武瑠(ex. SuG)のソロプロジェクト・sleepyheadの1stフルアルバム「DRIPPING」がリリースされた。ロック、ヒップホップ、ダンスミュージックなどを自在に取り入れたトラック、美しさと憂いを共存させたメロディライン、内面を吐露するような歌詞が1つになった本作は、ソロアーティストとしての武瑠の豊かな才能を証明する1枚と言えるだろう。音楽ナタリーでは武瑠とプライベートでも交流のあるTHE ORAL CIGARETTESの山中拓也(Vo, G)との対談を企画。音楽、映像、ファッションなどを通して親睦を深めたという両者にアーティストとしてのスタンス、現在の音楽シーンに対する思いなどについて語ってもらった。
取材・文 / 森朋之 撮影 / 映美
たまたま見つけた動画を武瑠くんが作ってた
──武瑠さんと山中さんの交流はいつ頃から始まったんですか?
山中拓也(THE ORAL CIGARETTES) ちょうど1年前くらいかな。きっかけは武瑠くんが作った動画なんですよ。いろんな動画を観漁ってるときにたまたま見つけた面白い映像があって。
武瑠 あるファッションブランドの企画で制作した映像ですね。そのときは自分の名前を出してなかったんです。
山中 その映像をファッション関係の仲のいい人に「これ、カッコよくないですか?」って見せたら、「これに出てくる肉をぶっ叩いてる人、俺やで」って言われたんです(笑)。彼にこの映像を作っているのが武瑠くんだって教えてもらって、メチャクチャビックリして。武瑠くんともつながっていた人だから、それで紹介してもらったんですよ。
武瑠 その“肉を叩いてる人”は僕のブランド(million dollar orchestra)も手伝ってくれてるんですよ。
山中 だから最初はファッションつながりですね。実は以前から「拓也と武瑠くんは合うと思う」と言われていたんですよ、その人に。
武瑠 ヤマタクは人と人の壁を壊すのがうまいし、じっくり話してみるとお互いに好きなものがすごく近くて、会ったらすぐに仲良くなりました。オーラルってフェスで活躍している解放的なバンドのイメージもあるけど、根底にはかなりダークな部分も持ってると思っていて。それは僕がやろうとしてきた“ストリートゴシック”にも共通してるんですよね。
山中 もちろんSuGの音楽も知ってたし、映像もチェックしてましたから、僕も武瑠くんには「根本が似てるんだろうな」と感じていて。最初に話をしたときに「欲望が尽きない人だな」「全部自分でやらないと気が済まない人なんだ」ということもわかって、それも自分と似てると思いました。ディレクター的な視点もそうだけど、こんなに共感できる人はなかなかいないし、ひさしぶりに人と仲良くなった気がしました(笑)。
武瑠 それは自分も同じ。SuGを始めたばかりの頃は感性が近いバンドが周りにいて、「このシーンに新しいものを持ち込もう」って一緒にツアーを回ったりしてたんです。でも、同世代に限って言えば、ヴィジュアル系って挑戦的なバンドから先にいなくなっていくように感じて。
山中 そうなんだ。
武瑠 ビジュアル系の王道みたいなバンドのほうが動員を上げやすいからね。感性が合う同期のバンドマンは辞めていった人が多いから、ヤマタクと会えたのは本当によかったと思ってます。
音楽をカルチャーとして捉えている
武瑠 オーラルってオーバーグラウンドのバンドでありながら、ちゃんとファッションや映像にも着眼していて、ファンの感性をフックアップするようなスタンスを持っているんですよね。そこがすごいなと思った。
山中 偉そうなことを言うつもりはないんだけど、自分が好きなものは共有したいと思っていて。それをどう伝えるか?ということを考えることで、ほかのバンドとは違う活動につながるし、トライ&エラーを続けてないと発見もないですからね。
武瑠 そうだよね。
山中 実はそういうことをずっと続けてるんですよ、オーラルは。武瑠くんと知り合って、彼の周りにいるデザイナーやクリエイターと絡むようになって「今までやってきたことは間違いじゃなかったな」と確信できたのは大きいですね。さらに濃くしながらやっていこうとも思えたので。
武瑠 彼も僕も音楽を単体ではなくて、ファッションや映像を含めたカルチャーとして捉えている感じがあるんですよね。ただ、そういうスタンスはちょっと危険なんですよ。ソロになって余計に感じるようになったんですけど、1つのことだけを突き詰めている人のほうが応援してもらいやすいので。
──確かに“この道一筋”というタイプのアーティストのほうが評価されやすい印象はあります。
武瑠 中途半端だと思われるんですよね、いろいろやってると。「仕事と恋を両方がんばってる人って、中途半端じゃないでしょ?」って思うけど。勉強と部活の両立もそうだし。
山中 ははは(笑)。確かにね。
武瑠 日本のミュージシャンのブランディングの基本形は「コレしかやってません」という打ち出し方だし、それを打ち崩したいという気持ちは強いですね。最初は「どうせゴーストがいるんだろ?」って思われてましたけどね、僕は。
──MVのディレクションをしたり、小説書いたりしてるのもウソだ、みたいな?
武瑠 そうです。
山中 それヤバいな(笑)。
武瑠 気持ちが折れますよ、そんなこと言われると(笑)。バンドの活動の最後のほうは「ホントにやってたんだ。すごいね」ということになりかけたんだけど。
──そういう葛藤って山中さんにもありますか?
山中 どうだろう? ライブやMVに対するこだわりは自分から発信するようにしてるし、ファンの理解力も高いと思ってるんですよ。ビジュアルや映像に対して「ここにこだわってるんだな」とわかってくれる人も増えているし、逆にクリエイティブなところをきっかけにしてバンドに興味を持ってくれる人もいるので。
武瑠 この前オーラルと対バンしたときにレーザーで漢字を映したんですけど、オーラルのファンから「レーザーの使い方に心をつかまれました」という反応があって。その視点から見てくれるのはすごいなって思いました。
山中 よかった(笑)。ファッションに関して言うと、自分をファッションアイコンにしようと思ってた時期があったんです。わかりやすいアイテムを身に付けたりして、マネしてもらいたいなって。そういうところも少しずつ認識してもらえたからこそ、オーラルのファンはクリエイティブなことに理解をしてもらえるようになったのかもしれないですね。
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出会ってすぐにヘビーな話
- sleepyhead「DRIPPING」
- 2018年6月20日発売 / STREET GOTHIC LABEL
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[CD]
3240円 / SACT-0002
- 収録曲
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- MY FORTUNE FADED
- 闇雲
- 結局
- 酩酊
- 熱帯夜
- HOPELESS
- HURT OF DELAY
- アトノマツリデ
- 灰汁まで愛して
- 退行的進化
- LAIDBACK
- 狂宴騒々
- ALIVE
- sleepyhead(スリーピーヘッド)
- 武瑠(ex. SuG)によるソロプロジェクト。2018年3月に東京・TSUTAYA O-EASTにて初ライブ「透明新月」を開催し、会場限定シングルとして「闇雲」をリリースした。同年6月に1stフルアルバム「DRIPPING」をリリース。7月6日からは初ツアー「sleepyhead LIVE TOUR 2018」を開催する。ファッションブランド・million dollar orchestraの主宰を務めるほか、THE ORAL CIGARETTESの「PSYCHOPATH」のミュージックビデオをディレクションするなど、マルチな才能を生かしてさまざまな分野で活躍している。
- THE ORAL CIGARETTES(オーラルシガレッツ)
- 2010年に奈良で結成された4人組ロックバンド。メンバーは山中拓也(Vo, G)、鈴木重伸(G)、あきらかにあきら(B, Cho)、中西雅哉(Dr)。アグレッシブかつ緻密に構築されたサウンドでファンを増やしていき、2012年にオーディション「MASH FIGHT!」にて初代グランプリを獲得する。2013年8月に1stミニアルバム「オレンジの抜け殻、私が生きたアイの証」をリリース。その後、2014年7月にメジャー1stシングル「起死回生STORY」、同年11月にアルバム「The BKW Show!!」を発表。2016年4月30日には地元・奈良のなら100年会館で初のホールワンマンライブ「THE ORAL CIGARETTES 唇ワンマンライブ~故郷に錦を飾りまSHOW!!~」を開催。2017年2月には3rdアルバム「UNOFFICIAL」を発表、6月には初の東京・日本武道館でのワンマンライブを実施し、2018年2月には大阪城ホールでのワンマンライブを成功に収めた。同年6月には4thアルバム「Kisses and Kills」をリリースした。
- THE ORAL CIGARETTES「Kisses and Kills」
- 2018年6月13日発売 / A-Sketch
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初回限定盤 [CD+DVD]
3780円 / AZZS-77 -
通常盤 [CD]
3024円 / AZCS-1070
- CD収録曲
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- もういいかい?
- BLACK MEMORY
- PSYCHOPATH
- Ladies and Gentlemen
- What you want
- トナリアウ
- リブロックアート
- 容姿端麗な嘘
- ONE'S AGAIN
- ReI
- 初回限定盤DVD収録内容
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「唇ワンマンライブ 2018 WINTER『Diver In the BLACK Tour~ReI of Lights~』」
- カンタンナコト
- N.I.R.A
- マナーモード
- 接触
- Flower
- 大魔王参上
- BLACK MEMORY
- 起死回生STORY
- ReI
ReI project Docementary Movie
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