ナタリー PowerPush - SISTER JET

夢見てガムシャラに生きるみんなに贈る「YOUNG BLUE」

夢見てガムシャラに生きるのはカッコ悪いけど、そういう奴になりたい

──「しろくま」でのリスナーを奮い立たせるような力強い歌詞は、まさにバンドの最近のモードが顕著に出ているような気がしますね。

ワタルS 3年前だったら心にしまってた気持ちだよね。それをシャウトしてえって思ったの。

──どうして白熊がテーマなんですか?

ワタルS かわいいキャラクターみたいに思われがちだけど、ツアーで札幌に行ったときに円山動物園の本物を見たらすごかったんだよね。でかくて、臭くて、なんかブヒブヒ言ってて、何をするわけでもなくウロウロしてて。それ以来ものすごく気になってさ。その後「北極のナヌー」って野生の白熊のドキュメンタリー映画を観たんだけど、環境がハードすぎて半分は死んじゃうんだって。

──へえー!

インタビュー風景

ワタルS 2週間も飯が食えないことはザラで、15km先のアザラシを嗅ぎつけて追いかける生活。で、基本的に2歳くらいになると、お母さんは子どもを捨てちゃうの。もう食わしてけないから。優しかったお母さんが鬼みたいなすごい顔になって「おめえ向こう行け!」って。仕方なくひとりぼっちで生きてくんだけど、2頭に1頭は死んじゃうっていう。

──過酷なんですねえ。

ワタルS その映画には白熊が寝てるシーンがあるんだけど、なんの夢見てるんだろうな、きっと腹いっぱいアザラシ食ってる夢しか見てねえんだろうな、って思ってたら「なんで生きるんだろうこいつらは」って気持ちになって。でも、誰でもみんな生まれてきたから生きるだけで、夢見てガムシャラに生きるってカッコ悪いかもしれないけど、それでも俺はそういう奴になりたいって思ったの。「しろくま」はそういう歌。

──そこに生まれてきてしまったんだからそこで生きるしかない?

ワタルS だし、そこで生きてくんだったら楽しく生きなきゃいけないよね。ただ、楽しいことばっかりやって“ずっと夢を見て安心してた”らダメだけど。

──ああ、シングル「しろくま」のカップリングに収録された「デイ・ドリーム・ビリーバー」のカバーにつながるんですね(笑)。

ワタルS そう。世の中にはつらいこととか嫌なことのほうがやっぱり多いよ。ただね、そうなったときにどうすることを選ぶのかが大事なんじゃないかって気がするんだよね。

アルバム単位で通して聴いてほしい

──アルバムを通して聴くと、前半の曲は10代くらいの若者の視点で歌われているのに対して、後半の曲は大人の目線で若者に向けて歌ってるように感じました。

ワタルS 確かに、曲が進むにつれてだんだん今の自分に近づいてきますよね。無意識にこうなったんだけど、この曲順の座りが良かったのはきっとそれが理由なのかな。だから最後の曲「30」が一番等身大の曲なのかもしれないね。ほんの少しのため息みたいな曲で。

──歌い出しの「昔の話のせいかな」っていうフレーズは、それまでのアルバム曲を振り返って言ってるのかなと思って。ある意味、半生記みたいなアルバムなんですね。

ワタルS そんな感じかもしれない。だからアルバム単位で通して聴いてほしいですよね。あと、同年代にぜひ聴いてほしい。

──聴いた人にどう感じてもらいたいですか?

ワタルS このアルバムって自分が実際に見た景色を歌っているんですよ。今までは想像した景色というか、イメージから作った曲も多いんだけど。だから聴いた人それぞれが自分のこととして思い描いてくれたらいいなっていうのはある。今19歳くらいの子が聴いたらどんな景色を思い浮かべてくれるかなとか。俺らと同い年くらいの奴が「30」を聴いたら、「昨日の飲み会で、俺がしつこく誘っちゃった1杯のことを思い出すな」とか、そうやって楽しんでもらえたらいいなって。

サカベ うん、思うままに聴いてほしいです。

ケンスケ それぞれで感じてもらえればうれしいよね。意外と僕らみたいな音楽鳴らしているバンドって少ないと思ってるんです。とっつきにくい音楽をやっているとは思ってないし。だけど、誰かにとっての特別な存在にはなりたいと思ってるんです。

このアルバムがめちゃ叩かれたとしても「関係ないね」って感じ

──以前までと比べて、今後こうなりたいという目標に変化はありますか?

ケンスケ 自分たちが何を鳴らすべきか、日々見つけるってことがとても大切だと思うので、目標はその時々によって変わっていくものでいいんじゃないかな。

サカベ 今の俺は、多くの人が夢を見れるような、人懐っこいポップな楽曲を作りたいと思ってます。

ワタルS 俺は昔よりも、もっともっと自然体でいたくなってきた。ガチガチにカッコつけてるのってカッコ悪いなって最近思うようになって。「運命なんて変えろツアー」がすごく良くて、昔のSISTER JETみたいなライブを観てもらえたからかな。ツアーで自分らのカッコよさを証明できたから、この先、例えばこのアルバムがめちゃ叩かれたとしても「関係ないね」って感じです。

インタビュー風景

SISTER JET "Dear My Friends" MV

ニューアルバム「YOUNG BLUE」 / 2012年6月6日発売 / 2500円(税込) / felicity / PECF-1047

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CD収録曲
  1. Dear My Friends
  2. 17 (SEVENTEEN)
  3. I Wonder
  4. Young Pretender
  5. トーキョーミッドナイトブレイクダウン
  6. (Almost) Young Blue
  7. 「南風」
  8. しろくま
  9. ヘヴン
  10. ダーティ・プリティ・ドッグス
  11. JETCOASTER LAG
  12. 30
SISTER JET(しすたーじぇっと)

SISTER JET

東京・福生界隈に住むワタルS(Vo, G)、ショウサカベ(B)、ケンスケアオキ(Dr)からなるロックバンド。老舗ロックパブ・福生uzuでバンドの基礎体力を養い、2005年頃から下北沢、渋谷のライブハウスに進出する。2006年には「FUJI ROCK FESTIVAL '06」のROOKIE A GO-GOステージに出演。知名度を着実に高め、2008年6月に1stミニアルバム「our first love EP」を発表する。ラブソングに徹底的にこだわり、思春期特有の普遍的な思いをポップでキャッチーなサウンド&メロディに乗せた楽曲が魅力。2009年5月には初のフルアルバム「三次元ダンスLP」を発表し、2012年には3枚目のフルアルバム「YOUNG BLUE」をリリースした。