Carlos K.のアレンジに驚き
──リード曲の「エバーグリーン」は、ストリングスがしっかり入っていて、J-POPとして聴ける普遍的なバラードに仕上がっていますね。
ヤマグチ 「エバーグリーン」はひさしぶりに詞から作った曲なんです。先に詞をシンタロウからもらって、弾き語りをしながらメロディを付けていきました。弾き語りで作ること自体がひさびさだったんですけど、すんなりメロディができていって。サビで転調して、パーッと広がっていく感じもうまくハマったし、作っているときからリードになりそうな気配を感じていました。あと、もともとゴリゴリにストリングスが入ったアレンジをやってみたくて、「キタカゼ」のアレンジをしてもらったCarlos K.さんにイメージを伝えて作ってもらったんです。Carlosさんからデモが返ってきたら、ストリングスの音がシンセでがっつり入っていて、「こんなに変わるんや!」とちょっとびっくりしました(笑)。でも、本番は生で録ってもらったので、ちょうどいい塩梅になりましたね。ストリングスのアレンジもめっちゃ気に入っています。
──ここまで入ると新鮮ですよね。
ヤマグチ そうですね。でも、「相合傘」(「ジュネス」収録曲)という曲でもストリングスは入れたので、そこまで抵抗はなかったです。
──歌への影響はありましたか?
ヤマグチ 歌録りは時間がかかるんだろうなと思いながら覚悟して行ったんですけど、思っていたよりもスルッと気持ちよく歌えました。ひさびさにアコギで歌いながら作ったから、自分的に歌いやすいキーなんですよね。より気持ちを込めて歌えたと思います。
──ナガマツさんは、詞を書いた時点で仕上がりをイメージしていたんですか?
ナガマツ いや、バラードかな?と思って、テンポ感をイメージしていたくらいでした。ストリングスもいいし、ぴったりなアレンジだと思います。
イワオ Carlosさんに頼んでよかったと思いましたね。この曲のオケが、アルバムレコーディングの最後に録ったんですよ。だから、「これを録ったら終われる!」という気持ちがあったので、ほかの曲よりもちょっと気持ちが入っていたかもしれないです(笑)。
ナガマツ はははは!
ヤマグチ 単純に音数が多いので、工程的に最後になったんですよね。ストリングスを録りながら「すごいなあ、プロは」と思っていました(笑)。
仮タイトルは「鬼刻み」
──重厚な「エバーグリーン」のあとに、「モモコ」という直球のロックンロールが来るのがいいですよね。
ナガマツ シビれますね(笑)。
ヤマグチ ははは。聴き手を飽きさせないようにという狙いもありつつ、こういう曲もあるぞというギャップを出せたら面白いなと思って。「モモコ」は完成するまで早かったですね(笑)。実際のプレイのことを何を考えずにデモを作ったので、キックの数とかが人間には叩けないくらい多かった気がするんですけど。シンタロウにそれを投げたら、調整しつつ、わりとそのままやってくれています。
ナガマツ 汗だくでやりました(笑)。仮タイトルが「鬼刻み」だったんですよ。
──(笑)。イワオさんはいかがですか?
イワオ これこれ!って感じでした。でも、歌詞ができて歌が入ったことで、またイメージが変わりましたね。ファルセットで歌っていて、もっとカッコよくなったなって。
ヤマグチ この歌い方はデモのときからそうしていて。そこに、ちょっとミスマッチな歌詞が乗ることで、狂気感とか変態感が増していいなと思いました。
──ルーツを感じさせつつ、ちゃんと今のSIX LOUNGEらしさもある質感になっていますよね。
ヤマグチ そうですね。シンプルなだけでは終わっていないので。最後にベースだけ音が上がっていくところとか、昔だったらできないようなアレンジだと思います。
「もう絶対飲みたくないです」からの「ちょっと強めのお酒でも飲もうよ」
──「モモコ」からの中盤は本当に多彩な楽曲がそろっているので、順番に伺っていきたいと思います。次は「宿酔」で、お酒が好きなSIX LOUNGEのテーマ曲みたいな印象もありますが……。
ヤマグチ ははは! ある意味そうかもしれない。
ナガマツ アルバムの中で最後に書いた歌詞なんです。ちょっと寝坊してドラム録りのレコーディングに行ったら、スタジオの前に二日酔いのリクがRancidの「...And Out Come The Wolves」のジャケットみたいに座り込んでいて(笑)。それを見て、これだ!と思ったんです。一番身近なのに、意外と二日酔いというテーマには触れてなかったなって。
イワオ そこからだったんだ?(笑) 結局、その日はそのまま帰りまして。夜7時頃に復活して、さすがに申し訳ないので「今からなら行けます」と連絡したんですけど「明日でいいよ」と言われました……。
ヤマグチ まあ、この曲はたぶん全人類が共感できるんじゃないですか?(笑) 飲めない人も、ちょっと飲んで二日酔いになっちゃったことがあるだろうし。自分も、二日酔い感にこだわって、気持ちを入れて何パターンか録りましたね。で、最後に「もう絶対飲みたくないです」と言っているくせに、次の曲でもう……。
イワオ 誘いに来てる(笑)。
──「エニグマ」に「ちょっと強めのお酒でも飲もうよ」というフレーズがありますね(笑)。
ナガマツ そこまで含めて、お酒あるあるですね。
ヤマグチ ははは!
SCOOBIE DOマツキさんのおかげでエロい感じが出せた
──そして、その「エニグマ」は、後ノリなグルーヴとR&B的なメロディの曲で。今までのSIX LOUNGEにはない曲調ですよね。
ヤマグチ そうですね。リファレンスになった、とある有名なドラムフレーズがありまして。完全にそのフレーズからできた曲なんですけど、意外とこういう曲もいけるなんだなと思いました。幅が一気に広がった気がします。
──リズム隊としては、新鮮なアプローチだったんじゃないでしょうか。
ナガマツ 個人的に、この雰囲気はやっていて楽しいです。ガタイのいい黒人ドラマーみたいなつもりで叩きました。
イワオ シティポップとかそっち寄りの音楽も聴いていたりするので、いろいろ参考にしましたね。ドラムのテックさんに「人じゃなくて機械みたいにやればいい」というアドバイスをもらったりして。ある意味、今までの自分を捨てて新たな扉を開きました。できあがったときはすごく満足できて、シティポップバンドとしてもいけるんじゃないかと思いました。デモをもらったときはベース録りが長くなりそうやな……と思ったんですけど、バンドスタイルで「せーの」で録ったら思いのほか早く終わったんですよ。
ヤマグチ アレンジをお願いしたSCOOBIE DOのマツキ(タイジロウ)さんにギターも弾いてもらって、4人でジャムりながら録っていきました。マツキさんはもともとジャズとかファンクをやっている人なので、いい感じになったのはマツキさんのおかげというか。マツキさんのエッセンスが入ることで、大人のエロい感じが出せたと思います。だから、マツキさんのギターがないとかなり寂しいんですよね。
──ライブは3人だけになるので、アレンジが少し変わりますか?
ヤマグチ そうなんです。どこを抜粋して再現するかを考えなきゃいけないなあと。ライブでは、もうちょっとシンプルになるかもしれないです。
──歌い方も、少しテイストを変えていますよね。
ヤマグチ そうですね。ほかの曲とはけっこう違って、リズムをすごく意識しました。それがなかなか難しくて、歌録りに一番時間がかかった曲ですね。それこそ後ノリの絶妙なリズム感というか、昔からそういうものに触れていないと歌えないような感じだったので、食らいつきながら歌いました。ソウルミュージックとかは好きで聴いていたんですけど、歌ったことはなかったので、初めての体験だったんですよね。こういうノリをライブで一発で出している人たちは、本当にすごい歌い手なんだなと思いました。
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どんどん行け!「リカ」