「THE EYEWALL NiGHT vol.1」MAH(SiM)×TAKUMA(10-FEET)×GEN(04 Limited Sazabys)|デカ箱で対バンライブを行う意味

座っている人も楽しませられるように

──MAHさんがTAKUMAさんに熱く説いたという、ホールならではの楽しさってどういうところですか?

MAH 実際バンドが3人なり4人でできることってそんなに急には増えないので、今まで積み重ねてきたものを持ってステージに上がるだけなんですけど、でもアリーナクラスだからこそ使える……例えば映像だったり特効だったり火だったり……俺らだったらワイヤーとか(笑)。そういうライブハウスではやれないことを、ライブハウスでしかライブをやってこなかったヤツらのショーに組み込めるっていうところですね。結局アリーナやホールだと指定席の人たちを満足させないといけないので。スタンディングエリアにいる人たちのことはいくらでも満足させられる自信があるんですけど、指定席の人はどうかなって。その不安が最初、ホールとかアリーナでやりたくなかった理由だったんですけど。そうやって映像とかを考えていくうちに、意外と指定席の人たちも楽しませられるんじゃないかなって思えるようになって。そうすると1曲ごとに「この曲をどう聴かせるか」ということをものすごくよく考えるようになるんです。「この映像を使って、こういうライブをやって」って。ライブハウスだとそこまでは考えないんですよね、ライブをやるだけだから。それがカッコいんですけど、1曲ずつのことを考えることによってバンドの新しい側面が見つかるんですよ。

GEN うんうん。

左からTAKUMA(10-FEET)、MAH(SiM)、GEN(04 Limited Sazabys)。

MAH それはお客さんにとってもそうじゃないかなと思ってて。例えば普段はモッシュピットにいて演奏している姿を観ていないという人が、席でライブを観ることで、今まで見えなかった魅力が見つかると思うんですよね。そういうことを考えていった結果、俺らのライブも変わったんです。大きい会場、席のある会場でもきちんと魅せられる演奏やパフォーマンスを意識するようになった。だからバンドの成長という意味で、いいところしかないですね。

──SiMはライブハウスでも、ショーとして作り込んだライブをするバンドだと思うんですけど、それでも違いますか?

MAH はい。なんかもう井の中の蛙だったなと。関わる人も増えるし、それぞれの技術の専門の人が携わってくれるので、そういう人と話してると「こんなこともできるのか!」という発見が多くて、すごく視野が広がった感じがしました。

GEN 僕らも武道館でやるときに、1曲1曲「この曲はこういう映像を使って」とか「サビでこうなってほしい」とか考えて。曲に対する理解度はすごく増したし、いろんな側面が見えました。武道館で初めて映像を使ったんですけど、「これからはフェスとかのビジョンがあるときにも(映像を)使ってみてもいいじゃないかな」って思えるようになったし。今まで自分たちの中で「ノー」だったものが「いいじゃん」って思えることが増えました。

──MAHさんが言っていた「指定席のお客さんを満足させないと」という点については?

GEN ホールじゃなくて、フェスとかでも同じようなことが言えると思っていて。前のほうにいるテンションが上がってる人には僕らの衝動とか勢いだけでも伝わるけど、後ろのほうの人を納得させるには勢いだけじゃダメだなと思っているので、そこは今まで通りという感じですね。でも……この間、大阪城ホールでやったイベント(FM802「ROCK KIDS 802 -OCHIKEN Goes ON!!-」主催のライブイベント「HIGH! HIGH! HIGH!」)に、僕もTAKUMAさんもゲストボーカリストとして出演したんです。僕はその広いステージの使い方がわかんなくて、縦横無尽に動き回るLiSAちゃんとか見て「さすがだな」って思ってたんですけど、そしたらTAKUMAさんはステージじゃなくて客席のほうへガンガン走って行って「すごい!」と思いました。

TAKUMA いや、GENはほんまにめちゃくちゃ歌がうまいんですよ。楽屋で練習してるのを聴いてるだけで「僕はああいうふうに上手に歌えない」と思って。GENは「勢いだけでいけへんところがある」って言ったけど、でも、やっぱり勢いだけじゃない表現ができない子もいるんですよ、僕みたいに(笑)。「がむしゃらにガーってやってる感じが見えないからこそ、音をきちんと聴かせなくちゃいけない」、それはデカい会場での鉄則なんですけど、それができない子もいるんです。そういう場合は見せに行くしかない。勢いを見せに行って帰って来る。「あそこまで走って歌ってはるんやったら、そりゃあ精度が落ちてもしゃあないね」って思ってもらうしか(笑)。

フェス主催は飲み会の幹事みたい

──今回は「野外FES主催バンド」がテーマということで、フェス主催者としてのお話も聞かせてください。自分たちの主催フェスと、呼ばれるフェスやイベントでは気持ちに違いはありますか?

GEN 全然違いますね。

MAH うん、全然違います。例えば飲み会とかでも幹事は準備がめっちゃ大変じゃないですか。当日もみんなに気を遣っていろいろやって、自分が酔っ払う前に終わっちゃって。でも呼ばれた側はただ酒を飲んで楽しむべきで。俺はそういうイメージですね。「DEAD POP FESTiVAL」は野外フェスになってまだ3回しかやってないということもあり、楽しむ側まで行けてないと言うか……酔っ払わないうちに終わっちゃってますね。「京都大作戦」は10年やってるからそういうの超えてると思うんですけど。TAKUMAさんがどういう精神状態なのか気になります。

GEN 僕もそれ気になりますね。

MAH 今年なんて「京都大作戦」3日間だったじゃないですか。3日間とか絶対やりたくない(笑)。

左からGEN(04 Limited Sazabys)、MAH(SiM)、TAKUMA(10-FEET)。

TAKUMA 言うてもやっぱり、その幹事みたいな気持ちっていうのは常にあるよ。幹事としてよりいい仕事をするために酔っ払うことはあるけど、「気が付いたら酔っ払ってました」っていうのはないかな。ものすごく感動したライブとか、「わ、こんなライブされたら、このあと俺どんなライブしてもアカンやん」って思うようなものすごいライブされたときくらいしか主催であることを忘れる瞬間はないかな。

MAH ああ、それは俺もそうですね。人のライブを観てるときは唯一、少し忘れられます。

GEN 僕もですね。人のライブを観てるときが、幹事として一番幸せなんじゃないかと。

TAKUMA 言ってみれば幹事としてコンパを開いたとして、自分が好きな子見つけて夢中になるよりも「アイツとアイツ、結ばれへんかな」って思ってる感じ。「アイツ、人見知りやのにめっちゃアプローチしてる! がんばれがんばれ!……うわあ、一緒に帰ったー! やったー!」みたいな。

MAH それはめっちゃわかります。仲間がいいライブしてお客さんが盛り上がってるのときって、“結ばれた”みたいな感じありますよね。

GEN (フェスに出演者として)呼んだ友達と友達が仲よくなったりとか。

TAKUMA そうやな。「ライブハウスで2、3バンドでやるんだったらこのバンドとこのバンドはちょっとジャンルが違いすぎて呼べへんけど、フェスやったら会わせられる」とかあるもんな。

THE EYEWALL NiGHT vol.1
2017年9月17日(日)兵庫県 ワールド記念ホール

出演者
SiM / 10-FEET / 04 Limited Sazabys

SiM(シム)
SiM
MAH(Vo)、SHOW-HATE(G)、SIN(B)、GODRi(Dr)の4人からなる湘南で結成されたレゲエ・パンクバンド。2004年11月に結成され、数度のメンバーチェンジを経て2009年に現編成となる。パンク、ハードコア、スクリーモをベースとする轟音サウンドにスカやレゲエのエッセンスを取り込んだ“レゲエパンク”サウンドで頭角を現す。ライブハウスシーンを中心に活動し、2011年「KiLLiNG ME」のMUSIC VIDEOの視聴回数がインディーズバンドとしては異例の再生回数を記録(現在1600万回以上再生)。同曲を収録したアルバム「SEEDS OF HOPE」もスマッシュヒットを記録した。メジャー10社以上が獲得に乗り出す中、ユニバーサル・ミュージックをパートナーに選び、2013年4月に4thシングル「EViLS」、10月に3rdフルアルバム「PANDORA」を発売。その後も着実にリリースを重ね、2015年11月には日本武道館公演も完売させた。2016年4月には4thフルアルバム「THE BEAUTiFUL PEOPLE」を発売。同アルバムのリリースツアーでは全国26公演すべてがソールドアウトとなる。野外開催2年目となる自身主催イベント「DEAD POP FESTiVAL」を大成功に収め、10月にツアーのグランドファイナルとして行った神奈川・横浜アリーナでのワンマンライブも即日の完売となった。2017年3月から4月にかけて実施したワンマンツアー「THE BEAUTiFUL PEOPLE TOUR -season II- "ONEMAN SHOWS 2017"」では全国10カ所で28000人以上を動員した。7月に「DEAD POP FESTiVAL 2017」を主催。9月には兵庫・ワールド記念ホールで対バン企画「THE EYEWALL NiGHT vol.1」を実施する。
10-FEET(テンフィート)
10-FEET
TAKUMA(Vo, G)、NAOKI(B, Vo)、KOUICHI(Dr, Cho)の3名によるスリーピースバンド。メロディックパンク、ヘヴィメタル、レゲエ、ヒップホップ、ギターポップ、ボサノバなどのさまざまなジャンルを取り入れたサウンドで人気を集めている。また精力的にライブ活動を続け、その迫力満載のライブパフォーマンスや人間味あふれる深いメッセージが込められた楽曲、笑顔を誘い出すキャラクターでもファンを魅力。さらに日本はもとよりアメリカや韓国、台湾でもライブを行うなど、活動の幅を世界に広げている。また自身で主催するフェス「京都大作戦」も例年大成功におさめている。2017年に結成20周年を迎えた。
04 Limited Sazabys(フォーリミテッドサザビーズ)
04 Limited Sazabys
2008年に愛知県名古屋市にて結成された、GEN(B, Vo)、HIROKAZ(G)、RYU-TA(G, Cho)、KOUHEI(Dr, Cho)によるロックバンド。2013年5月に発表した2ndミニアルバム「sonor」より日本語詞を多く取り入れ、楽曲の幅を広げる。メロディックパンクやギターロック、ラウドロックなど、さまざまなジャンルのバンドと競演を重ね、2014年2月に3rdミニアルバム「monolith」、同年9月に1stシングル「YON」をリリース。2015年4月に1stフルアルバム「CAVU」を日本コロムビアから発売し、メジャーデビューを果たした。同年10月にメジャー1stシングル「TOY」を、2016年3月に1st DVD「MOMENT」を発売。4月には初の主催フェス「YON FES 2016」を大成功に収めた。ニューシングル「AIM」を6月に発表し、9月に2ndフルアルバム「eureka」をリリース。2017年2月に初の東京・日本武道館公演を成功に収め、6月にその模様を収録したBD/DVD「LIVE AT NIPPON BUDOKAN」を発売した。8月にシングル「Squall」を発表。11月からはワンマンツアー「04 Limited Sazabys “Squall tour”」を開催する。