想像を超えて羽ばたいていった「ANNIVERSARY」「嘘」「アリバイ」「眩暈」

──自分たちが想像していたよりも羽ばたいていった曲、広い景色を見せてくれた曲はなんでしょう？

マオ　バンドの記念日を歌った「ANNIVERSARY」ですね。誕生日の歌とか、クリスマスの歌とか、記念日を歌った曲が世の中にはいっぱいあると思うんですが、シドにとっては「ANNIVERSARY」がそれで。周年のたびにこの曲の歌詞がグッとくるので、記念日をテーマに歌詞を書くのは、長くバンドをやっていく中では大事なんだなと思いました。自分の想像を超えて、羽ばたいてくれた気がします。

ゆうや　僕は「嘘」です。僕自身のことではあるんですけど、インディーズ時代も含めて、それまで曲を書いてもなかなか日の目を見ないことが多くて、採用されてもカップリングだったんです。なので、「こうすればシドにハマるんだろうな」という作曲の方程式が僕の中になくて。そんな中、「嘘」は当時タイアップのお話をいただいたアニメ「鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST」と純粋に向き合って書いた曲だったんですよね。それがシングルの表題曲に選ばれて、話題にもなって。それまでヒットすら打ったことがなかったのに、いきなりホームランを打ったような感覚でした。自分が思いもしなかったような反響がありましたね。

Shinji　今、浮かんだのは約20年前に書いた「アリバイ」ですね。最近はパソコンで曲を作るのが主流じゃないですか。でもこの曲は、ヤマハの「QY20」というゲーム＆ウォッチのような小さい機材で作ったんですよ。今考えると、よくやっていたなって（笑）。そうして作った曲が、多くの人の前で歌われてるなんて、純粋にすごいなと他人事のように思いますね。

明希　僕は「眩暈」かな。この曲はライブを重ねてくうちに、本編の締めくくりとして披露することが増えたんです。作ってるときはそういう曲になるとは思ってなくて。すごく盛り上がるし、ファンの人とバンドの熱意が相まって成長した曲ですね。

ファンの方がいてこその20年

──改めて20年間も活動をされてきた中での原動力と、そんなシドを支えてきたファンへの思いについて聞かせてください。

マオ　最初は4人とも人気者になりたいという思いが強かったですし、デビューした頃はいろんな人に曲を聴いてもらいたいという欲があった。今は長く続けていきたいとか、さまざまな思いがあって。この20年はいろんなことを原動力にしてやってきましたね。そんな中で変わらないのは、ずっとそばにいてくれたファンの存在。その時々で目標が変わっても、ファンがいたからこそ達成できたんです。だから、これから先もファンへの思いを忘れずに活動していきたいです。

明希　若い頃は「こうありたい」「こんなふうに見える存在でいたい」って、自分のエゴだけだったと思うんです。特に前半の10年間がそう。でも今は、自分が純粋に音楽を好きな気持ちでできている。本来あるべき姿に戻って、さらに進化した気がするんです。がむしゃらに自分のためだけにやってきた時期もあり、それ故に気付いた未熟さもあり……その時期がなかったら20年間も僕はやれていなかったと思う。でもその20年もファンの方がいてこそ。いろんな時代のシドや僕を見て、今も応援してくれているファンの方の偉大さと愛。それにただただ感謝するばかりですね。

マオ（Vo）（撮影：今元秀明）

明希（B）（撮影：今元秀明）

──Shinjiさんとゆうやさんはいかがですか？

Shinji　僕の原動力は、現状に満足しないことですね。もちろん満足いく作品を作りたいんですけど、やっぱり満足してしまうとさらなる高みが見えなくなっちゃう。ファンに対しての思いは……明希も言ってましたけど、昔は「俺が俺が」みたいな気持ちが強かったんです。だけど、こうやって長くやってると、本当にファンの人の声援や優しさを強く感じるようになって。ただ、そこに甘えちゃいけないとも思うんですね。昔と同じくカマしていく気持ちも持っていたいし、僕はファンの応援してくれる気持ちを、シドのライブで倍返しにしたいんです。首が動く限り、最年長ヘッドバンギングおじさんを目指して行きたいなと思います（笑）。

ゆうや　僕の原動力はね、やっぱりついてきてくれるファンです。ファンの方からすると、シドがみんなの心の支えだったり、生きる希望になっていて感謝の気持ちがあるのかもしれないですけども、僕らこそファンの方に支えられて生かされているわけで。そういうWin-Winの関係でこれからもやっていきたいと思ってます。あとは、演奏や曲作りに関しても、まだまだ学んでいきたいことがいっぱいあって。教科書で言えばやっと半分に到達した感覚なので、これから後半のページに進むことが目標ですね。

Shinji（G）（撮影：今元秀明）

ゆうや（Dr）（撮影：今元秀明）

“納得のいくシド”を作るために

──20周年からの先のシドの未来についてはどのように考えていますか？

マオ　20年も続けられるバンドは限られてると思っていて。そんな中で生まれてくる言葉や思いをこれからも伝えていきたいし、新しいスタイルも模索していきたいし……やりたいことは本当にいっぱいありますね。何よりつらい時期を支えてくれた人たちのことを本当に心から愛しているし、心から信頼しているんです。その気持ちにこの20年で気付けたので、これからはずっと支えてくれたファンのみんなに恩返しできるような活動をしていきたいです。

明希　20年の間にシドの活動はもちろん、ソロなど多岐に渡る経験をさせてもらっている中で、今、僕はシドのベーシストでいることにとても喜びを感じているんです。シドのベーシストでいることがすごく楽しい。そういう気持ちが芽生えたことが、また新たな曲を作らせてくれるのかなって。そうしてできた曲を、自分のプレイを通してこれからも一番そばで聴いてくれてるファンの方にちゃんと届けられるように、21年目もその先もしっかりと活動していきたいと思います。

Shinji　最近はバンドのグルーヴや空気感がすごくいいんですよ。明希も言ってましたけど、演奏していて楽しいんです。僕らが楽しんでやっていれば、それを観るお客さんも絶対楽しいと思う。あとシドの音楽に触れてバンドを始める人が増えたらうれしいので、スキルや表現力も磨いていきたいですね。

ゆうや　今日のようにこれまでの活動を振り返るインタビューは、改めて昔の記憶や当時のことを思い出せる機会になるんですよね。そのたびに自分たちのことをしっかり見つめ直せますし、「次はこんな活動したい」と考えるきっかけになる。20周年が終わったら結成30周年に向けて、またしっかりと面白いことを考えて、“自分たちが納得のいくシド”を作っていけたらいいなと思います。

2023年1月開催「ID-S限定 SID LIVE 2023 ～Re:Dreamer～」の様子。（撮影：今元秀明）

2023年1月開催「ID-S限定 SID LIVE 2023 ～Re:Dreamer～」の様子。（撮影：今元秀明）