ナタリー PowerPush - シド
メンバーと振り返る10年史
2003年に結成され、今年10周年という節目を迎えるシド。彼らがアニバーサリーイヤーを盛り上げる第1弾アイテムとして、キャリア初のベストアルバム「SID 10th Anniversary BEST」をリリースした。
今回ナタリーはこれを記念して、10年の軌跡を振り返るロングインタビューを実施。結成からこれまで、そして未来への思いをさまざまなエピソードを交えながら明かしてもらった。
取材・文 / 中野明子
ベスト盤はライブの流れを意識した
──今回はバンドの軌跡を振り返りたいのですが、その前にベストアルバム「SID 10th Anniversary BEST」について訊かせてください。初めてのベスト盤ということで、インディーズ時代の曲もたくさん収録されていますが、セレクトする上での基準はありましたか?
マオ(Vo) ただシングルをまとめた内容にしちゃうと「10周年のベストアルバム」ではなくなってしまう気がして。シドって割とインディーズから支えてくれているファンが多いので、その人たちが聴くことを意識して全時代を網羅したところはありますね。もちろん最近シドを知った人にも、ベスト盤をきっかけに昔の曲を聴いてもらえたらうれしいし。
──過去に発表してきた楽曲の中から18曲を選ぶのはかなり大変だと思うのですが、メンバー間で意見がぶつかったりは?
マオ あまりなかったですね。選ぶ曲が結構似てて、予想以上にサクッと決まりました。
ゆうや(Dr) 手に取りやすいように1枚にするってことは決めてたんだけど、たくさん入れたいという気持ちもあって。時間を計って1枚にぴったり収まるようにしたんです。
──曲順にも強いこだわりが感じられます。起承転結がキチンとあって、ライブの流れに近い気がしました。
ゆうや 新譜の場合は曲順を決めやすいんですけど、元々ある曲を並べるとなるとライブの流れが僕らにはしっくりくるんですよね。というかそれ以外思いつかなかったんですけど(笑)。
──昔の曲を聴き直して気付いたことはありますか?
明希(B) いろいろ思い出したんですけど、作曲方法が今とあんまり変わってないなって。作り方は鍵盤弾きながらだったり、鼻歌を歌いながらとかだったり、コードを爪弾きながらだったり形は決まってないんですけど。
──では変化した部分は?
明希 昔に比べてベースプレイが作曲に還元されるようになりましたね。いろんな音楽を聴いてメロディ作りやアレンジに生かしていくんじゃなくて、ベーシストとしてうまくなることでアレンジの幅が広がっていったんだなと昔の曲を聴きながら感じました。
──ゆうやさんはベスト盤を聴いて思い出したことはありますか?
ゆうや 俺は結成当時は一度も曲を作ったことがなくて……シドに入ってから作るようになったんですよね。プレイヤーとしての引き出しはそれなりにあったと思うんですけど、レコーディングをする中で「もっとこうしたほうがいいんじゃない? ああしたほうがいいんじゃない?」ってことを初期のレコーディング中にメンバーに言ってて。「だったら作ってみたら」ってアドバイスされて作り始めたんですよね。
──作曲活動がプレイに影響したりはしましたか?
ゆうや 思いっきりしましたね。それまではほぼドラムだけのことを考えてたのが、周りの音を気にするようになって。歌だったり、他の楽器との絡みだったり、自分の立ち位置を客観的に見られるようになって、プレイが豊かになった気がします。
──Shinjiさんは通して聴いてみていかがでした?
Shinji(G) 昔の曲ってあまり自発的に聴かないんで、ほとんどは昔の写真を見ているようで恥ずかしかったですね。ライブだと今のアレンジに変えられるし、自分の進化が感じられるんだけど、昔の曲を聴くと反省点が出てきて。なんでもっと遊んでないんだろうとか、遊べる余地を発見したりするんです。でもきっちり弾いてたりアレンジしてたりして、そこはいいなと思いますね。
──シドの楽曲はずっとマオさんが歌詞を手がけてますが、この10年で書き方に変化はありましたか?
マオ 作詞方法はずっと変わりませんね。メロディをメンバーからもらって、イマジネーションを膨らませていくという手法で。メロディから想起されるイメージを大切にしながらいつも書いてます。
明希 シドって「この曲はこういう歌詞でお願いね」みたいなやり取りは昔からやってないんですよね。だけどいつも自分の音にぴったりな歌詞が上がってきてて。マオくんのメロディに対する言葉のハメ方とか、今も昔もカッコいいなって感じてます。
2003年:シドは“今、今、今”の積み重ね
──さて、ここからは10年の歩みをさまざまなエピソードとともに振り返っていければと思います。シドは2003年春に結成されましたが、当時将来のビジョンってありました?
マオ 「人気者になりたい」っていう夢はありましたね。お客さんが目の前にたくさんいて、キャーキャー言われて。
──それを実現した瞬間はいつでしたか?
マオ いつだろうなあ。初の武道館公演(2006年8月開催の「Summer Festa 2006『LIVE AT BUDOKAN』」)とか。あれはだいぶ人気者感ありましたけどね(笑)。
──武道館は思い入れのある場所ですか?
マオ いや特にないけど、「武道館!」って叫んでみたいってのはあったね。武道館に立ったアーティストはみんな言ってるし、俺も言いたい、くらいの感じなんだけど(笑)。
──そのとき結成当初の夢が実現したと。
マオ 今振り返るとね。でも当時は無我夢中だったから、実感してる余裕もなくて。
──結成当初はバンドが10年続くことは想像できました?
明希 想像する暇がなかったんですよね。周りのスピードが早くて、とにかく目まぐるしくて、10年後こうなってたいって考えるよりも、今、今、今の積み重ねで。でもバンドとして続けていける確信は最初からありましたね。
- ベストアルバム「SID 10th Anniversary BEST」 / 2013年1月16日発売 Ki/oon Music
- 「SID 10th Anniversary BEST」完全生産限定盤[CD+DVD] 4800円 / KSCL-2178~2179
- 「SID 10th Anniversary BEST」初回限定盤[CD+DVD] 3800円 / KSCL-2180~2181
- 通常盤[CD] 3000円 / KSCL-2182
CD収録曲
- 夏恋
- 嘘
- アリバイ
- モノクロのキス
- 私は雨
- レイン
- 御手紙
- ミルク
- 妄想日記
- 妄想日記2
- 眩暈
- S
- sleep
- ハナビラ
- 白いブラウス 可愛い人
- and boyfriend
- エール
- V.I.P
完全生産限定盤DVD収録内容
10th Anniversary 秘蔵LIVE Collection PART1
- 2010.7.31 さいたまスーパーアリーナ スタジアムモード
SID Summer Festa 2010 ~SAITAMA SUPER LIVE~「ノイロヲゼパアティー」 - 2006.08.29 日本武道館 Summer Festa 2006「LIVE AT BUDOKAN」「chapter 1」
- 2005.7.26 昭和女子大学・人見記念講堂 角刈り限定ライヴ(嘘)「バーチャル晩餐会」
- 2010.3.4 新宿LOFT ライブハウスツアー「いちばん好きな場所2010」
スペシャル公演-男限定LIVE-「capsule」 - 2009.4.12 日比谷野外音楽堂 TOUR 2009「サクラサク」「Re:Dreamer」
- 2007.2.6 渋谷C.C.Lemonホール(渋谷公会堂)TOUR 06⇒07 ”play”「星の都」
初回限定盤DVD収録内容
10th Anniversary 秘蔵LIVE Collection PART2
- 2008.11.2 日本武道館 メジャーデビュー記念ライブ「刺と猫」
- 2010.3.11 Zepp Tokyo ライブハウスツアー「いちばん好きな場所2010」
スペシャル公演 -ペア限定リクエストカウントダウンLIVE-「できそこない」 - 2010.12.11 TOKYO DOME YEAR END CLIMAX 2010 ~全てのシドへ~「2月」
シド
マオ(Vo)、明希(B)、Shinji(G)、ゆうや(Dr)からなる4人組ロックバンド。2003年に結成され、翌年1stアルバム「憐哀 -レンアイ-」をリリース。2005年には初の全国ツアーを開催し、全公演ともソールドアウトの快挙を成し遂げる。2006年には初の日本武道館ワンマンライブを敢行。2008年にリリースした4thアルバム「センチメンタルマキアート」はオリコンウィークリーチャート8位を記録した。同年10月、シングル「モノクロのキス」でメジャーデビュー。2009年7月にはメジャー1stアルバム「hikari」をリリースした。その後も精力的なリリースとライブ活動を繰り広げ、2010年7月にはさいたまスーパーアリーナ、12月には東京ドームでのライブを行う。結成10周年を迎える2013年は、初のベストアルバム「SID 10th Anniversary BEST」のリリースをはじめ、アニバーサリーライブなどさまざまな企画を展開する。