ナタリー PowerPush - SHUN×Lyu:Lyu
ラップとロック、ポジとネガ 2つの反対色のミックス術
ヘンに気を回しても違えばそれまで
──ところが4人はLyu:Lyuらしいすごくセンチメンタルでストレートなギターロックに乗せてSHUNさんが熱くフローする、本当に対等な立場でコラボレーションをした。作曲やアレンジはどのような流れで?
SHUN Lyu:Lyuさんに何曲か候補曲をいただいて、その中から僕が選んだ1曲……それが今回の「Never Change」のデモなんですけど、それをもとに一度SHUNクルーで打ち込みバージョンのトラックを作ってみたんです。で、そのトラックの上に僕が自分の歌うヴァースだけ乗せて「こんな感じでどうですか?」ってお返しするっていう感じですね。そして今度はそれを聴いたLyu:Lyuさんたちがまたリアレンジしてくれて、っていうのを繰り返してました。
コヤマ そうですね。サビはオレが歌ってますけど、そこまでのヴァースはSHUNさんがラップすることになってたから、ある意味考えてもしょうがなかったというか。こっちでヘンに気を回してもSHUNさんが「違うよ」って言えばそれまでなわけですから。「『ダメ』って言われたら作り直そう」っていう気持ちで、とにかく考えすぎずにアレンジしては音源を渡してました。せっかく「Lyu:Lyuさんと」って言っていただけたわけですから、いかにいつも通りの自分たちのままであり続けるかっていうことを意識してましたね。
有田 それにラッパーの方と共演するのは初めてだし、いきなりSHUNさんサイドの意向に沿うものを器用に作れるわけもないですから。とにかくいつも通り、オレらがカッコいい、面白いと思うものを聴いてもらおうっていう感じでしたね。
SHUN それがうれしかったんですよ。僕自身、その“いつも通りのLyu:Lyuさん”らしいアレンジがスゲーカッコいいと思ったから、オファーさせてもらったわけですから。ただレコーディングは大変で……。いつもはもっとBPMの遅いブレイクビーツに乗せてラップしてるんで「このトラック、速い!」みたいな。「楽しいんだけど、難しいな、これ」「難しいんだけど、楽しいな、これ」と思いながら録ってました(笑)。リリック自体はけっこう早く書けたんですけどね。
コヤマさんはやっぱりカッコいいこと書くなあ
──そのリリックもまさにコラボというか、SHUNさんのヴァースとコヤマさんのサビではトーンが異なる。2人の音楽に対する態度がはっきり出ていて面白いですよね。
SHUN さすがですよね(笑)。コヤマさんの詞を見せていただいたとき「カッコいいこと書くなあ」「やっぱりうまいなあ」って思いましたから。
コヤマ ははは(笑)。ありがとうございます。
SHUN それもLyu:Lyuさんとコラボレーションしたいと思った理由なんです。僕はポジティブなことをラップすることが多いんで、自分にはできないセンチメンタルな表現をできる方と一緒に歌ってみたくて。で、やっぱりコヤマさんはコヤマさんの言葉ですごく説得力のあることを歌ってくださった。
──確かにSHUNさんは「どんな強い波にも逆らう そこには仲間 遥か彼方 出会った全てがオレの宝」と歌っていて、対するコヤマさんは「切り裂いた闇の先に見えたもの 真っ直ぐに見据えたままで 離さない」と明らかに違うボキャブラリーを駆使している。でも歌っていることは同じ。苦境にあってもなお戦う姿勢を示しています。
SHUN 「こういう詞にしましょう」っていう打ち合わせをしたわけではないんですけどね。僕は僕で今回の「Never Change」が「NARUTO -ナルト- 疾風伝」のエンディングテーマになったということで「NARUTO」を意識したというか。そのストーリーを読み込んで、自分とリンクさせて書いただけ。夢に向かう人たちの背中を少しでも押せたらいいなって。今、世の中にはいろんな情報がものすごい量あって、それを気にし始めると、最初に自分が思い描いたビジョンがボヤけることってあると思うんです。「○○っていう情報を耳にしたんだけど、オレは本当に大丈夫だろうか?」って感じで。でも最初に抱いた純粋な気持ちは忘れないでほしい、ブレないでほしいっていう意味で「Never Change」っていうタイトルにしたし、そういう詞を書いて、コヤマさんに「こういうヴァースでいくんで、サビをお願いします」って感じでお渡ししました。
歌うべきことは歌ったからマイクを渡す
コヤマ ただオレは「本当にサビを歌うのはオレでいいんだろうか?」って気はしましたけどね(笑)。
──名義は「SHUN『Never Change feat. Lyu:Lyu』」。あくまでフィーチャリングアーティストだしって?(笑)
SHUN いや、先輩と組ませてもらうわけですし、サビはお任せしたかったんです。僕はヴァースでしっかりラップするんで、あとはもう……。
──「コヤマさん、バッチリ締めてください!」と(笑)。
SHUN ふふふ(笑)。でもホントにサビはコヤマさんの声でコヤマさんの言葉でぜひ歌ってもらいたかったんです。
コヤマ 確かにSHUNさんのヴァースの詞からは「あっ、自分が歌うべきことは歌ったからオレにマイクを渡したんだな」っていう心意気が感じられたから、だったらオレはもう全力でやるだけだな、とは思いました。
──そのコヤマさんの全力の出し方、つまり作詞ってどういうふうに?
コヤマ まずやってみたのは「NARUTO」の原作マンガを読破したことですね。やっぱりSHUNさんと同じというか、エンディングテーマに選ばれている以上「これはちょっと『NARUTO』をちゃんと読んでからじゃないと書けないな」と思ったので。その上で「この『Never Change』が放送される頃には、アニメではこういうエピソードが展開しているはずだから、こういう言葉を歌うといいんじゃないか?」っていうことを相当考えて。だから、SHUNさんもオレも同じ結論に到達できた。打ち合わせをしたわけでもないし、ボキャブラリーや「NARUTO」の世界へのアプローチの仕方は違うんだけど、それでも同じテーマを歌うことができたんでしょうね。
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- ニューシングル「Never Change feat.Lyu:Lyu」 / 2014年7月23日発売 / SME Records
- 初回限定盤 [CD+DVD] 1600円 / SECL-1541~2
- 通常盤 [CD] 1300円 / SECL-1543
初回限定盤 CD収録曲
- Never Change feat. Lyu:Lyu
- I Wanna NO feat. 當山みれい
- CONNECTION feat. Beat Buddy Boi
- Never Change feat. Lyu:Lyu -TV size ver.-
- Never Change feat. Lyu:Lyu -Instrumental-
- CONNECTION feat. Beat Buddy Boi -Instrumental-
初回限定盤 DVD収録内容
- Never Change feat. Lyu:Lyu Music Video
- Never Change feat. Lyu:Lyu Music Vidoe Making Movie
- CONNECTION feat. Beat Buddy Boi LIVE@TSUTAYA O-EAST(2014.3.1)
通常盤 CD収録曲
- Never Change feat. Lyu:Lyu
- I Wanna NO feat. 當山みれい
- CONNECTION feat. Beat Buddy Boi
- Never Change feat. Lyu:Lyu -g.a.p mix-
SHUN(シュン)
1992年生まれ、大阪出身のラッパー。インディーズデビュー前から清水翔太の客演を務めながら、2011年3月にアルバム「AFTER SCHOOL」をリリースし、オリコンインディーズ週間ランキングで2位を記録する。2012年には「SPRINGROOVE」「SUMMER SONIC」に出演を果たし、秋には初のツアー「TEEN SOLDIER TOUR 2012」を東京と大阪にて開催した。また、加藤ミリヤの楽曲「今夜はブギー・バック feat. 清水翔太&SHUN」に参加し話題を集める。2013年7月、ミニアルバム「DA NOVΛ」でSMEレコーズよりメジャーデビュー。2014年にはシングル「#SWITCH」を発表するほか、LITTLEや當山みれいのアルバムなどでの客演も積極的に展開する。そして7月、ロックバンドLyu:Lyuとのコラボレーションが話題となったシングル「Never Change feat.Lyu:Lyu」をリリースした。
Lyu:Lyu(リュリュ)
ボーカロイドプロデューサー・ナノウとしても知られるコヤマヒデカズ(Vo, G)と、純市(B)、有田清幸(Dr)による3ピースロックバンド。2008年、コヤマが同窓生の純市、有田に声をかけて結成。2009年よりLyu:Lyu名義で活動を開始し、2010年、1stミニアルバム「32:43」をリリース。オリコンの「ネクストブレイクアーティスト」に選出されるなど、アグレッシブなサウンドと絶望的な言葉の中に希望を垣間見せる詞が話題を集める。2011年には2ndミニアルバム「太陽になろうとした鵺」を、2012年には3rdミニアルバム「プシュケの血の跡」を発表し、「SUMMER SONIC2012」の大阪公演にも出演。そして2013年3月、1stフルアルバム「君と僕と世界の心的ジスキネジア」をリリースした。同年には配信限定曲「Seeds」、シングル「潔癖不感症」を発表し、東京・LIQUIDROOM ebisu、そのほか全国でワンマンライブを行うなどバンドとして精力的に活動する一方、コヤマが小説「ディストーテッド・アガペー」をWebで連載するなど、多方面で活躍。そして2014年5月、4thミニアルバム「GLORIA QUALIA」をリリースした。