人生ってどうにもならない瞬間もたくさんある
──アルバムの最後に収録されている「JOY AND PAIN」も、このアルバムのテーマを象徴しているように感じます。未来や過去にいろいろあるけれど、“今を生きること”が大事なんだというメッセージが込められていますよね。
KO-HEY おっしゃる通りです。いいことも悪いこともいろいろあるけど、結局みんな幸せになりたいだけなんだよね、っていうことを表現したくて。
TAKE そういう意味でいうと「SHAPE OF HEARTS」もそう。自分がもし何かを失ったときにどういう状態になるのか、そしてこれまでの人生で失った人やもののことを思い浮かべながら、フィクションとして物語を作り、その主人公の深い喪失感を歌詞にしてみました。曲調も思いっ切りダウナーにして悲しみとしっかり向き合った分、聴き手の心に寄り添うような楽曲になったと思います。ゴスペルってどうしても「大丈夫だよ」とか「どうにかなるよ」というポジティブなメッセージが多いのですが、人生ってどうにもならない瞬間もたくさんあると思うんです。喪失感や無力感に苛まれている状態を無視して、「大丈夫だ」「泣くなよ」などと簡単には言えない。だからこの曲では、自分が何か大切なものを失ったときにどういう状態になるのか、これまでの人生で失ったものや人のことを思い浮かべつつフィクションとして仕上げてみました。
──ルーツや世代、性別も異なる人たちが声を合わせる従来のゴスペルスタイルはもちろん、ポジティブもネガティブも包み込む“Skoop On Somebodyならではのゴスペル”は、今求められている多様性とも通じる部分があると思います。
KO-HEY ありがとうございます。実は世界的に有名なゴスペルチームでも、メンバーそれぞれの声を聴いたら音を外している人や歌詞を間違える人もけっこういるんです(笑)。だけど、全員で歌うとそれが厚みとなって豊かに響き合う。逆に、全員がうまくきれいに歌おうとすると、あの独特のバイブスにはならないんですよね。そこが僕はゴスペルの大きな魅力の1つだと思いますし、そこさえ踏襲していればサウンドやスタイルにこだわる必要ないんじゃないかと。もし本作を「サウンドもマナーもしっかり踏襲した正統的ゴスペルアルバムにしよう」と思って作っていたら、きっと完成しなかったかもしれない。それに、本場のゴスペルが聴きたいんだったら、それこそ現地の音楽を聴けばいいわけですし(笑)。
──そういう意味でいうと、例えば「MY HOMEWORK」はレゲエとゴスペルを融合させていて。Skoop On Somebodyならではのユニークなアイデアだと思いました。
TAKE これは僕の“恥ずかしいデモシリーズ”の1つですね(笑)。超ノリノリで歌い上げているんですけど、オケはかなり適当で。なんかレゲエっぽい感じが出たので、「いっそこれ、レゲエにしちゃう?」って話になって。でも、やるなら「ちょっとやってみました」的な感じじゃなく「コテコテにやろう」と。それでミックスも、僕の昔からのアイドルであるDub Master Xこと宮崎泉さんにお願いしました。
型破りのゴスペルアルバムを作ることができた
──僕はプリンスが大好きなので、個人的には1曲目「LOVE OR NOT」でのリンドラムやギターのサウンドにノックアウトされました。
TAKE うれしいなあ。その言葉を聞けただけで今日はハッピーですよ(笑)。実はKO-HEYが別の曲のデモで使っていたリンドラムの音が頭に残っていて、それを元に「ちょっとトラックちょうだい」って頼んだんです。15分くらいでサクッと作った曲なんですけど、最初はもう少し複雑なコード進行だったところ、あえてワンコードにして、遊び心全開で作ってみたんです。「『これはさすがにないだろう』って言われるかもしれない……それでもいいや!」という感じで(笑)。ところがそのデモをディレクターに聴かせたら、「いいね」と言ってくれて。アルバムのレコーディングも後半に差しかかっていたからこそ、「これくらい遊んでもいいんじゃない?」と思ってもらえたのかもしれないですね。
──でも結局、そんな型破りの「LOVE OR NOT」がアルバムの冒頭を飾りました(笑)。
TAKE そうなんです(笑)。「LOVE OR NOT」が1曲目に決まったときは「これで大丈夫か?」と不安になりましたけど、改めてアルバムを通して聴き直してみたら「これでいいやん!」って(笑)。例えばSounds of Blacknessのように、ゴスペルの常識を壊しながらその定義を広げてきた先駆者もいますし、今日こうやって話してきたように、バンドによってそれぞれのゴスペルがあると思うんですよ。ロックのゴスペルもあれば、ヒップホップのゴスペルもある。ゴスペルはそうやってすべての音楽スタイルを取り込んでしまえるだけの懐の大きさがあるし、僕らも「Skoop On Somebodyにとってのゴスペルとは何か」を追求した結果、こんな型破りのゴスペルアルバムを作ることができた。
──11月24日から12月19日にかけて、恒例のクリスマスライブツアーが開催されます。ゴスペルクワイアを迎えたライブでは、アルバムの新曲も演奏すると思いますので、最後にその意気込みをお聞かせください。
KO-ICHIRO 今回も各会場でその日限りのクワイアメンバーを募集していて、今から本当に楽しみですね。アルバム制作を通して改めて感じたのは、僕らにとって一番の宝物は仲間の存在だということ。田中雪子さん率いるクワイアをはじめ、アルバムに参加してくださったレコーディングミュージシャンや、それを支えるスタッフの皆さん……僕らにとって、そんな仲間こそが財産です。レコーディング現場は常に笑顔であふれていましたね。ライブ本番も、その場にいるすべての人たちから笑顔を引き出せるよう、引き続きがんばっていきたいと思います。
TAKE 年末の忙しい中、恒例のクリスマスコンサートに集まってくださる皆さんには感謝の思いでいっぱいです。Skoop On Somebodyは“冬のバンド”というイメージがなぜか強いみたいで。1年の締めくくりとして皆さんが笑顔になって今年の汚れは今年のうちに落とせるよう(笑)、最高のパフォーマンスをお届けします。
KO-HEY クリスマスコンサートでは、僕らとサポートメンバーの6人でハンドベル演奏をやるのが恒例になっているんですよ。それがわりと難易度も高く、本番でもときどき誰かがミスってしまう(笑)。緊張するし、我々はみんな楽しんでいるのか嫌がっているのかよくわからないんですが、お客さんには楽しんでいただいているようなので、今年もがんばります。
KO-ICHIRO 今年はどの曲でハンドベルをやるのか早めに決めて、すぐに練習しないとだね(笑)。
公演情報
Christmas Live Tour 2024
- 2024年11月24日(日)大阪府 Zepp Namba(OSAKA)
- 2024年11月30日(土)愛知県 今池ガスホール
- 2024年12月7日(土)北海道 共済ホール
- 2024年12月14日(土)福岡県 電気ビルみらいホール
- 2024年12月19日(木)神奈川県 横浜関内ホール
プロフィール
Skoop On Somebody(スクープオンサムバディ)
1995年に大阪で結成。当初はSKOOPという名前で活動し、1997年にシングル「No Make de On The Bed」でメジャーデビュー。当時まだ日本の音楽シーンに浸透していなかったR&Bというジャンルを確立させる。2000年にSkoop On Somebodyに改名。その後、花王「ニベアボディー」のCMソング「sha la la」がロングヒットし、2002年発表のシングル「ぼくが地球を救う~Sounds Of Spirit~」が初のオリコンシングルトップ10入りを記録した。2017年2月にデビュー20周年を迎え、10月に6年ぶりのアルバム「State Of Soul」をリリース。2021年12月には、2011年に脱退したKO-HEY(Dr)が再加入。オリジナルメンバー3人でデビュー25周年を迎え、11月にオリジナルアルバム「1997」を発表した。2024年5月には配信シングル「Answer ~歓びの歌~」を配信リリースし、同月より全国12都市50公演のロングツアー「club SOS 2024」を行った。11月にはゴスペルにフォーカスしたアルバム「GOOD NEWS」を発売。11月から12月にかけてクリスマスツアー「Christmas Live Tour 2024」を行う。
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