シド|「会いたい」気持ちを音に乗せて……約束の「Star Forest」に向けて明かすファンへの思い

まっすぐな歌詞を届ける

──5月になり、マオさんの「早く会いたい」という願いが河口湖ステラシアターのライブで実現しますね。

マオ そうですね。延期を経て、およそ1年越しの開催となります。しかも公演タイトルと同名の新曲「Star Forest」は当初会場限定発売だったのが、全国リリースとなったのはうれしいです。

──楽曲制作はいつ行ったんですか?

Shinji 去年の1月ですね。先にタイトルが決まっていたので、河口湖の会場をイメージしつつ作曲作業に取り組みました。

──会場やタイトルありきということですけど、河口湖ステラシアターにはどんなイメージを持たれていましたか?

Shinji まだ現地に行ったことはないんですけど、会場のホームページを見たら星空がきれいな画が飛び込んできて。その情景をひたすらイメージしつつ、ギターをガンガン鳴らすよりは、アコースティックの温かみのある曲にしましたね。

──「Star Forest」という言葉は、どなたが考えたんですか?

Shinji マネージャーが言ったのかな? いくつか候補があって、最終的にみんなで選んだと思います。

──このタイトルを選んだ決め手は?

Shinji 会場の自然のイメージを押し出したかったのがあって。ひねったタイトルよりもストレートなほうがいいなと思って決めましたね。

──マオさんは楽曲をお聴きになって、どんな印象を持ちましたか?

マオ 会場のイメージも湧いたし、事前に歌詞の構想もあったので、すごくハマるなと思いましたね。

──歌詞はいつから書き始めたんですか?

マオ 「Star Forest」というタイトルでライブをやることが決まり「せっかくだしテーマソング的な楽曲を作りたいね」という話になった段階でふわっとイメージが湧いていて。そこから本格的に作詞を始めましたね。出だしに「五月」というワードがあるんですけど、5月のライブでみんなと待ち合わせをして……というような、ファンと俺たちのライブに懸ける熱だったり思いだったりを学生時代の思い出と重ねながら書きました。ちなみに「星の都」という歌詞があるんですけど、インディーズ時代の2枚目に出しているアルバムにもまったく同じタイトルの曲があって。実は、今回の歌詞は「星の都、その後」の話が裏テーマとしてあります。こういう隠れメッセージは自分がファンだったらうれしいし、曲単体でも楽しんでもらえるような歌詞になってます。

──歌詞でいえば「池町川」というワードがありますよね。河口湖は山梨県なのに、どうして他県の地名を入れたんでしょう?

マオ 池町川というのは俺の地元・久留米にあるちっちゃな川のことなんですけど、まさに「星の都」の舞台もそこだったんです。星をつかもうと久留米から飛び出していった少年が大人になってからの話なので、裏テーマのわかりやすさを出すために池町川を書きましたね。

──まだ曲を聴いてない人はギミックの多い歌詞に思えるかもしれないですけど、実はすごくストレートですよね。

マオ そうそう、わりとストレート。ファンのみんながパズルを組み合わせるじゃないですけど、「星の都ってアレのことかな?」とか、いろんな視点で理解できるように気を付けて書きました。

──先日、マオさんはつんく♂さんとnoteで対談をされましたね。その中で「最近は、表現がどんどんストレートになってきました。文学的な表現や、女性視点の歌詞って、ある意味照れ隠しだったんですよね」とおっしゃっているのを読んで、確かに最近のシドはまっすぐな歌詞が多いなと合点がいきました。

マオ 路線を変えたつもりはなくて、もともと俺はストレートな歌詞を書いていたんですよ。そこから入り組んだ歌詞を書く時期を経て、一周してストレートな歌詞作りへと戻ってきた。特に、今のシドに関しては「Star Forest」のようなまっすぐな歌詞を届けるのが、自分の中ですごく自然なモードなんです。

──言葉がシンプルな分、情景や画が浮かびやすかったです。この曲を河口湖ステラシアターで歌ったら、夜空に浮かぶ星空と相まって素敵な画になるでしょうね。

マオ そうなんですよ。まさにそこを狙って作った曲なので、あの会場で歌わない限りはもしかしたら生かされない曲かもしれない。そういう意味では、やっとこの曲の出番ですよね。

──1年間も温めていたわけですもんね。

マオ ね、本当に。

シドらしさがふんだんに込められているサウンド

──明希さんは楽曲をお聴きになって、どのような印象を持たれましたか?

明希 「Star Forest」のタイトルから連想するイメージ、会場の雰囲気、音から感じるライブの映像が三位一体となった楽曲という印象でしたね。すごくストーリー性があるし、地元の風景や過去の楽曲からのつながりなど、裏テーマもしっかり伝わる内容で、シドらしさがふんだんに込められている曲だと思います。

──演奏については意識したところはどんなところでしたか?

明希 Shinjiが送ってくれたデモの段階ですごく構成がしっかりしていたので、そのアイデアを踏襲しながら自分の中でブラッシュアップしたイメージですね。プレベ(プレシジョン・ベース)の温かい感じが似合うと思って、その印象に沿ったサウンド作りを意識しました。

──フレーズだけでなく、音感も歌に寄り添うような優しい演奏ですよね。

明希 そうですね。今回はピックではなく指で弾くことで丸い音を出したり、フレーズの動き方も埋めすぎないようなフワフワした浮遊感を持たせました。

──ゆうやさんは初めて楽曲を聴いたとき、どんな印象を持たれましたか?

ゆうや すごくきれいなメロディラインだと思ったし、いろんなメロディが混ざることで展開ごとに感じる印象が違って、同じくストーリー性のある曲だなと思いましたね。

──ドラムも歌に合わせていろんな展開を見せていますね。

ゆうや この曲が持つイメージを後ろから押してあげる感覚のドラムフレーズというか、ドラムのタッチを意識して叩きました。例えば、ちっちゃなシンバルが星だとしたら、星っぽい感じのキラッと聞こえる瞬間が何回か出てくるとすごい気持ちいいなと思ったりとか。わりとそれ以外は丸めの音なんですけど、小さいシンバルだけはすごいキラッとさせてる。ドラムとしては、そこが大きなポイントかな。

──後半に向けてドラムが盛り上がっていきますが、派手になりすぎてないのも魅力的でした。

ゆうや そうなんですよね。長く叩いちゃうと、すごく派手に感じさせちゃうというか強めの印象になる。どちらかというと今回はゆったりした曲なので、緩急をちょっと入れるつもりで、ポイントごとにスピード感を与えるために入れたフレーズが多いです。疾走感を間のフレーズに入れることによって、このゆったりした部分をまた聴きたくなる作用を作り出そうと叩きました。だから一瞬だけ詰め込んでいるフレーズはいっぱいあるんですよ。それがいやらしくない程度に要所要所で盛り込んでますね。

──ギターに関しても、楽器を聴かせるよりも歌を映えさせる演奏でしたね。

Shinji この曲に関してはギターは脇役なんです。こういう曲でギターをガンガン鳴らすアプローチは僕の中になかったから、あくまで歌の雰囲気に寄り添いたいと思って。言うなれば、ギラギラではなくキラキラした感じ。それをクリーンなサウンドのアコースティックで、シンプルに支えるサウンドを目指しました。

──冒頭のウィンドチャイムとか、ピチカートを含めたストリングスの音色まで最初からイメージされていたんですか?

Shinji だったと思います。ウィンドチャイムはゆうやが提案してくれたんだっけ?

ゆうや そうそう。最初はなかったんだよ。で、足したよね。すごくキラキラした音が合うなと思って、即興で足したら「すごくいいじゃん!」となって取り入れました。

Shinji この曲は音数が多そうに聞こえますけど、実はそんなにないんですよね。ちょっと前から自分の中でも音数をあんまり増やしたくない気持ちがあって、そういうのはここ最近の曲作りで意識しています。


2021年5月15日更新