われるとうれしいですね。
次のページ »
オーラルの影響を強く受けた曲
- sleepyhead「DRIPPING」
- 2018年6月20日発売 / STREET GOTHIC LABEL
-
[CD]
3240円 / SACT-0002
- 収録曲
-
- MY FORTUNE FADED
- 闇雲
- 結局
- 酩酊
- 熱帯夜
- HOPELESS
- HURT OF DELAY
- アトノマツリデ
- 灰汁まで愛して
- 退行的進化
- LAIDBACK
- 狂宴騒々
- ALIVE
- sleepyhead(スリーピーヘッド)
- 武瑠(ex. SuG)によるソロプロジェクト。2018年3月に東京・TSUTAYA O-EASTにて初ライブ「透明新月」を開催し、会場限定シングルとして「闇雲」をリリースした。同年6月に1stフルアルバム「DRIPPING」をリリース。7月6日からは初ツアー「sleepyhead LIVE TOUR 2018」を開催する。ファッションブランド・million dollar orchestraの主宰を務めるほか、THE ORAL CIGARETTESの「PSYCHOPATH」のミュージックビデオをディレクションするなど、マルチな才能を生かしてさまざまな分野で活躍している。
- THE ORAL CIGARETTES(オーラルシガレッツ)
- 2010年に奈良で結成された4人組ロックバンド。メンバーは山中拓也(Vo, G)、鈴木重伸(G)、あきらかにあきら(B, Cho)、中西雅哉(Dr)。アグレッシブかつ緻密に構築されたサウンドでファンを増やしていき、2012年にオーディション「MASH FIGHT!」にて初代グランプリを獲得する。2013年8月に1stミニアルバム「オレンジの抜け殻、私が生きたアイの証」をリリース。その後、2014年7月にメジャー1stシングル「起死回生STORY」、同年11月にアルバム「The BKW Show!!」を発表。2016年4月30日には地元・奈良のなら100年会館で初のホールワンマンライブ「THE ORAL CIGARETTES 唇ワンマンライブ~故郷に錦を飾りまSHOW!!~」を開催。2017年2月には3rdアルバム「UNOFFICIAL」を発表、6月には初の東京・日本武道館でのワンマンライブを実施し、2018年2月には大阪城ホールでのワンマンライブを成功に収めた。同年6月には4thアルバム「Kisses and Kills」をリリースした。
- THE ORAL CIGARETTES「Kisses and Kills」
- 2018年6月13日発売 / A-Sketch
-
初回限定盤 [CD+DVD]
3780円 / AZZS-77 -
通常盤 [CD]
3024円 / AZCS-1070
- CD収録曲
-
- もういいかい?
- BLACK MEMORY
- PSYCHOPATH
- Ladies and Gentlemen
- What you want
- トナリアウ
- リブロックアート
- 容姿端麗な嘘
- ONE'S AGAIN
- ReI
- 初回限定盤DVD収録内容
-
-
「唇ワンマンライブ 2018 WINTER『Diver In the BLACK Tour~ReI of Lights~』」
- カンタンナコト
- N.I.R.A
- マナーモード
- 接触
- Flower
- 大魔王参上
- BLACK MEMORY
- 起死回生STORY
- ReI
ReI project Docementary Movie
-