SixTONESレビュー|前作から2カ月、新シングル「GONG/ここに帰ってきて」をレビュー

2015年に結成され、2020年にYOSHIKI(X JAPAN、THE LAST ROCKSTARS)提供の「Imitation Rain」でデビューしたSixTONES。彼らは結成9~10周年、デビュー5~6周年を盛り上げるべく、今年から2026年までの2年間を「"Raise our VIBES" years 2024-2026」と銘打って活動している。

SixTONESにとって特別な期間の真っ最中に、13枚目のシングル「GONG/ここに帰ってきて」がリリースされた。前作「音色」からわずか2カ月で発表となった今作の表題曲はいずれもタイアップ付き。「GONG」は田中樹が出演した日本テレビ系日曜ドラマ「ACMA:GAME アクマゲーム」の挿入歌で、「ここに帰ってきて」は京本大我が主演を務める映画「言えない秘密」の主題歌だ。カップリング曲は新曲「Are You Mine?」「SPICY」、初の4大ドームツアー「VVS」大阪・京セラドーム大阪公演のライブ音源、そして12thシングルの表題曲「音色」の“Memorial Orchestra Rearrange”バージョン。4大ドームツアーを成功に収め、「ごぶごぶフェスティバル」で野外フェス初出演を果たすなど上昇気流に乗るSixTONESの最新作をレビューする。

取材・文 / 寺島咲菜

絶体絶命のピンチを仲間と切り抜ける

表題曲「GONG」
[作詞・作曲・編曲:Zembnal]

4月から6月にかけて放送された間宮祥太朗、田中樹、古川琴音ら出演の日本テレビ系日曜ドラマ「ACMA:GAME アクマゲーム」の挿入歌。“悪魔の鍵”を巡るデスゲームに挑む人々の姿が描かれたドラマの第1話でこの曲が流れたものの、エンドロールで挿入歌に関するクレジットは一切なし。初回放送から一夜明け、それがSixTONESの楽曲であることが発表された(参照:SixTONES「ACMA:GAME」挿入歌を担当、キャスト田中樹「最初に聞いた時、この曲だなと確信した」)。劇中で主人公たちが繰り広げる、手に汗握る心理戦を強く印象付けたのが「GONG」だった。

この楽曲の特徴と言えるのが、ミクスチャーロック調のサウンドと、ジェシー、京本大我、松村北斗、髙地優吾、森本慎太郎、田中樹のしゃがれたボーカル。随所に轟く雄叫びには、生々しい衝動や底知れぬパワーがほとばしる。サイレンのようにけたたましく響くギターを合図に、6人はむき出しの闘志や勝利への執念、大一番を前にした緊張感を歌う。「逃げ場なんてない」「勝ち目なんてない」「立ちはだかるGiant もう後がない」という歌詞から察するにどん詰まりの状況だが、「負けてやる理由は一つもない」と強気な姿勢を貫くさまは多くのリスナーを勇気付ける。「仲間と笑う瞬間がトロフィー」も心に残るフレーズで、「ACMA:GAME アクマゲーム」の主人公が仲間に救われながら絶体絶命のピンチを切り抜ける姿とも重なる。

「GONG」の作詞、作曲、編曲を担ったのは「君がいない」(2024年1月発売「THE VIBES」通常盤収録曲)以来のタッグとなるZembnal。ロックを真ん中に据えた4thアルバム「THE VIBES」以降、SixTONESの中に燃え続けるロックスピリットをさらに引き出している。

MVでは、別々の場所にいた6人が駆け出し、観客の集まるステージへ。黒い革ジャンを着てアドレナリン全開でパフォーマンスするSixTONESは、さながらロックスターのようだ。

包容力のある歌声とストリングス

表題曲「ここに帰ってきて」
[作詞:MS、Sam Homma / 作曲:MS、Sam Homma、Ryuichi Kureha、Utoro Sunset / 編曲:Ryuichi Kureha、Naoki Itai]

SixTONESの音楽と言えば重低音を効かせたEDMやロックのイメージが強いが、京本が主演を務める映画「言えない秘密」の主題歌「ここに帰ってきて」はストリングスが映えるミディアムバラード。映画では音楽大学で出会った京本演じる湊人と、古川琴音演じる雪乃の切ないラブストーリーが描かれる。

映画のエンドロールで流れ、京本自身も涙を流したというこの曲(参照:SixTONESが映画「言えない秘密」主題歌担当、京本大我「ボロボロ泣きました」)。「Again」(2023年1月発売「声」通常盤収録曲)を作詞したSam Homma、「Something from Nothing」(「THE VIBES」収録曲)や「Good Luck!」(2022年11月発売シングル「Good Luck! / ふたり」の表題曲の1つ)など多数のSixTONES楽曲に参加してきたNaoki Itaiらがコライトで携わっている。

切なさをたたえたピアノの音色で始まり、惹かれ合う湊人と雪乃を温かく包み込むように、流麗なアンサンブルとSixTONESが織りなすハーモニーが響くこの曲。「初めて出会った日のこと 覚えてる?」という歌い出しから、別れた相手への手紙をしたためるように歌詞が展開され、「ここに帰ってきて」というフレーズが計18回繰り返される。あふれんばかりの愛情が、6人のピュアな歌声や開放的なストリングスを通じて表現され、聴く者の心を大きく揺さぶる。

「GONG」のMVでは黒い革ジャンでワイルドにキメていたSixTONESが、「ここに帰ってきて」では純白の衣装に身を包んでいる。映像はパフォーマンスシーンのみで構成され、6人が祈りを捧げるように歌う姿がはかなげで美しい。メンバーが何かを吹っ切ったように穏やかな表情を浮かべるラストシーンにもグッと引き込まれる。

「GONG」の制作者がもう1曲

通常盤カップリング曲「Are You Mine?」
[作詞・作曲・編曲:Zembnal]

「GONG」も書き下ろしたZembnalの手によるヒップホップナンバー。思わず体が動き出しそうなエスニック調のサウンドと、「君がいなきゃ I'm dying.」という切実な歌詞のコントラストが印象的だ。失恋を予感させるリリックがなんとも痛々しく、京本の絞り出すような歌声や髙地のささやくようなボーカルがその絶望感を増幅させる。

この夏をいっそう盛り上げるロックナンバー

通常盤カップリング曲「SPICY」
[作詞:Page Grace、Kanata Okajima / 作曲:Lachlan West、Cameron Walker、Ryan Seaman]

クラップで始まるガレージロック調のナンバー。刺激たっぷりの恋愛模様が描かれており、「PARTY PEOPLE」(「声」収録曲)に通ずる世界観を感じた。作詞にはSixTONESの人気曲「フィギュア」「NEW ERA」の制作にも携わったPage Graceが参加している。今年の夏を熱く盛り上げるであろう「SPICY」を聴くと、ビンテージマイクの前に立ち、サングラス姿で歌い踊るSixTONESが目に浮かぶ。

京セラドームの熱狂を追体験

初回盤Aカップリング曲「Medley from『VVS』at 京セラドーム大阪(Outrageous ~ ABARERO -Dark Electro Rock Remix-)」

初回盤Bカップリング曲「Medley from『VVS』at 京セラドーム大阪(君がいない ~ Alright)」

2月から4月までの2カ月間にわたって行われ、のべ51.5万人を動員したSixTONES初の4大ドームツアー「VVS」。そのうち2月の大阪・京セラドーム大阪公演より「Outrageous」「ABARERO -Dark Electro Rock Remix-」「君がいない」「Alright」が音源化された。初回盤Aに付属するDVDにはドームに異様な熱狂を巻き起こしたキラーチューン「Outrageous」「ABARERO」、初回盤BのDVDにはクールな魅力でファンを惹きつけた「君がいない」「Alright」のライブ映像がそれぞれ収められている。SixTONES史に刻まれたドーム公演の興奮がよみがえる。

SixTONESのアニバーサリーを彩るオーケストラ

通常盤カップリング曲「音色 -Memorial Orchestra Rearrange-」
[作詞・作曲:SAEKI youthK / 編曲:Daiki Okuno、SAEKI youthK]

SixTONESの結成10年目を記念して結成日5月1日にリリースされた12thシングル「音色」(参照:SixTONES「こっから」作者が生み出したアニバーサリーソング「音色」をレビュー)。この特別な1曲が、フルオーケストラの演奏でドラマチックに生まれ変わった。

SixTONES×オーケストラと言えば、彼らが2022年に出演したテレビ朝日系クラシック音楽番組「題名のない音楽会」。SixTONESはクラシック界の第一線で活躍する奏者をバックに堂々たるパフォーマンスを見せ、上質な音楽体験を視聴者に共有した(参照:SixTONES「題名のない音楽会」登場、オーケストラと初コラボで4曲パフォーマンス)。オーケストラとの親和性の高さを印象付けたSixTONES。彼らが音楽ホールを舞台にオーケストラと共演する日が待ち遠しい。


今年は2月から4月にかけてキャリア初の4大ドームツアーを行い、結成記念日の5月1日にシングル「音色」をリリースしたSixTONES。メンバーそれぞれが音楽活動の傍ら、ドラマや映画、バラエティ番組に引っ張りだこで、こちらが心配になるほど多忙を極めているだろう。「GONG/ここに帰ってきて」でさらに音楽性を広げたSixTONESが今後どんな作品を発表するのか楽しみでならないが、くれぐれも体には気を付けてほしい。

プロフィール

SixTONES(ストーンズ)

ジェシー、京本大我、松村北斗、髙地優吾、森本慎太郎、田中樹からなる6人グループ。2018年10月に「YouTube アーティストプロモ」キャンペーンに選ばれた。2020年1月にSnow Manと同時に1stシングルをリリース。デビュー曲「Imitation Rain」はYOSHIKI(X JAPAN、THE LAST ROCKSTARS)が手がけた。同年4月に冠レギュラー番組「SixTONESのオールナイトニッポンサタデースペシャル」がニッポン放送でスタート。最新アルバムは2024年1月にリリースした「THE VIBES」、最新シングルは同年7月リリースの「GONG/ここに帰ってきて」。