どんどん行け！「リカ」

──次の「HAYABUSA」で、一転してSIX LOUNGEらしい、前のめりのエイトビートの曲が来るという。

ナガマツ　（笑）。これこれ！って感じですよね。

ヤマグチ　この曲は、アルバムのタイトルもまだ決まっていないときからあって。当初はリード曲の候補でしたね。SIX LOUNGEっぽさもありつつ、ギターロックを俺らが噛み砕いてやってる感じがいいかなって。「キタカゼ」と通ずるものがあるから、こういう曲が俺らの王道だと言う人もたくさんいるだろうなと思って、書いていきました。

──中盤のいろんな楽曲を聴いていると、どの曲が王道か決められないというか、気持ちよく翻弄されました。このアルバムでSIX LOUNGEのロック自体の枠がグッと広がったと思います。

ヤマグチ　そう言ってもらえるとうれしいです。

──後半はバラードも増えてきますが、「僕と心臓」は完全にピアノの弾き語りで。ヤマグチさんが演奏されているんですね。

ヤマグチ　最初からピアノの弾き語りの曲というイメージで作っていったわけではなくて、いろいろ試した結果、ピアノで歌ってみたらいい感じだったので、このアレンジになりました。たまに、ロックバンドのフルアルバムに1つだけピアノメインの曲が入っていることがあるじゃないですか。もともとそういう曲がすごく好きで、前々からやってみたいと思っていたんです。だから、めっちゃ練習しました。

──確かに、アルバムの中で1つポイントになっていますよね。そして、シンプルなバラードに対して「骨」という情熱的なバラードもあり、最後は「Paper Plane」という疾走感のあるロックで締めくくられます。シングルとしてリリースされている曲ですが、改めてアルバムの最後の曲にした決め手はなんだったんですか？

ヤマグチ　作ったときは全然アルバムのことは頭になかったんですけど、アルバムにどんな曲を入れようかと話しているときから、「Paper Plane」は最後のほうかなというイメージはありました。安心感がありますよね。

──最後にメッセージがしっかり残りますね。さらに、初回限定盤にはボーナストラックとして、再録曲が2曲収録されるということで。まず「リカ」は、aikoさんが音楽番組で歌詞を紹介したことから、改めて注目されました。TikTokでバズった気持ちはいかがですか？

ヤマグチ　いやあ、もうどんどん行け！って感じでした（笑）。

──歌詞がきっかけだったわけですが、ナガマツさん的には？

ナガマツ　やっぱりうれしいですよ。当時は今言われてるような狂気的な感じを意識して書いた詞ではなかったと思いますけど。普通にラブソングとして書いていたので、話題になったときは「おお、そこが反応されるんだ」って思いました。若くて恥ずかしいみたいな気持ちはまったくないですし、見つけてもらえてすごくうれしかったです。

──再録では、基本的にアレンジは原曲のままですか？

ヤマグチ　そうですね。個人的な好みとして、再録で余計なことをされると嫌なんですよね。それで、結局オリジナルバージョンばかり聴いてしまうことも多いので。だから、ある程度原曲に寄り添って再録しました。10年近く経って個々の技術面は上がっているので、ちゃんと変化は感じてもらえると思います。

イワオ　テンポを少し落として、ハモりを付けたくらいですね。昔のよさもあるし、再録にしかないよさもあるので、両方とも聴いてほしいなと思っています。

──もう1曲の「夢みた君が大好きだ」はいつ頃の曲なんですか？

ナガマツ　これも、2016年の「東雲」の頃に作った曲で。アルバムには入れずに、当時ライブ会場限定CDとして売っていたんです。それが廃盤になってから、コロナ禍に制作された「BornFromLiveHouse V.A」というTHE NINTH APOLLOのオムニバスに収録されていて、改めて今回録り直しました。

──再録ならではの面白さもあったんじゃないですか？

ヤマグチ　そうですね。単純に、こういう機会がないと昔の曲を聴くタイミングもないですし。聴いてみて、「わあ、ヘタやな」とか思いながら（笑）、楽しめました。

いい曲がたくさんでき始めている

──そして、10月から来年にかけて、アルバムをひっさげてのロングツアーが開催されます。幅広い楽曲がそろったアルバムになっているので、ライブのセットリストはいろいろ試せそうですが、ライブのイメージは見えていますか？

ヤマグチ　まだ詳しく考えてはいないですけど、これだけ曲に幅があるので、ワンマンでも飽きさせないセットリストにできるかなと思います。

イワオ　今まである曲たちと合わせてやると、ライブの幅がグッと広がりそうだなと。

ナガマツ　ライブ映えする曲も多いので楽しみです。ただ、まだアルバムの新曲を3人で練習できていないので（笑）。どうなるかわからない感じも含めて楽しみたいですね。

──「僕と心臓」は、ライブでもピアノ弾き語りで？

ヤマグチ　どうだろう……。そういう演出がちゃんと映えそうなツアーがあれば、披露してみようかなとは思いますけど。10月からのツアーでは、ピアノを持ち込むのは難しそうですね。Museみたいに、ギターを後ろに背負って、立って弾くのもありかな？ そんな雰囲気の曲でもないか。

イワオ　いっそショルダーキーボードで、インカム付けて歌えば？（笑）

ヤマグチ　はははは！ それはヤバい（笑）。具体的なことはまだこれからですけど、気持ち的には準備万端です。絶対いいツアーになると思います。

──ツアーは来年まで続きますが、ここからバンドとしてどうなっていきたいか、先に描いているものはありますか？

ヤマグチ　今回のアルバムでもたくさん新しい曲を入れられましたけど、まだまだいっぱいいい曲ができ始めているんです。いずれ、それも全部聴いてほしいと思っているし、「リカ」のおかげでお客さんの層もちょっと広がったので、もっともっとたくさんの人に届くことを願うばかりです。まずはアルバムを聴いてもらって、ライブを観てもらったら間違いないと思います！