SIX LOUNGEインタビュー|移籍後初のフルアルバムで高らかに響かせる“FANFARE”

SIX LOUNGEがソニー・ミュージックレーベルズに移籍後初となるフルアルバム「FANFARE」をリリースした。

昨年ソニー・ミュージックレーベルズへの移籍後、テレビアニメ「僕のヒーローアカデミア」6期第2クールのエンディングテーマ「キタカゼ」を書き下ろし、2016年6月発売のアルバム「東雲」の収録曲「リカ」がTikTokを中心にバズるなど、従来のリスナー以外からも注目を浴びているSIX LOUNGE。変革の季節を経て完成した「FANFARE」には、柔軟に進化したサウンドと、SIX LOUNGEの変わらない芯が刻まれている。パンクスピリットがみなぎる「アナーキー・イン・ザ・人生」から、一転して優しく包み込むようなバラード「エバーグリーン」、サイケデリックなロックンロール「モモコ」にR&B調の「エニグマ」など、“SIX LOUNGEのロック”を再定義する多彩な楽曲群に驚かされるはずだ。

さらに、初回限定盤にはボーナストラックとして「リカ」「夢みた君が大好きだ」の再録バージョンも収録。追い風の中にいる3人に、「FANFARE」に込めた思いと現在地を語ってもらった。

取材・文 / 後藤寛子撮影 / 後藤壮太郎

1曲目は俺らなりのファンファーレ

──「FANFARE」の初回限定盤は16曲、通常盤は14曲入りというボリュームになりましたが、制作はいつ頃行っていたんですか?

ヤマグチユウモリ(G, Vo) 昨年10月にリリースした「ジュネス」あたりや、最近のライブの合間に作り溜めていた曲から、みんなで選んで仕上げていきました。移籍前に作った曲もあれば、ソニーでのリリースを経て作った曲も両方あります。常に曲作りはしていたので、時間が許す限り録りまくろうということになって。まだ入れたい曲もあったし、もしレコーディングが早く終わっていれば、さらに録って18曲くらいになっていたかもしれない(笑)。

SIX LOUNGE

SIX LOUNGE

──曲がどんどん生まれているんですね。では、まず今作の手応えから教えてください。

ヤマグチ すごくいいアルバムだと思います。これまでの俺ららしさもありつつ、新しい感じもあって。個人的には、昔からやりたかったことをいろいろ詰め込むことができた実感があります。

ナガマツシンタロウ(Dr, Cho) ソニー・ミュージックレーベルズに移籍してから、新しいことに挑戦したり、試してみたりしてたから次のアルバムはどうなるんだろうと思っていた人もいると思うんですけど、いい意味で期待を裏切りつつ、自信を持って発表できるアルバムになりました。皆さんの反応が楽しみなので、早く聴いてほしいです。

イワオリク(B, Cho) 前作「3」(2021年4月発売のアルバム)よりもさらにバラエティに富んでいて、音楽性の幅が大きく広がった感じがします。ジャケのデザインも新鮮で気に入っているし、自信作ですね。あと、今回、初めて先にアルバムタイトルを付けたんですよ。まず「FANFARE」というテーマを先に決めてから、曲を選んだり、作ったりしていったので、1枚のアルバムとしてまとまっていると思います。

SIX LOUNGE「FANFARE」初回限定盤ジャケット

SIX LOUNGE「FANFARE」初回限定盤ジャケット

SIX LOUNGE「FANFARE」通常盤ジャケット

SIX LOUNGE「FANFARE」通常盤ジャケット

ヤマグチ 曲がそろってきて、どの曲を仕上げていくかという段階で、先にアルバムタイトルを決めることになったんです。「FANFARE」はシンタロウが持ってきた言葉なんですけど、3人ともしっくりきて。“ファンファーレ”という言葉に対するイメージがみんな一緒だったから、いいバランスでまとまったのかなと思います。

ナガマツ “ファンファーレ”には、誇示するという意味もあるので、自分たちがやっている音楽を一番カッコいい状態で「どうですか?」と提示するイメージですね。

──ファンファーレというと、トランペットで高らかにスタートするような、華やかなイメージがあります。

ヤマグチ ラッパをイメージしますけど、“短くて勇ましい曲”みたいな意味合いもあるらしくて。1曲目の「アナーキー・イン・ザ・人生」が1分くらいの曲になっていて、俺らなりのファンファーレなんです。

──「ねえ、真面目じゃいられない!」という始まり方が最高だと思いました。アルバムの1曲目として書いた曲だったんですか?

ヤマグチ 全然そういうわけではなく、なんとなく短い曲が作りたくて。続きが欲しいって言われたらどうしようかなと思いながら提出したら、「このままがいい」ということになりました。リード曲が「エバーグリーン」に決まったあとだったので、アルバムを再生した瞬間にちょっと裏切りたいなという気持ちもあったんですよね。

──確かに、「キタカゼ」「Paper Plane」とキャッチーなシングルが続いて、リード曲がバラードの「エバーグリーン」だと思ってアルバムを聴くと、この1曲目のインパクトが大きくて。よりワクワクしましたね。

ナガマツ 制作しているときのイメージだと、俺としては2曲目の「俺たちのファンファーレ」が1曲目のイメージだったんです。でも、いざ曲順を決めるときに、「『アナーキー・イン・ザ・人生』でどう?」という話が出て、めっちゃいい!と思いました。

イワオ 1曲目で大正解だと思います。

仮タイトル「壮大」

──「アナーキー・イン・ザ・人生」と「俺たちのファンファーレ」の2曲で、今のSIX LOUNGEのスタンスが伝わってきます。ギターリフで始まる「俺たちのファンファーレ」はダイナミックなグルーヴと、広がりのあるサビのメロディが耳に残る曲で。勢いだけではなく大人っぽさも感じました。

ヤマグチ おお、うれしいです。デモができたときの仮タイトルが「壮大」で(笑)。Aメロのフロアタムのリズムを使って、とにかく壮大な曲を作りたかったんです。デモにドラムを打ち込むとき、すごいリバーブをかけたりして(笑)。

──スタジアムライブの音源みたいな。

ヤマグチ そうそう。そういうイメージでした。

──リズム隊として、その壮大さはどう表現していったんですか?

ナガマツ どしっと構える感じを意識しました。

イワオ こういう壮大な曲はこれまでのSIX LOUNGEにはあんまりなかったので、レコーディングでも、わりと話し合いながら進めていきました。「ここはベースなくていいんじゃない?」とか。

SIX LOUNGE

SIX LOUNGE

ヤマグチ この曲、リクが弾きたがらなくて。休みたがってた(笑)。

イワオ 違う、違う(笑)。そういう意味じゃなくて、壮大さを出すためにも、抜くところは抜いて、どこでベースが前に出てくるかが肝だなと思ったんです。

──なるほど。できあがってみてどう感じました?

ヤマグチ 壮大さを加速させる歌詞も付いて、俺が想像していたものよりもっとよくなりました。さわやかですけど、さわやかだけじゃない感じがあっていいですよね。

──ちゃんとロックの熱が宿っていますよね。歌詞はどういうイメージで書かれたんですか?

ナガマツ どの曲も、歌詞は自分に対してや、メンバーに対して書いているところはあります。この曲は、特にお客さんへのメッセージでもあるかな。俺たちも、お客さんたちも、コロナ禍でうまくいかないことがたくさんあったと思うので。じゃあ、もういっちょここから始めようか、みたいな気持ちですね。

ヤマグチ 最近知ってくれた人たちもそうだし、昔から俺らを知っている人たちも引き連れて進んでいけそうな力強さがいいなと思いました。