SixTONES「こっから」作者が生み出したアニバーサリーソング「音色」をレビュー

SixTONESが結成記念日の5月1日に12thシングル「音色」をリリースした。

表題曲「音色」はメンバーの京本大我が主演を務めているカンテレ・フジテレビ系ドラマ「お迎え渋谷くん」の主題歌。タイアップソングでありながら、結成10年目に突入するSixTONESの歩みとこれからが描かれたマイルストーン的な1曲となっている。結成から丸9年、ジャンルにとらわれず果敢にロックやエレクトロニカ、ヒップホップなどの音楽に挑戦し続け、表現力を培ってきたジェシー、京本大我、松村北斗、髙地優吾、森本慎太郎、田中樹が織りなす“音色”とは。シングルの初回盤A、B、通常盤に収録される楽曲のレビューでその魅力を紐解く。

取材・文 / 寺島咲菜

2012年放送の学園ドラマ「私立バカレア高校」への出演をきっかけに“バカレア組”と呼ばれた6人は、紆余曲折を経て2015年にSixTONESを結成した。グループ名には6つの“音色”(TONE)と音域、それぞれが持つ個性──言わば原石を輝かせようという意味が込められている。2020年にはYOSHIKI(X JAPAN)提供のロックバラード「Imitation Rain」でSnow Manと同時にCDデビュー。SixTONES vs Snow Man名義のスプリットシングル「Imitation Rain / D.D」は先日オリコンが発表した、令和元年の2019年5月から令和5年の2024年1月までの期間を対象に売上を集計した「オリコン令和ランキング」のシングル部門で1位に輝き、令和を代表するヒット曲として世間に広がっている。

名実ともに時代を象徴するアーティストの仲間入りを果たしたSixTONES。彼らの2024年第1弾シングル「音色」の情報は、3月に行われたドームツアー「VVS」福岡・福岡PayPayドーム公演のMC中にサプライズで告知された。

家族、友人、同僚──6人にしかわからないSixTONESの関係性

表題曲「音色」(※全仕様共通)
[作詞・作曲・編曲:SAEKI youthK]

表題曲のタイトルが「音色」だと知り、これはSixTONESにとって特別な曲になると確信した。2021年1月発売の1stフルアルバム「1ST」では“音色盤”という名の初回盤が販売されたり、2022年の京本主演のミュージカルのタイトルが「流星の音色」だったり、“音色”はSixTONESを表すうえで不可欠な言葉だ。

SixTONESがデビュー日以上に大切にしてきた結成日に、ラブコメディ「お迎え渋谷くん」の世界観と、SixTONESらしさを両立させた「音色」が発表できることをメンバーたちはきっと喜んだだろう。作詞・作曲・編曲は、ミュージックビデオの再生数が1.3億回を突破している大ヒット曲「こっから」をはじめとするSixTONES楽曲を多数手がけ、彼らの作品には欠かせない存在となりつつあるSAEKI youthKが担当(参照:SixTONESが“こっから”新たなフェーズへ、10thシングル「こっから」を“熱”を手がかりにレビュー)。ドラマの主人公とヒロインの運命的な出会いを祝福し、未来へと歩みを進める姿が描かれている。

家族、友人、同僚──メンバー6人の関係性を表そうとするといろんな言葉が浮かぶ。ともに手を取り合いながら試練を乗り越え、真摯に音楽を届けてきた積み重ねの日々が「音色」に表れているように思う。中でもジェシーのパートで始まる「一人で生きられない わけでもないのに この道選んでる 目に見えない絆や 運命だとか 信じざるを得ない今がある」は6人の強い信頼関係を連想させ、胸が熱くなった。さらに特筆すべきは、SAEKI youthKが手がけてきたSixTONES楽曲の歌詞とリンクしている点。

「愛や恋 越えて時代や老いも 君と見たい」

「オンガク」の歌詞「愛や恋も飛び越えて Flyer」「時代や老いも君と見たいな」

※「オンガク」は2022年6月発売のシングル「わたし」通常盤カップリング曲。2023年1月発売のアルバム「声」には「オンガク -声ver.-」収録。


「しわとしわ合わせ 幸せつくろうぜ」

「人人人」の歌詞「シワとシワ合わせていただくぜシアワセな" "」

※「人人人」はアルバム「声」収録曲。2023年4月発売のシングル「ABARERO」通常盤には「人人人 -PLAYLIST Performance Day.6 ver.-」収録。


「こっから始まんだ僕ら」

「こっから」の歌詞「こっから始まんだ」

※「こっから」は2023年6月発売の10thシングルの表題曲。2024年1月発売のアルバム「THE VIBES」収録曲。

SixTONESのデビューから彼らの音楽に深く携わってきたSAEKI youthKだからこそ、このような歌詞を成立させられたのだろう。SixTONESの過去の楽曲を思い返すさりげない仕掛けが、ファンの心をくすぐる。さらに、6人それぞれのメンバーカラーが盛り込まれた「赤 青 黄色 原色だって ピンク 緑色 真っ黒だっていい」というフレーズもあり、細部にわたってSixTONES愛にあふれている。ストリングスやホーンが織りなすサウンドも、ポップでカラフル。親しみやすいメロディに乗せて紡がれるアンサンブルは、一聴するだけで幸福感をもたらし、SixTONESの結成10年目突入を華々しく彩っている。終盤にはアカペラパートが用意され、瑞々しいエネルギーに満ちた6人の声が重なりドラマチックな展開に。澄みきった彼らのハーモニーに自然と心が浄化される。SixTONESのアニバーサリーソングではあるが、忙しない日常を過ごす人々にとっては、この曲が大切な誰かを思い出すきっかけになるだろう。

YouTubeでは「音色」のミュージックビデオを公開中。秘密基地のようなセットや土手を舞台にSixTONESが飾らない表情でパフォーマンスしている。6人の幼少期を演じる子役も登場する、ハートウォーミングな内容だ。

9年前の曲を再アレンジ

初回盤Aカップリング曲「BE CRAZY -Rock Rearrange-」
[作詞:ma-saya / 作曲:STEVEN LEE / 編曲:STEVEN LEE、Shuko Tateyama]

SixTONES結成の年に誕生した反骨心あふれるキラーチューンが、ワイルドなギターロックに生まれ変わり、再レコーディングされた。荒々しいサウンドとともに、どんな局面にも怯むことなく、未来へと突き進む6人の姿が鮮明に浮かび上がる。

ファン人気の高いラブソングがロックに生まれ変わる

初回盤Bカップリング曲「Hysteria -Rock Rearrange-」
[作詞:Komei Kobayashi / 作曲:KAIROS / 編曲:KAIROS、K.O]

デビュー前から、色気に満ちたパフォーマンスがファンの間で人気を集めている「Hysteria」。今やSixTONESの代名詞とも言える英語を多用したラブソングは、この曲が原点かもしれない。“Rock Rearrange”バージョンではループするギターのリフにベース、ドラムが重なり、重厚なロックサウンドが構築されている。歌詞にメンバーカラーや“SixTONES”というフレーズが何気なく登場するのも特徴の1つ。「BE CRAZY」とともに今の6人の歌声で新たにレコーディングされた。

失恋の痛みを描くヒップホップチューン

通常盤カップリング曲「ONE by ONE」
[作詞:Takuya Harada / 作曲:Ricardo Burgrust、Takuya Harada、Jacob Watson / 編曲:Ricardo Burgrust]

「Alright」「WHY NOT」「JAPONICA STYLE」も手がけたTakuya Harada、「Chillin' with you」「Odds」の作曲にも参加しているRicardo Burgrust、Sexy Zone「Green Light」の作詞作曲に携わったジェイコブ・ワトソンによるヒップホップテイストの失恋ソング。グルーヴィなサウンドに乗せて、喪失感に苛まれる“俺”の心情が描かれている。「Baby これ以上 don't take it No more pain『本当は冗談』」で始まるリリックには幸せな記憶と“君”への未練がつづられているが、オートチューンの効いたボーカルだからか、あまり痛々しさは感じない。

SixTONES特有の“やかましさ”でライブを盛り上げる

通常盤カップリング曲「LIKE THAT」
[作詞:CLAUDE S. / 作曲:Ludwig Lindell、Takuya Harada / 編曲:Ludwig Lindell]

色めき立つ金曜の夜を盛り上げるEDMチューン。ハツラツとした“LIKE THATコール”が、いい意味でSixTONESならではのやかましさを表していて、ライブ映えすること間違いなし。小気味よいビートの上でメンバーが日本語詞と英語詞を自在に操っている。作家陣は「SPECIAL」「TOP SECRET」を作詞したCLAUDE S.、K-POPの楽曲を多数手がけ、Snow Man「slow...」の作編曲にも参加したスウェーデンのアーティスト・Ludwig Lindell、「ONE by ONE」の制作陣の1人でもあるTakuya Haradaという顔ぶれだ。

メタルの流れ

通常盤カップリング曲「CREAK -AGGRESSIVE METAL Rearrange-」
[作詞:Seiji Takagi / 作曲:Kengo Kuwata、Seiji Takagi / 編曲:Kengo Kuwata、Peach]

ロックを軸とした最新アルバム「THE VIBES」の収録曲「Something from Nothing」でヘヴィメタルに挑戦したSixTONES。2023年8月発表の11thシングル表題曲「CREAK」がその流れを汲むようにメタルサウンドにアップデートされた。ヘビーなドラムや鮮やかなギターのチョーキングが「CREAK」の世界観に奥行きをもたらしている。


「音色」の初回盤Aと初回盤BにはSixTONESの新たな試みとして、新旧の楽曲を織り交ぜたDJミックスも収録されている。初回盤Aの「SixTONES nonSTop DJ MIX vol.1」、初回盤Bの「SixTONES nonSTop DJ MIX vol.2」は被りなしの24曲で構成される、33分のDJミックス。シングル作品としてはかなりぜいたくな内容で、結成丸9年を迎えたSixTONESからのプレゼントとも受け取れる。

SixTONESは5月に大阪・万博記念公園もみじ川芝生広場で行われる、浜田雅功(ダウンタウン)が指揮を取る音楽フェス「ごぶごぶフェスティバル」に参加。念願のフェス初出演となる。さらに、田中が出演している日本テレビ系日曜ドラマ「ACMA:GAME アクマゲーム」の挿入歌「GONG」も話題を呼んでおり(参照:SixTONES「ACMA:GAME」挿入歌を担当、キャスト田中樹「最初に聞いた時、この曲だなと確信した」)、10年目、そしてその先の活躍にも期待がかかる。赤、青、黄色、ピンク、緑色、真っ黒──SixTONESが描く未来はどんな“色”だろう。

SixTONES「音色」通常盤初回仕様スリーブケース

SixTONES「音色」通常盤初回仕様スリーブケース

プロフィール

SixTONES(ストーンズ)

ジェシー、京本大我、松村北斗、髙地優吾、森本慎太郎、田中樹からなる6人グループ。2018年10月に「YouTube アーティストプロモ」キャンペーンに選ばれた。2020年1月にSnow Manと同時に1stシングルをリリース。デビュー曲「Imitation Rain」はYOSHIKI(X JAPAN、THE LAST ROCKSTARS)が手がけた。同年4月に冠レギュラー番組「SixTONESのオールナイトニッポンサタデースペシャル」がニッポン放送でスタート。最新アルバムは2024年1月にリリースした「THE VIBES」、最新シングルは同年5月発表の「音色」。日本テレビ系で放送中の間宮祥太朗主演、田中樹共演のドラマ「ACMA:GAME アクマゲーム」では挿入歌「GONG」を歌唱している。