ナタリー PowerPush - SiM

2ndアルバム「SEEDS OF HOPE」でポジティブに変化した意識

ステージに立ったら近寄りがたい存在になりたい

──ライブでも、例えばメロコアのバンドが持つ親近感よりも、近寄りがたいスター性を感じます。

MAH ありがとうございます。僕がフロントマンとして好きなのはマリリン・マンソンやKORNのジョナサン・デイヴィスなんで、やっぱりステージに立ったら彼らのように近寄りがたい存在になりたいんです。だけど同時に、伝えるってことも大事だし。そのバランスもうまくとりつつ。

──SiMはライブハウスシーンという、いわばカウンターカルチャー的なところからスタートしてるわけですが、大きなステージに立つことや近寄りがたいスター性を目指すという目標は、そのシーン出身のアーティストとしてはちょっと珍しいかもしれないです。

MAH そうですね。カウンター的なことをメインストリームに持っていくのは難しくて、どうやったらそれが実現できるかってことをすごく考えてます。だから僕ら、そういう大きな夢があって、そこに向かうまでのすべては過程と考えてますから。

この状況で俺は皮肉は歌えない

──では作品のことも伺えれば。収録曲は今作のために作ったものですか?

インタビュー風景

MAH そうです。今年に入ってから、3月以降に作った曲ですね。

──なるほど。13曲目の「A SONG OF HOPE」は東日本大震災以降の気持ちが表現されていると思いました。

MAH そのとおりです。それこそ震災の翌日ぐらいに、1人でバーッて曲の土台を作って。震災の当日にライブがあったんです。いつもライブの日はメンバーが僕の家に集まって会場に向かうんですが、その日、みんながもうすぐ来るって時間に震災があって。なんとかみんな集まって、とにかくライブハウスに行こうって街に出たら信号は止まってるしコンビニには人が長蛇の列だし。見たこともない光景で。結局、ライブもできなかったし連絡がつかない友達もいたし、自分も被災した気持ちで。それで翌日、ギターを持ったら曲が出てきたという感じで。だけど自分も被災した気持ちだったけど、東北の人達に比べたら被害は全然少ないわけで、そんな僕が軽々しく歌っていいのか?って迷って。でも後に仙台に行ったとき、僕らみたいなバンドのことを待っててくれてる人達がいて。僕らって、こう、直接的に励ます感じの歌じゃないのに。それでも待っててくれて。それで歌おうって決心したんです。

──「SEEDS OF HOPE」というアルバムのタイトルも、そこにつながってるものですよね?

MAH ええ。実は1年前にミニアルバムをリリースしたとき、連続してフルアルバムも出す予定だったんです。それはレーベルの移籍などで流れたんですけど。そのアルバムを「A SONG OF HOPE」ってタイトルにしようと思ってたんですが、そのときは真逆の意味でつけたタイトルだったんです。「俺は希望の歌なんか歌わないよ、そういう歌はほかの奴らに任せるよ」って嫌味のタイトル。でも震災を経て、皮肉とか言ってられねえって。この状況で俺は皮肉は歌えないって思ったんです。それで震災直後に作った曲を、ストレートな意味を込めて「A SONG OF HOPE」ってタイトルにして。で、今作のタイトルもそこから広がってつけたもので。SiMは今でもダークな歌詞が多いんですけど、でもそれは表現の仕方であって、根本の意識はポジティブに変化してると思います。

こんなウキウキしたCDはないかもしれない

──それから、6曲目「PUNK ROCK iZ COMING」は面白かったです。

MAH 最後に作った曲なんです。いろんな要素が入ってる曲なんで、この曲を最後に持っていったらメンバーは悩んじゃうかって心配してたし、僕自身もAメロがうまく決まらなくて。そしたらSHOW-HATEが作ってきたスカのメロディがしっくりきて。

──この曲のタイトルが「PUNK ROCK iZ COMING」で、その後の「On and On」が初期パンクっぽい曲で。その流れも面白い。

MAH ええ。そういうメッセージ的というか隠し味的というか、そういうことは常に考えてますね。

──じゃ、最後に作り終えての感想を聞かせてください。

SHOW-HATE こんなウキウキしたCDはないかもしれない。完成されてるし、内容が濃いです。作り上げたって実感してます。だからライブが怖いんですけどね(笑)。でもそれを繰り返して上達するんだろうし。

MAH みんなに聴いてもらいたいし、手に取ってもらいたいです。CDが売れない時代って言われてるけど、そういう状況下で作ったCDだからこその面白さを存分に取り入れてますから。パッケージも含めてすみずみまで見てほしいし、歌詞も読んでほしい。ライブも、もちろん、ガーッて盛り上がってくれたらうれしいんですけど、でも歌詞を知らないで観るのと、歌詞を知って観るのとでは絶対に違うから。例えば歌の中で叫ぶ場面も、単に叫びたいから叫んでるんじゃなく、そこには意味があるんです。うちらは意味のないことはやってないから。一つひとつに意味があるんで、それをCDで感じてほしいです。

SiM「KiLLiNG ME」ビデオクリップ

2ndフルアルバム「SEEDS OF HOPE」 / 2011年10月12日発売 / 2300円(税込) / gil soundworks / GILS-1001

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CD収録曲
  1. KiLLiNG ME
  2. SUCCUBUS
  3. I Hate U (It's Not A Play On Words)
  4. Misery
  5. FiXiT
  6. PUNK ROCK iZ COMING
  7. On and On
  8. I'm Alright
  9. Fall In Love With You
  10. Faster Than The Clock
  11. Living Dead
  12. DUBSOLUTiON #3
  13. A SONG OF HOPE
  14. Murderer (single ver.)
SiM(しむ)

GODRi(Dr)、SIN(B)、MAH(Vo)、SHOW-HATE(G)の4人からなる、神奈川出身のバンド。2004年11月に結成され、数度のメンバーチェンジを経て2009年に現編成となる。パンク、ハードコア、スクリーモをベースとする轟音サウンドにスカやレゲエのエッセンスを取り込んだ「レゲエパンク」サウンドで頭角を現す。ライブハウスシーンを中心に活動し、「京都大作戦'08」「PUNKSPRING '09」などの大型フェスにも出演。さらに311、ENTER SHIKARI、SUM41といった海外勢の来日ツアーへの参加経験も有する。2011年10月、2ndフルアルバム「SEEDS OF HOPE」を発表。