メンバーの手癖を感じさせないために打ち込みの曲にしたかった
──一方、「SILENT」に新曲として収録されている「FAMILIA」はまさにサイサイの幅が広がった曲ですよね。どういう経緯でできた曲なんですか?
年末のツアー("SILENT SIREN 年末スペシャルLIVE TOUR 2021「FAMILIA」")のタイトルを決めるときに、私は最初から「FAMILIA」でいきたいと思ってたからそう提案して。「同じタイトルの新曲も作りたい」って言ったらその場で作ることが決まったんです。そのときから曲のイメージとかやりたいことが明確にあったので、すぐになおきゃん(サウンドプロデューサー・クボナオキ)のところに行って、「サビでスラップを入れて」みたいに曲の細かいところまで詰めました。
──そうだったんですね。
昔はバンドらしい音にこだわってたけど、今回はイレギュラーとはいえ、サポートドラマーにお願いするのではなくこの状況をプラスに捉えて、そういうものを感じさせない打ち込みの曲にしたかったんですよ。私はメンバーの手癖が好きなんですけど、人工的なリズムに自分たちらしい上モノを乗せたり、新しいことをしたいなと。「打ち込みでもサイサイはこんなにカッコいいんだぜ!」ってところを見せたかった。これは意地ですね(笑)。昔から何くそ精神でやってきたんですけど、ここでもそれを発揮しました。いつもはスタッフさんからも意見をもらうんですけど、今回はゼロから自分たちだけで作ったので、私たちは満足してます(笑)。みんなも気に入ってくれたらいいな!
──いい曲だと思います。
12月30日のラストライブで自分がどういう感情になるのかわからないから不安ですし、やっぱり私も普通に悲しいですよ。ファンのみんなが悲しんでくれてるのと同じように。けど、未来が見えている部分が少しあって、新しいことが始まるワクワク感もあるので、前向きではあります。
──「きらら」が終わってからしばらくの間、メンバー3人のSNSがやたらポジティブで逆に不安になりましたよ(笑)。
それ、スタッフさんにも言われた!(笑) だって、自分の好きなバンドのメンバーの脱退がライブ前日に発表されたら私なら絶望すると思うんですよ。でも、残ったメンバーでハッピーなものを届けなきゃと思ってポジティブな投稿をしてたんですよね(笑)。
どんな形であれ「また会おうね」っていう約束ができたらいいな
──12月18日から始まるラストライブツアーはどんなものにしたいですか……と聞きたいところですけど、今回ばかりはステージに立ってみないとわからないですよね。
マジわかんないですね。「きらら」のときなんて、私、朝からずっと泣いてたんですよ。それぐらい愛情があったし、4人で立ってるからこそ魅力があるバンドだっていうこともわかってたし……だからツアーでも、泣きたくないけど普通に泣いちゃいそう(笑)。すでにセットリスト決めながら泣きそうになってました。
──わかります。
今回のツアーはサポートドラマーが2人入ってくれることになってて、なおきゃんも一緒にステージに立ってくれるので、5人でライブをやるんですよ。だから新しさと懐かしさがあると思います。名古屋と東京ではゆうくん(渡邊悠)が、福島と大阪ではTHE BACK HORNのまっちゃん(松田晋二)が叩いてくれるんです。まっちゃんは私と同じ福島出身なので、これはすごく意味があるなと思ってます。
──それは面白そうですね。
自分も楽しみではいますけど……。
──実際に立ってみないとわからない。
わからない! でも、楽しんでやりたいと思ってます。悲しいとかじゃなくて、「本当にありがとう! 一旦またね!」って。どんな形であれ「また会おうね」っていう約束ができたらいいなと思ってます。
──スタジオにはもう入ってるんですか?
めっちゃ入ってますね。メンバーだけでも入ってるし、ゆうくんとも入ってる。まっちゃんとはまだ入れてないんですけど、ほぼ毎日スタジオにいます。
──両者ともにグルーヴが違いそうですね。
まっちゃんは「バンドマン!」って感じの情熱的なドラムを叩いてくれると思います。ゆうくんは正確なドラムを叩くので、それぞれのよさが出て雰囲気の違うライブができるんじゃないかなと思います。
パーフェクトなゆかるん、ストイックなあいにゃん
──ライブが生配信されるのは12月30日のツアーファイナルですよね。すぅさんはほかのアーティストの配信ライブを観たことはありますか?
あります。「音、いいな」とか「照明、いいな」とか、「これは生配信じゃないな」とか(笑)、勉強しながら観てます。
──自分たちのライブを配信するうえで意識することは?
最初、配信ライブをするのが本当に苦手で。どこを見ていいのかわからなかったし、無観客配信だとお客さんが目の前にいないライブっていうのがそもそもよくわからなかったんですけど、配信用にライブのやり方をいろいろ変えていったので、30日は配信を観ている人でも楽しめるような映像を作れたらいいなと思ってます。
──ライブ全体としての見どころは?
新しい体制のライブで活動休止するっていうのは奇妙な感じですけど、そこを楽しんでもらいたいですし、ツアーのキービジュアルが未来の自分たちにつながるようなものになっているので、それに付随する衣装や映像を楽しんでもらいたいですね。あと、今回はライブ用にアレンジしている曲がいくつかあるし、なおきゃんがギタリストとしてステージに立つのは2015年の日本武道館以来なので、それも楽しみにしてほしいです。なおきゃんは「がんばります! 覚えます!」とか言いながら、「いいフレーズ見つけたかもしれない!」って原曲と違うことを弾き始めるんですが、それに対してゆかるん(Key)から「決まったフレーズ弾いてもらっていい? 私、安心できないから」って言われたりしてます(笑)。
──ゆかるんさんはそう言うでしょうね。それにしても、ステージ上におけるゆかるんさんのパーフェクト具合はすごいですよ。
すごい! 尊敬しますね。彼女は毎回完璧なパフォーマンスができますからね。音楽以外でも「もしサイ」(「もしもあたしたちがサイサイじゃなかったら。」。メンバー自ら主演を務めたSF青春ドラマ)を撮ったときも、同じシーンを何回撮り直してもゆかるんは同じ演技ができたんですよ。私は違うトーンでしゃべったり、違うほうを見たりしちゃってたんですけど。
──ゆかるんさんのパフォーマンスは完璧すぎて、そのすごさがなかなか伝わらないですよね。普通ならちょっとミスすることでそれ以外の完璧な部分が際立ったりすると思うんですけど、それすらないですから。
確かに確かに。でも、ゆかるんは一度間違えるとめっちゃ引きずるタイプで、昔、イントロのピアノを間違えてレーベルの方に指摘されたことを今でも引きずってるんですよ(笑)。すごく真面目で正義感が強いです。やるときはやる!遊ぶ時は遊ぶ!という、何事にも全力な彼女が大好きです。
──あはは!(笑) ゆかるんさんは、悪い意味ではなく、バンドマンぽくない。
そうそうそう。自分の弱さも見せないから「しんどいときはしんどいって言って」とか、そういう話し合いをしたこともあります。でも、ゆかるんの性格的にそういうことができないことはわかってたし、そういう自分に葛藤してたことも知ってたし。たぶん、それが彼女のよさなんですよね。私が適当っていうわけではないんですけど、そんな私たちと一緒に、あえてきれいに並んでない感じもすごく好きでした。
──あいにゃん(B)さんはベースがぐいぐいうまくなって。
「最近全然ベース弾いてなくてヤバいわあ」とか言うんですけど、彼女はストイックだからリハとかでは自分を追い込むし、新しいことを提案すると「めっちゃいいね!」ってすぐに乗ってくれて想像以上のものを返してくれるし、すごいと思いますね。あいにゃんには活休中もベースを弾いていてほしいです。最高のベーシストが近くにいてよかったなと思います。
──それでいてあのホワホワした穏やかキャラですから。
それがいいですよね! そこがみんなを虜にするポイントなんだと思います。でも、実はめっちゃめちゃ負けず嫌いなんですよ。彼女はふわっとしてるけど感情がわかりやすくて、私はそういうところも好きです。