ナタリー PowerPush - SING LIKE TALKING
年半ぶり新作で本格復活! アルバム制作の裏側に迫る
広く深い音楽的造詣に裏打ちされた滋味豊かなサウンドと洗練されたメロディラインという色褪せることのない魅力を携えて、SING LIKE TALKINGが帰ってきた! 2003年のアルバム「RENASCENCE」から実に7年半ぶり、先行シングル「Dearest」を経て届けられたニューアルバム「Empowerment」はそのタイトルからもうかがえるとおり、それぞれがソロ活動で磨き上げてきたプレイヤビリティが和となって作り上げた、円熟味とみずみずしさを併せ持つ作品なのである。
取材・文/久保田泰平
久しぶりのライブで「次はいつやるんですか?」
──7年半ぶりの再始動ということで、まずはここに至るまでの流れから聞かせてください。
佐藤竹善(Vo, Key & G) 一昨年、FM802主催の「RADIO MAGIC」っていうイベントがありまして。ラジオを愛するアーティスト、FM802に縁のあるアーティストが集まったイベントだったんですけど、それにSING LIKE TALKINGとして出ませんかって声をかけていただいたのが始まりなんです。僕はずっとFM802でレギュラー番組をやってましたし、SING LIKE TALKINGでしばらく活動していないのは局の方もよく知っていたわけですけど、それでもあえて声をかけてくださったっていうことに対して、スタッフの深い思いが感じられたし、プロデューサーとも長い付き合いだったので、僕らもそれに対して嫌とは言えない。で、イベントに出ようってことを3人で決めてから実際にリハーサルをして本番をやってみたら、共演したミュージシャンの人たちからも「次はいつやるんですか?」とかって声をたくさんいただいたんです。
西村智彦(G) 僕は活動休止中ずっと裏方の仕事ばかりで、ライブをやってもバックバンドのひとりだったので、いざフロントに立って「大丈夫かな?」なんて思ってたんですけど、いざステージに立ったらめちゃくちゃ楽しかったんです。やっぱり3人でやると独特の空気感が生まれてくるんで、「ああ、これだこれだ!」っていう懐かしさもあり、それがまた新鮮でもありっていう感じで。
藤田千章(Syn, Key) うん、落ち着ける感じはありましたね。僕こそ最近は引きこもりで作業というか、まぁレコーディング以外の仕事はまったくしてなかったんです。だから、ステージに立つということ自体が久しぶりのことだったんですけど、実際にステージに立って音を出せば僕らにしか出せない感覚があるんだなって思ったし、それはとても良かったですよね。
佐藤 一番大きかったのは、3人で一緒に演奏してとても楽しい時間を過ごせたということ。終わってみたら「今度いつやろうか」っていう話をしてましたね。
自分がかっこいいと思う音を作れば自分たちの音楽になる
──イベント限定かと思いきや、レコーディング、そしてアルバムリリースにまで至ったわけですけど。
佐藤 イベントが終わってすぐにそういう流れになって。活動しようっていうことは、イコール作品を作ってライブをやるっていうことなのですが、3人それぞれが抱えてる仕事もたくさんありましたから、それが終わってからってことで、去年の1月ぐらいから曲を書き始めて、3月ぐらいからじわじわとレコーディングを始めた感じですね。
──作品を作るにあたって描いていたビジョンはありましたか?
佐藤 3人で「こういうのをやろう!」っていう突っ込んだ話し合いは特になかったんですよね。打ち合わせをするために集まっても、ほぼ普通の飲み会で終わってしまって(笑)。でも、僕の中では「自分自身がとにかくかっこいいと思うもの、これでいいんだって思う音を作りさえすれば自分たちの音楽になる」っていう思いで作ろうと確固と決めてかかった部分はありますね。若い頃は過去をどんどん壊していきながら自分の世界を広げていきたいって思いが強くて。あの頃はそれで良かったと思いますし、その思いがSING LIKE TALKINGの歴史を作ってきたと思うんです。でも、今この年齢になって思うのは、とにかく過去の部分も今の部分もすべて横並びにして、自分たちの中にあるものだけでちゃんと作ればいいんじゃないかって。
──それは具体的にどういうことですか?
佐藤 千章は千章で、新しいとか古いとか関係なく、とにかく好きなように作ればいいって言ってくれましたし、西村も楽しくやりたそうな雰囲気で。3人それぞれ言い方は違いますけど、たぶん同じものを求めているなと感じたので、それが今回の作品に反映されたと思います。SING LIKE TALKINGは僕が思っている以上に独自性を持っていると自負できるようにもなってきましたし、長年の中でいろんなものを吸収してきた今、これからは持っていないものを追求してみようとしてもたぶん自分には無理なんです(笑)。なぜ無理かっていうと、楽しくないから。たとえ評価されたり売れたりしても、うれしくはあっても楽しくはないなっていうことを、いろんな意味で実感したところがあって。もちろん、そのときどきで作ってきた作品には誇りを持っているんですけど、これからは躊躇なく、うれしさと楽しさが同時にやってくる創作に限定していきたい。SING LIKE TALKINGが、その両方が存在する結果にならない場所になったら、僕にはもう帰る場所ではなくなるので、その両方を成立させようという思いは昔から常にありましたね。
CD収録曲
- Through The Night
- A Wonderful World
- 飾りのないX'mas Tree
- Dearest
- 涙の螺旋
- きみの中に輝くもの
- 祈り
- Do-Nuts?
- 硝子の城
- Desert Rose (Adenium)
- Wild Flowers
- Dog Day In The Noon
東日本大震災復興支援ソング配信決定
SING LIKE TALKING「Luz」
2011年5月18日(水) からiTunes StoreにてPC配信開始
同日にはSING LIKE TALKING携帯サイトにて着うた配信
(PC 200円 / 着うた 105円)
SING LIKE TALKING(しんぐらいくとーきんぐ)
佐藤竹善(Vo, Key & G)を中心に藤田千章(Syn, Key)、西村智彦(G)の3人によって1982年に結成。同年プロデビューを目指し上京し、オーディションでのグランプリ受賞などを経て、1988年9月にシングル「Dancin' With Your Lies」でメジャーデビューを果たす。佐藤の透明感あふれる美しいハイトーンボイスとエバーグリーンで高品質な楽曲は、一般の音楽ファンだけでなく耳の肥えたリスナーも魅了。特に佐藤の圧倒的な歌唱力は同業者からも絶賛され、他アーティストのコーラスを務めるたほか、小田和正や塩谷哲とはユニットも結成し活動を行った。2003年にアルバム「RENASCENCE」のリリースとそれに伴うツアーを行ってからは、バンド活動を休止。メンバーはそれぞれソロ活動や他アーティストのサポート、プロデューサーとして活躍してきた。2009年にイベントで久しぶりにライブを行った後、再始動に向けて準備期間に突入。2011年3月にシングル「Dearest」、5月にアルバム「Empowerment」を立て続けにリリースし、本格復活を果たした。